O plus E VFX映画時評 2026年6月号
(注:本映画時評の評点は,上から![]()
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(「概要&感想」が遅くなったのは,後述の理由と同日公開の論評欄を優先したことの両方からである。いつものように,後日,画像入りの詳細なVFX解説の「完成版」を掲載する)
鳴り物入りでジャームズ・ガンがCEOとして就任した「DCスタジオ」が展開するDCユニバース(DCU)の2作目である。迷走したDCEU(DC Extended Universe)を強制終了してリセットし,新規構想のDCUが始まった。第1作は昨年の『スーパーマン』(25年7月号)であった。他にも,「バットマン」「ワンダーウーマン」「アクアマン」「ザ・フラッシュ」等のスーパーヒーローいる中で,DCコミックスの原点である「スーパーマン」を選んだのは,「さすが,J・ガン」と感激し,DCUへの本気度が感じられた。その出来映えが極上であったこは,当該記事を読んで頂ければ分かるだろう。
2年前に発表されてはいたが,DCUの2作目として,本作『スーパーガール』が選ばれたことは意外だった。てっきり,「バットマン」か「ワンダーウーマン」を続け,時間をかけ,満を持して「ジャスティス・リーグ」を再結成させるのだと思っていた。どう考えても,従姉妹の「スーパーガール」はサブキャラであり,「スーパーマン」シリーズのスピンオフ作品である。第1作の成功を待たない内に,スピンオフを第2段にすることは一抹の不安を感じた。この後,「バットマン」シリーズのヴィランが主役の『クレイフェイス』(26年10月公開予定),再度スーパーマンが主役の『スーパーマン: マン・オブ・トゥモロー』(27年7月公開予定)が続くようだ。第4作でスーパーマンを再登場させる前に,従姉妹を出しておきたい物語上の理由があるのかも知れない。
「スーパーガール」の主演作は過去にもっとあるのかと思ったが,映画としては同名の『スーパーガール』(84)しかなかった。大人気であったクリストファー・リーヴ主演のシリーズ3作目『スーパーマン3/電子の要塞』(83)と『同 4/最強の敵』(87)の間に公開されたスピンオフ作品であった。その意味では,本作も同様の意図での公開時期と言える。その他,TVシリーズとして,『SUPERGIRL/スーパーガール』(15〜21)が,6シーズンで計126話が放映されていたようだ。どうやら,何度も見た気がするのは,何本かの「スーパーマン」映画シでの脇役であったようだ。84年版との設定の違いや,なぜ「従姉妹」であって,「従姉」や「従妹」と書かないのかは,後の【スーパーガールの立場の再検証】の項で述べる。
【本作の物語展開】
惑星クリプトンが崩壊する際,科学者のゾー=エルと妻のアルーラは他のクリプトン人と共に,安全な「アルゴ・シティ」に移動する。その8年後に娘カーラが生まれた。その後,危険な鉱物クリプトナイトが露出し,市民の命を奪い始めた。母アルーラも病で他界したことから,カーラと愛犬クリプトは宇宙船に乗せられ,地球に向かう。地球には,既に従兄弟のカル=エルが住んでいて,「スーパーマン/クラーク・ケント」と名乗っていた。彼に迎え入れたカーラ・ゾー=エル(ミリー・オールコック)は「スーパーガール」と名乗り,メトロポリスでの新しい生活を始めた。
地球生活に馴染めないカーラは,なかなか定住せず,クリプトと共に銀河系内の他の惑星を巡り,宇宙船内で暮していた。当時のカーラは23歳ながら,母を亡くした悲しみから,酒浸りの荒んだ生活を送っていた。この旅の途中でカーラは,少女ルーシー・メアリー・ノール(イヴ・リドリー)と出会う。ルーシーは,「イエロー・ヒルズのクレム」(マティアス・スーナールツ)が率いる無法者集団「ブリガンド」に家族を殺害され,唯一生き残った人物だった。ルーシーは,黄色い太陽の下で超能力を発揮する「スーパーガール」に助けを求め,両親の敵であるクレムへの復讐をしようとしたが,カーラはあっさりと彼女の申し出を拒絶する。ある日,ブリガンド一味がカーラの宇宙船を乗っ取ろうとした時,愛犬クリプトはそれを阻止しようとして,クレムに毒矢で撃たれてしまう。倒れたクリプトは余命3日間と診断された。その解毒剤を所持しているクレムの居所を見つけるため,カーラは止むなくルージーを道連れにして追跡の旅に出る。
