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O plus E誌 2004年11月号掲載
 
 
キャットウーマン
(ワーナー・ブラザース映画)
 
 
      (c)2004 Warner Bros. Ent.
(c)2004 Village Roadshow Films (BVI) Limited
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]   2004年8月27日 梅田ピカデリー[完成披露試写会(大阪)]
 
  [11月6日より丸の内ルーブルほか全国松竹・東急系にて公開予定]      
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  面白いキャラだが,オスカー女優の魅力が今イチ  
   またアメコミの実写映画化かというと,ちょっと違う。『バットマン・リターンズ』(92)から生まれた女性キャラをスピンオフさせ,独立の映画にしたものだ。もとはミシェル・ファイファーが演じた猫の化身を,『チョコレート』(01)でオスカー女優の仲間入りし,『007/ダイ・アナザー・デイ』(03年2月号)でボンド・ガールの魅力も見せたハル・ベリーが演じる。監督は,フランス映画『ヴィドック』(02年2月号)のピトフで,これが彼のハリウッド初監督作品となった。
 化粧品会社へデアに広告デザイナーとして務めるペイシェンス・フィリップス(ハル・ベリー)は,内気でうだつの上がらない人生を送っていたが,同社の大型新製品の致命的欠陥を知ったことで,襲われて命を落とす。猫の霊力を得て「キャットウーマン」として蘇生した彼女は,超能力を発揮して夜の街に出没し,高慢な社長(ランバート・ウィルソン)や社長夫人(シャロン・ストーン)とも対決する。ところが,彼女の活躍を悪用しようと企む何者かによって,殺人の罪を着せられてしまう……というのが物語の骨子だ。
 陰謀に巻き込まれて落命した女性が猫の化身として復活するという設定は同じだが,復讐だけが目的の前作に比べて,この映画では,超能力と自由を得て,猫のように気ままに生きる自立した女性像に仕立てられている。現代女性の変身願望,自己洗練,主張のあるライフスタイルを実現した「究極の女性」だというが,その程度の安っぽいキャラ設定で女性ファンの心を掴めるとも思えない。キャットウーマンの飛んだり跳ねたりの活躍ぶりは,なかなか小気味よく,筆者好みのエンターテインメントではあるが,少し幼稚かつ下品だ。オスカー女優の主演作品としては,もう一工夫して洗練された魅力を惹き出してもらいたいところだ。
 煮詰め方の甘さは,素顔のペイシェンスとキャットウーマンのいずれを魅力的に見せたいかが判然としない点にもある。キャットウーマンの黒いマスクとレザースーツ姿( 写真 1 )は,颯爽としているが,少しダーティ・ヒーロー然としていて,男性観客にはさほど魅力的には見えない。むしろ,迫力ある美しさは,社長夫人のシャロン・ストーンの方だろう( 写真 2 )。御歳 46歳だというのに,久々の銀幕登場で観る妖艶さは只者ではなく,さすが化粧品会社のイメージモデル役だけはある。同じ悪役でも,『チャーリーズ・エンジェル フルスロットル』(03年8月号)のデミ・ムーアより存在感は数段上だ。
 
     
 

写真1  バットマンから受け継いだこのコスチューム

  写真2  今なお存在感のある美しさは健在  
 
     
   さて,肝心のVFXだが,ESC Entertainment社とティペット・スタジオが主担当で,600カット以上に及ぶ。至る所で視覚効果が使われている点ではかなりの意欲作なのだが,必ずしもそのクオリティが均質ではない。
 猫たちのすべてがCGなら驚くが,多分その大半は本物だろう。それでも,ここまで調教するにはかなりの苦労があったに違いない。猫の目だけを差し替え,視線を合わせたシーンもあるのかも知れない。キャットウーマンの猫ライクな動きは素晴らしい。夜の街を自在に動き回るシーンは,スパイダーマンのスウィング姿にも匹敵する出来栄えだ。ハル・ベリーの全身を3Dスキャンしておいて,CGモデルにモーションキャプチャ・データやテクスチャを貼り付けることは,今や当たり前に実行されているかと思われる。
 この映画の難は,合成シーンの背景のお粗末さだ。最初に工場が登場するシーンでは,夜景の嘘っぽさは意図的でご愛嬌かと思っていたが,そのレベルがずっと続く。社長室からの窓の外に眺めなど,チープそのものだ。エンドクレジットには,マット画のプロ中のプロ Matte Word Digital社の名前があったから目を疑った。VFXにかけてはフランス1のピトフがこのクオリティを容認するとは,全く不可解としか言いようがない。
 
          
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