head
titlehome略歴表彰学協会等委員会歴主要編著書論文・解説コンピュータイメージフロンティア
| TOP | CIFシネマフリートーク | DVD/BD特典映像ガイド | 年間ベスト5&10 |
 
title
 
O plus E誌 2019年3・4月号掲載
 
 
キャプテン・マーベル』
(ウォルト・ディズニー映画 )
      (C) Marvel Studios 2019
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [3月15日よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー公開中]   2019年3月5日 TOHOシネマズ梅田[完成披露試写会(大阪)]
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  女性チームが創り上げたスーパー・ヒロイン映画  
  またまた新しいスーパー・ヒーロー映画がやって来た。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の第21作目で,MCU初の女性主人公だという。それならスーパー・ヒロインと呼ぶべきだが,並みいるマーベル・ヒーローを凌ぐ最大級のパワーの持ち主らしい。
 アメコミ史を少し勉強して,このヒロインの成り立ちを調べてみた。マーベル・コミックでの初代「キャプテン・マーベル」はやはり男性で,銀河系のクリー帝国が地球に送り込んだスパイ「マー・ベル」だった。異星人の彼はNASA女性職員のキャロル・ダンバースと恋に落ちるが,やがて罠にはまって死亡する。その後,息子ジェニスがこのヒーロー名の2代目となる。ところが,元来「ミズ・マーベル」であったキャロルが,2006年のリブート版からは,3代目「キャプテン・マーベル」を名乗るようになったそうだ。息子や夫人に跡目を継がせるとは,まるで国会議員の後継者選びみたいだ。
 前置きが長くなったが,本作は1990年代半ばで,まだアベンジャーズ結成より前の物語である。主人公は,米国空軍の女性パイロットであるキャロル・ダンバース(ブリー・ラーソン)で,事故で瀕死の重傷を負い,異星人のDNAを獲得して超人的特殊能力を得たが,同時に過去の記憶も喪失してしまったという設定だ。銀河系内のクリー帝国で,彼女はヴァースという名を与えられ,エリート戦士チーム「スターフォース」の一員であるところから物語は始まる。ヴァースはしばしば悪夢に悩まされ,記憶の断片がフラッシュバックする。彼女の記憶の底にある秘密を狙う宿敵スクラル人に捕らえられるが,非常用ポッドで脱出して地球に落下して来る。
 地球に到着後が言わば第2部の始まりで,国際平和維持組織S.H.I.E.L.D.のニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)と知り合う。彼の協力で,ヴァースはキャロルとしての記憶を取り戻すが,執拗なスクラル人戦士タロス(ベン・メンデルソーン)と戦い,そして「衝撃の真実」を知ることになる……。
 MCU初の女性主人公作品だが,監督・脚本もアンナ・ボーデン&ライアン・フレックの女性コンビだ。共同脚本執筆者に他に6名もの名前があるが,全員女性であり,編集・衣装・音楽担当にも女性が配されている。昨年の『ブラックパンサー』(18年Web専用#1)のキャスト&スタッフの大半が黒人だったのと好一対で,意図的な起用であると考えられる。上記3名以外の助演陣では,ジュード・ロウ,アネット・ベニングが,物語を左右する重要な役柄を演じている。
 以下,当欄の視点からの見どころである。
 ■ 太陽系外の惑星や神々の国から物語が始まり,やがて地球にやって来るパターンは,『スーパーマン』(78)や『マイティ・ソー』(11年7月号)と同じである。本作の場合,クリー帝国がその舞台となるが,そこでの人物紹介やクリー人とスクラル人の戦いの描写がかなり長く,30分以上もあっただろうか。高度な文明をもつクリー帝国の景観(写真1)や建物内の描写(写真2)は,美術的に凝っている。両軍のバトル・シーンにはCG/VFXが多用されているが,目新しさは感じない。
 
 
 
 
 
写真1 宇宙にあるクリー帝国のものものしい景観
 
 
 
 
 
写真2 スターフォース基地内の光景。いいセンスだ。
 
 
  ■ ヴァースの地球到着後は,彼女が記憶を取り戻すまでの物語が中心だ。時折超能力を発揮するが(写真3),ドラマ仕立てあって,中盤過ぎまでアクション・シーンは少ない。女性監督だとこれだけタッチが違うな,テンポも悪く,迫力がないなと感じてしまった。丁度,成人男子が女性コミックをかったるく感じる,あの感覚である。この部分でのCG/VFXの見ものは,フューリーと相棒のコールソンの25歳若返った顔だ(写真4)。一見,厚化粧のメイク顔のように見せているが,これは本人の顔の幾何形状モデルとFacial Capturingを使ったCG製の頭部である(写真5)。一方,スクラル人は特殊メイク中心だと見てとれた(写真6)。その他では,猫のクラーケンが本物なのかCG製なのか注目しよう(写真7)。 CGでしか有り得ない挙動も登場するので,恐らく実写とCGの併用だろう。スクラル人が他人に化ける様,地下鉄内での老婆とのバトル,2度の戦闘機ドッグファイト等も見ものである。
 
 
 
 
 
写真3 地球に到着後も,時折パワーを発揮する
 
 
 
 
 
写真4 CGで25歳若返ったフューリー(奥)とコールソン(手前)
 
 
 
 
 
 
 
写真5 サミュエル・L・ジャクソンの頭部の型を取ってCGモデルを作り(上),
若き日のフューリーをレンダリング(下)
 
 
 
 
 
写真6 スクラル人は耳や顔面をメイクしたと思われる
 
 
 
 
 
 
 
写真7 猫は本物とCGの使い分け(上は本物で,下はCGか?)
 
 
  ■ 残り40分頃から物語は急旋回する。終盤は最強のスーパー・ヒロインの面目躍如たる活躍で,激しいバトルが始まる(写真8)。中盤の退屈さが,まるで嘘のようだ。勿論,CG/VFXはふんだんに使われている。この部分での3D効果,音響効果が素晴らしく,IMAX 3Dで観るだけの価値は十分ある。プレビズはThird Floor,3D変換は大手のStereo DとLegend 3D,特殊メイクはLegacy Effects担当だ 。CG/VFXの主担当はILMだが,他にTrixter, Animal Logic, Lola VFX, Framestore, Digital Domain, Rising Sun Pictures, Scanline VFX, Luma Pictures, ,RISE Visual Effects Studios, SSVFX,DNEG等の多数社が参加している。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
写真8 キャロル(上)は目から光子ビームを発して(中),最強の女戦士キャプテン・マーベルに変身する(下)
(C) Marvel Studios 2018
 
 
  ()
 
 
 
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
  Page Top  
  sen  
 
back index next