2人とクリプトは,クレムの居場所情報を得て,まず惑星ビルキスに向かう。その星では,ブリガンドが若い女性を誘拐して,自分たちの花嫁にしていることを知る。そこに現れたブリガンド団とのバトルとなるが,集団の幹部を追っていた賞金稼ぎのロボ(ジェイソン・モモア)が,カーラ達に加勢することになる。その後もクレムを追って,ブリガンドの拠点のある惑星バレントンに達したが,この星には2つの太陽があった。緑の太陽の光線下では,スーパーガールの身体は弱体化してしまい,動けなくなって,ルーシーの看護を受ける。
さて,その先は……。比較的素直な冒険映画であったので,この惑星の自転で黄色の太陽が出くると,スーパーガールが復活し,若い女性たちを救出し,極悪人のクレムを倒す……という予想が容易にできるだろう。
ただし,この映画のカーラゾー=エルは,これまで知っていた明るく快活な「スーパーガール」とは,かなり性格も能力も違う。そもそも,アル中の酒浸り生活,下品で粗野な言葉を発するということ自体が,まるで「アンチヒーロー」だ。どうやら,この大胆な変更は,この映画独自の脚色ではなく,原作本の違いだったようだ。オリジナルは,1959年にDCコミックスに登場したオットー・バインダーとアル・プラスティーノ作の「The Supergirl from Krypton」であったが,本作は,2021〜22年に刊行されたトム・キング&ビルキス・エヴェリー作のコミック「Supergirl: Woman of Tomorrow」を基にしているためのようだ。カーラが酒浸りなのも,少女ルーシーの同伴,ロボの加勢,ヴィランがクレムであることも,このコミックに従っている。この邦訳本の上巻は映画公開日には発売され,下巻は8月発売とのことである。
【監督と主要キャスト】
監督は,豪州シドニー生まれのクレイグ・ギレスピー。19歳でNYに移って来て,現在58歳であるから,もうほぼ米国人である。名前は覚えていたが,代表作がすぐに思い出せなかった。記録を調べると,彼の過去8作品の内,何と当欄で7本も紹介していた。メイン記事は『ザ・ブリザード』(16年3月号)『クルエラ』(21年Web専用#3)の2本,他の5本は短評/論評欄の『ラースと,その彼女』(08年12月号) 『フライトナイト/恐怖の夜』(12年1月号)『ミリオンダラー・アーム』(14年10月号)『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(18年3・4月号)『ダム・マネー ウォール街を狙え!』(24年2月号)であるから,何でもこなす起用な監督のようだ。
主演のM・オールコックも監督と同じシドニー生まれだが,彼女は今も豪州国籍で,同国期待の若手女優だ。現在は26歳だが,10代の頃から多数のTVドラマで活躍し,ワーナー系列のHBOで2022年から放映された『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』の主演を務め,J・ガンの目に留まって,本作の大抜擢となったという。『ハウス・オブ…』では,激しい気性の王女役で,ドラゴンに乗って腹違いの弟王子と後継者争いをする役だったので,同シリーズの視聴者は本作の酒浸りの「スーパーガール」も違和感はなかったという。過去の映画出演は豪州のホラー映画1本だけだが,『スーパーマン』のエンドクレジット途中に「スーパーガール」として予告カメオ出演をしていた。
ルーシー役のE・リドリーは英国の子役俳優で,出演時は13歳,現在は14歳である。彼女もこれまでTV分野中心の出演で,映画には全くの初出演である。その意味では,菅野女もまた大抜擢である。本作で印象的だったのは,E・オルコットのカーラもE・リドリーも。あまり欧米系の白人っぽく見えず,アジア系の顔立ちであったことだ。このE・リドリーの祖母はフィリピン人だというので,東洋系に見えても不思議はない。
