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O plus E誌 2020年3・4月号掲載
 
 
『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒   BIRDS OF PREY
(ワーナー・ブラザース映画 )
      (C) 2020 Warner Bros. Ent.
TM & (C) DC Comics

 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [3月20日より丸の内ピカデリー他全国ロードショー公開予定]   2020年2月26日 GAGA試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  ハーレイの大暴れで,リズム感のある痛快な快作  
  本号のメイン欄は4本だが,特別な話題作も技術的に圧倒された映画もなく,ドングリの背比べで,どれをトップ記事にしようかと迷った。面白さではこの『ハーレイ・クイン…』が頭1つ抜けていたのだが,逆にCG/VFXは控えめなのがマイナス要因だった。そうこうする内に,他の3本が,新型ウイルス騒動で次々と公開延期になってしまった。世界中での自粛ムードの中,ファミリー映画ほど興行的にも厳しいようだ。となると,(少なくとも本稿執筆時点で)健気にも予定通りに公開するという本作をトップ扱いしたくなる。決まりだ。
 マーベルコミックの「アベンジャーズ」路線に対抗して,ライバルのDCコミックはヒーロー達の「ジャスティス・リーグ」を表看板にしている。スーパーマン,バットマン,ワンダーウーマンがそのメンバーだ。ヒーロー数でも作品数でも「アベンジャーズ」に負けているためか,こちらはアンチヒーローの敵役ばかりを集めた映画『スーサイド・スクワッド』(16年9月号)を製作した。各アンチヒーローたちの個性が光っていて,結構なスマッシュヒット作となった。言わば,アイディア賞ものである。本作は,その続編である。
 前作でも主役級の1人だった女ピエロのハーレイ・クインが,本作では堂々の1枚看板の主役を張っている。悪の権化のピエロ=ジョーカーの恋人との位置づけだったが,ジョーカーと別れ(捨てられ?),すべての束縛から解放されて覚醒し,天衣無縫のハーレイ・クインが大暴れするという設定である。こりゃ,楽しみだ。
 前作では,ジョーカーはジャレッド・レトが演じていたが,本作では全く顔を見せない。それならいっそ,『ジョーカー』(19年9・10月号)での鬼気迫る演技でアカデミー賞主演男優賞を得たホアキン・フェニックスをカメオ出演させ,ハーレイと別れるシーンを加えればウケたこと間違いない。同じワーナー作品なら,それくらいのサービスをしてもいいと思うのだが……。
 物語は,ジョーカーとの破局で荒れ放題のハーレイが暴れまくり,ゴッサム・シティ内の悪党たちからも恨みを買っていたが,謎のダイヤを盗んだ少女カサンドラを守ることになり,悪を牛耳る残忍な敵ブラックマスクと対峙する。そこで途中から,曲者揃いの女性達ハントレス,ブラックキャナリー,レニー・モントーヤと組んで最凶チームを結成する。DCコミックの「バーズ・オブ・プレイ」のスーパー・ヒロイン達のようだ。カサンドラを入れた5人組は,それぞれに個性が有り,さながら「白浪五人女」だ(写真1)。思わず,応援したくなる。
 
 
 
 
 
 
 
写真1 ハーレイが率いる最凶の女性軍団。活躍振りは(下)のイラストそのもの。
 
 
  女性が活躍する映画を打ち出すため,監督に起用されたのも新鋭女性監督キャシー・ヤンである。主演のハーレイを演じるのは,前作に引き続きマーゴット・ロビー。もはや彼女しか考えられない当たり役だ。『スキャンダル』(20年1・2月号)では,セクハラを受ける金髪美人キャスター役を演じ,アカデミー賞助演女優賞にノミネートされたが,同じ女優と思えないほど見事な役作りである(写真2)。敵役のブラックマスクは,ユアン・マクレガーが演じている。ハントレス,ブラックキャナリー,レニー・モントーヤの女性トリオには,それぞれメアリー・エリザベス・ウィンステッド,ジャーニー・スモレット=ベル,ロージー・ペレスが起用されている。
 
 
 
 
 
 
 
写真2 (上)『スキャンダル』ではオフィスで働く妖艶な金髪美女
 (下)一転,本作では金属バットをもったこの姿に
 
 
  ともあれ,ハーレイのハチャメチャな行動と派手なアクション劇を楽しむ映画である。そのキャラにピッタリのスピーディな展開で,映画全体にリズム感がある。こうしたアクションを描ける女性監督にも感心した。
 以下,当欄の視点からのコメントである。
 ■ CG/VFXの分量は前作よりもかなり少なかったが,それでも効果的には使われている。冒頭で,破局の腹いせに,ハーレイがタンクローリーを化学工場に突っ込ませ,大爆発を引き起こす(写真3)。予告編にも登場するシーンだ。規模的にはこれが最大だが,ハーレイの銃で敵が粉々になったり,顔が炎上するシーンも単純なVFXながら,楽しく見ていられる(写真4)。ローラースケートのシーンにも,目立たないVFXが使われている。その他,女性5人組の飛んだり跳ねたりのアクション・シーンも,CG/VFXで強化されているはずだ。
 
 
 
 
 
写真3 涼しい顔をして,化学工場の大爆発させる
 
 
 
 
 
 
 
写真4 いずれもCG的には単純だが,小気味よく,スカッとする
 
 
  ■ ちょっと分からなかったのは,彼女がペットに選んだハイエナのブルースだ。まさか本物ではないだろうから,普通の犬を少しVFX加工したのか,フルCGなのかは判別できなかった。写真5のような至近距離でのシーンを見ると,これはCGのように思えるのだが……。CG/VFXの主担当はMethod Studiosで,他にLuma Pictures, Weta Digital, Image Engine等が参加している。
 
 
 
 
 
写真5 ペットにしたハイエナとは,ここまで濃厚接触
(C) 2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved  TM & (C) DC Comics
 
 
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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