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O plus E誌 2017年9月号掲載
 
 
ワンダーウーマン』
(ワーナー・ブラザース映画)
      (C) 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNEENTERTAINMENT LLC
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [8月25日より丸の内ピカデリー他全国ロードショー公開中]   2017年6月15日 梅田ブルク7[完成披露試写会(大阪)]
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  思いがけない掘り出し物,凛々しい美女が大活躍  
  今月号のメイン欄4本は,いずれ劣らぬ力作揃いだ。短評欄も質・量ともに充実している。さて,どの作品をトップに据えようかと迷った結果,このアメコミ実写映画化作品から語ることにした。事前の期待値よりもずっと出来が良く,最も嬉しい誤算だったからである。
 実を言うと,この「ワンダーウーマン」のことを,最近まで殆ど知らなかった。この10数年のアメコミ・ヒーローものの実写映画化のラッシュは,当欄にとって大歓迎であるが,元のコミック自体にはあまり興味がないからだ。敢えて専門店を訪ねて,英語版を入手して読む気にはならない。今回調べてみると,DCコミックスではスーパーマン,バットマンにつぐ重要人物で,何と,戦前の1941年に誕生している(写真1)。昨年,75周年記念のアニメが作られたそうだ。
 
 
 
 
 
写真1 原作コミックでも,なかなかの美形
 
 
  これまで余り劇場用映画には登場していない。『LEGO(R)ムービー』(14年4月号)にカメオ出演していたそうだが,バットマンほどの存在感はなく,気付かなかった。ようやくその名を知るのは,昨年公開の『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(16)で両男性ヒーローと共に登場してからである。既に同じキャスティングでの『ジャスティス・リーグ』(本年11月23日公開予定)が予定されている。
 1970年代後半に実写のTVドラマ・シリーズがあり,日本でも放映されていたらしい。日本語版の吹替は由美かおるで,主題歌も歌っていたそうだ。「懐かしのTVシリーズ」「アメコミヒロインの元祖」「空飛ぶ鉄腕美女」なるキャッチコピーで最近DVDが発売されたが,まさに本作と次作への便乗商法のようだ。
 本格的に単独主演の実写映画化と聞いても,余り興味が湧かなかったのは,これまでスーパーヒロインものは駄作ばかりだったからだ。『スーパーガール』(84)は児戯に等しく,『キャットウーマン』(04年11月号)『エレクトラ』(05)も論じるに足る出来映えではなかった。
 そんなマイナス・イメージから試写を観たが,全く予想外の掘り出し物だった。『…ジャスティスの誕生』で恐ろしげな顔で戦っていた女戦士が,普通のメイクで登場すると,古風な顔立ちの美形だった。演じるのは,イスラエル出身のガル・ガドット。原作の183cmには及ばないが,2004年度のミス・イスラエルであり,177cmの長身美女である。共演は『スター・トレック』シリーズのクリス・パイン。監督は,『モンスター』(03)のパティ・ジェンキンスである。
 物語は,女性だけのアマゾン族が住む島セミスキラから始まる。王女として生まれたダイアナは,母親のヒッポリタ女王の反対を押し切って,ロンドンに向かい,女戦士として敵と戦い,戦争の早期終結に尽力する。物語の展開は,重厚かつ明快で,骨格のしっかりした映画だった。『ダークナイト』シリーズの成功から,同路線をめざす作品が少なくなかったが,本作は同系統の最も成功した事例と言える。米国では,既にコスプレの人気定番キャラのようだが,本作後は,日本でもそうなるだろう。
 以下,当欄の視点での論評である。
 ■ CG/VFXは全編でふんだんに登場する。特に目新しい使い方ではないが,いずれも丁寧な作りで,効果的に使われている。矢や銃弾が迫ってくる3D効果は定番だが,ほどほどで嫌味ではなかった。島の風景は,『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの「エルフの谷」に似ている。当然VFXの産物であり,同作をかなり意識していると感じられた。
 ■ ダイアナの能力は,途中までは楯と腕輪を駆使した戦いで,凛々しく美しい(写真2)。まるでキャップテン・アメリカの女性版だが,コスチュームも少し似ている。ジャンプ力と楯だけで鐘楼を破壊するシーンは,当然CGだろう。彼女独自の武器「真実の投げ縄」が光線のように光る様がユニークで,その描写もCG/VFXの賜物だ(写真3)。後半,徐々に超能力を発揮するようになり,クライマックスはマイティ・ソー並みの凄まじさとなる。
 
 
 
 
 
 
 
写真2 楯を手に走る姿が凛々しく(上),それでいてパワーも凄い(下)
 
 
 
 
 
写真3 これが,ユニークな「真実の投げ縄(Lasso of Truth)」
 
 
  ■ いわゆる女戦士のアマゾネス・スタイルなので,時代は古代かと思ったら,今から約100年前の第1次世界大戦の時代であった。暗い独英の戦時下の模様を描いた映画は余り多くないが,その意味でも1910年代のロンドンの光景を見事なタッチで描き切っているのは評価できる(写真4)。CG/VFXの主担当はDouble Negative, 副担当はMPCであるから,いつの時代でも自在に描いてみせることができる。他にPixomondo, Platige Image, UPP, Vitality Visual Effects等が参加し,プレビズはProofとThird Floorの2社が担当している。    
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写真4 1910年代のロンドンの描写はお手のもの
(C) 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNEENTERTAINMENT LLC
 
 
 
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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