賞金稼ぎ「ロボ(Lobo)」役が,J・モモアとは驚いた。言うまでもなく,DCEQの6作品で「アクアマン」として登場したので,そのイメージが抜けない。本作のこの役で登場させとは,しばらくDCUに「アクアマン」は登場させないのかと心配してしまう。アクアマン役以外にも,『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』(23年5月号)での敵役は,主人公ドム(ヴィン・ディーゼル)のファミリーを食ってしまうほどの存在感であった。それを期待して,スーパーガールの保護者的存在で本作に重みを持たせたかったのかと思われる。
本作の悪役のクラムを演じるM・スーナールツは,ベルギー人男優で,15歳での映画初出演以来,既に40本以上の映画出演歴をもつ。当欄では,主演の『君と歩く世界』(13年4月号)の他,準主演級の『リリーのすべて』(16年3月号)『レッド・スパロー』(18年Web専用#2)『名もなき生涯』(20年1・2月号)等を紹介している。知的で渋い役が多く,本作のクラム役は意外であった。両頬一面のピアスで異様な人物らしく見せていたが,それがないとヴィランらしく見えなかったとも言える。
従兄弟のスーパーマン役は勿論,第1作デヴィッド・コレンスウェットである。カーラを地球で出迎えただけでなく,なかなか地球に定住してくれない従姉妹の監視役として,何度か惑星間TV電話で登場する。
【スーパー・ガールの立場の再検証】
改めて,もう一度映画館で観て,完成版掲載時にこの項を執筆する
【賛否両論の分析と応援団としての発言】
本作には複数回のマスコミ試写はなく,視聴機会があったのは公開日3日前の完成披露試写会だけであった。すぐに[概要&感想]を書かなかったのは,国内と北米の公開週末の興行成績を確認してから,本稿に着手したかったからである。上記で「一抹の不安を感じた」と書いたのは,スピンオフ作品では興行成績が奮わないのでは感じていたからである。また,最初の予告編に対して,海外での評判が芳しくなく,賛否両論という噂も耳にしていたことも,不安が一抹だけで済まなくなっていたからだ。
その分析から入ろう。初登場週の週末興行成績は,日本国内も北米も第2位であった。国内は公開3週目の『Michael/マイケル』の,北米は公開2週目の『トイストーリー5』の首位を奪うことのができなかった。『Michael…』が音楽映画としては,国内で史上最高の興行成績であることを考えれば,2位スタートはそう悪い順位ではない。『プラダを着た悪魔2』(26年5月号)も初登場週は公開2週目の『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』(26年4月号)の後塵を拝して2位であった。ただし,同じ2位でも興収額は『プラダ…2』の方がかなり上である。北米Box Officeも『トイストーリー5』に破れての第2位は恥ずかしい順位ではないのだが,一度下方修正された興収予想額の約半額であり,製作費からすると大赤字必至とされている。
筆者の見立ては,スピンオフ作品はメインストリーム作品を超えてはならず,シナリオ上も制約があり,思い切ったヒット作になりにくい。同じく,スピンオフ作品の『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』(26年5月号)は日本も北米も首位スタートであったので,それと比較されると分が悪いが,久々の『SWシリーズ』と思わせる題名で,「SW」を冠したことが成功要因だと思われる。
不安を感じていたのは,アメコミのスーパーヒーローもので,女性主人公の映画は総じて興行的に不振であったからだ。そもそもが,スーパーヒロインは職場の花的存在で,チームで多数登場の内の1, 2名に過ぎない。「アベンジャーズ」のブラック・ウィドウやスカーレット・ウィッチ,「ジャスティス・リーグ」のワンダーウーマン,悪役集団「スーサイド・スクワッド」のハーレイ・クインはその典型例だ。演じる女優の魅力から,『ワンダーウーマン』(17年9月号)『ブラック・ウィドウ』(21年7・8月号)は,単独主演作が作られ,北米興行で前者は3週連続,後者は1週のみ1位に輝いたが,日本国内はいずれも初登場週末は3位に過ぎなかった。全くの例外は,『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』(20年3・4月号)で,北米で1位の後,日本で3週首位に立っているが,これは新型コロナ騒動で新作公開が殆どなかった時期だからである。その他のスーパーヒロイン主演作の『キャットウーマン』(04年11月号) 『キャプテン・マーベル』(19年3・4月号)『マーベルズ』(23年11月号)等は,全世界レベルでも悲惨な結果に終わっている。それゆえ,本作の2位はそこそこ立派な成績なのである。
批評家の評点も比べてみた。Rotten TomatoesのTomatometerの57%は低めであるが,84年版は僅か19%であり,その前後の『スーパーマン3』は31%,『同 4』は17%であった。今春のヒット作『ザ・スーパーマリオギャラクシー…』は42%であるから,それよりも上である。何よりも,観客評価のPopcornmeterは74%であるから,一般観客はこの映画を結構楽しんだと言える。筆者の評価も同様で,スピンオフのスーパーヒロイン映画に多くを期待しなかったので,普通のアクション映画として見れば,こんなものだと考えていた。
ところが,上記の興行成績や評点を調べている内に,SNS上の個人投稿は辛辣な感想で溢れていた。とりわけ,YouTubeでは賛否両論どころか,大半が酷評である。誰かが貶し始めたら,それに便乗するかのように我も我もと酷評を始める。もっとも,YouTubeは類似投稿を拾って提示されるので,筆者の手元画面に酷評ばかり出て来たとも考えられる。
酷評の理由は,さほど根拠がなく,「期待したほど面白くなかった」という印象が大半であった。「女性2人は,余り魅力的でなかった。美人でもなく,可愛くもない」とも言う。ルーシー役は少し大人っぽく見えるが,まだ13歳だった子役であるから,美醜を問うのは酷だろう。主演のM・オールコックは,確かに神々しいほどの美人でもウキウキするような可愛さでもなく,その上,酒浸りの印象が悪かったようだ。勝手な期待を少し裏切っただけで,ディズニーアニメの実写化映画『リトル・マーメイド』(23年6月号)『白雪姫』(25年3月号)の主演女優に対する罵詈雑言ほどではない。来たる実写映画『モアナと伝説の海』(7月31日公開予定)も予告編だけで,既に主演女優の人選にケチがついている。
「仲間になったロボがつまなかった」という意見は,J・モモアに対する期待度が大きかったからだろう。彼がいないと女性2人だけでは淋しかったが,さりとて主人公を超える活躍も困る。「敵役に迫力がなかった。小物過ぎる」というコメントには,少し同意する。ただし,こちらもスーパーヒロインより強過ぎても困るので,その制約があり,止むを得なかったと言える。「愛犬クリプトの出番が少なく,期待外れだった」という感想も同感であったが,早々と毒矢に倒れ,ずっと重体状態では活躍のさせようがなかった。結局,いずれをとっても,新しい原作コミック通りの映画化が気に入らなかったことになる。それを選択したのは,DCU製作陣幹部の責任であるから,もっと大幅に脚色して,明るく楽しい映画にしても良かったかと思う。
多くを期待しなかった筆者としては,酷評に対して思わず応援団的発言をしてしまったが,本作をスーパーヒーロー映画と捉えず,普通のアクション映画,エンタメ作品として見れば,中の上の評価を与えてよいかと思う。スーパーマンの従姉妹ではなく,無名の新しいスーパーヒロインであったなら,この酒浸り主人公も個性的で面白かったかと思う。ただし,当映画評の主宰者としては,他の惑星の描き方,クリーチャー類の描き方で注文をつけたかった点もあるので,それは次項で述べる。
【CG/VFXの見どころ】
この項も,もう一度映画本編を見直してから,完成版で解説する。以下,代表的シーンの画像を数枚だけ掲載しておく。
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