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O plus E 2019年Webページ専用記事#3
 
その他の作品の短評
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
   『ハーツ・ビート・ラウド たびだちのうた』:インディーズ系の映画祭で多数の賞を得ている音楽映画だと聴いていたが,正方形のプレスシートを見て,嬉しくなった。サイズはEP盤並みだが,LP盤のジャケットを模したデザインで,配給会社の担当者の思い入れが感じられる。元ミュージシャンで,現在はNYでレコード店を営むシングルファーザー(ニック・オファーマン)と,医師を志してLAへの大学進学を控えた娘(カーシー・クレモンズ)の織りなすヒューマンドラマである。妻を交通事故で亡くした父親は娘をこよなく愛し,娘もその期待に応えようとするが,ふとしたことから2人の気持ちがすれ違う。娘の音楽的才能を見出した父親が,2人で吹き込んだ曲を音楽配信サービスSpotifyにアップロードしたところ,この曲がヒットし始めたからである。こうなると父親は娘に自分とバンドを組んでプロデビューすることを求め,娘は父親の気持ちを知りながらも,父と離れ自ら選んだ道を歩もうとする……。父親の友人に薬物依存症がいて,娘の恋人は男性でなく女性,というのが現代の米国らしい。2人を見守るその他の人々は至って平凡で,その視線は温かい。単館系映画ゆえに,妙に捻った暗い結末になることを怖れたが,父と娘が互いを尊重する爽やかな収め方で幸せな気分にさせてくれる。全編で流れる心地よい音楽や閉店記念のライブステージの出来映えからすれば,十分想像できた納得が行く着地点である。
 『The Crossing ザ・クロッシング Part I & Part II』:1週間違いでの公開だが,前後編の2本をまとめて紹介する。ジョン・ウー監督と言えば,1980年代から90年代にかけて『男たちの挽歌』シリーズで香港映画の黄金時代を築き,ハリウッド進出して『フェイス/オフ』(97) 『M:I-2 』(00年7月号)等のヒット作を連発した。久々に中国圏に戻っての『レッドクリフ Part I』(08年11月号)『同 Part II −未来への最終決戦−』(09年4月号) は堂々たる歴史活劇で,見事な凱旋を果たした。その後,大阪を舞台にした『マンハント』(18年2月号)まで単独監督作品は公開されなかったので,すっかり名前を忘れていた。2010年頃に癌の宣告を受けたというので,ずっと闘病生活を送っていたのかと思ったが,その間に本作のPart I (14)とPart II (15)を製作していたのである。5年間も本邦で公開されなかったのは配給ルートの都合だろうが,彼の大作が見られるのは素直に嬉しい。時代は第2次世界大戦後の1945年から49年にかけてで,蒋介石率いる「国民党」と毛沢東率いる「共産党」の内戦が描かれている。自国の戦後処理で精一杯だった日本人には,馴染みの薄い出来事である。その国共内戦に翻弄された男女3組の数奇な運命が描かれている。主演クレジットは,チャン・ツィイーと金城武。チャン・イーモウ監督の『LOVERS』(04年9月号)のコンビだから,本作でも恋人同士と思いきや,金城武のお相手は長澤まさみで,チャン・ツィイーのお相手は中国人男優のトン・ダーウェイだった。長澤まさみの起用は嬉しいが,日中韓3人の女優の中で一番出番が少なかったのが,少し残念だった。残る3人目の女優は,韓国のソン・ヘギョ。チャン・ツィイーとは3歳弱しか違わないのに,若く,気高く,輝くような美しさで登場する。クレジット通り,チャン・ツィイーの出番が最も多い。陰気な役で「さすがに老けたな」と感じたが,貧しさから娼婦にまで身を落とす汚れ役だったためだろう。全編でCG/VFXはたっぷりと使われている。Part Iは70年前の街並みや戦闘シーンに使われ,Part IIは上海から台湾に向かう大型客船「太平輪号」の沈没事故を描いている。接岸・出港・航行等,随所で『タイタニック 』(98年2月号)と酷似したシーンが登場するが,さすがに衝突・沈没シーンの迫力は敵わなかった。二部作の大河ドラマではあるが,同じシーンが何度も登場し,冗長に感じられた。表層的な出来事を駆け足で追い,物語に『レッドクリフ』ほどのコクがない。さすがの巨匠も,闘病生活で心身をすり減らしていたのだろう。
 『劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん』:当初は題名を『光のお父さん』とだけ聞いたので,少年・光君と父親の親子愛を描いたハートフルドラマかと想像した。正式のこの長い題名を見ると,誰でも人気ビデオゲームに関する映画だと分かる。といっても,かつて興行的には失敗に終わったフルCG映画の意欲作『ファイナルファンタジー』(01年9月号)のリターンマッチではない。RPGゲームのCG画面は頻出するが,実写映画であり,父と子のハートフルドラマであることに違いはなかった。息子が,日頃会話のない父親を誘い,FFシリーズの「光の戦士」に仕立てて,オンラインゲーム内で本音を語り合って,親子の絆を取り戻す……。この計画を語った日記スタイルのブログが大ヒットし,書籍化,TVドラマ化を経て,本作に至ったという経緯である。監督はTV版も担当した野口照夫で,主人公の父子には吉田鋼太郎と坂口健太郎が配されている。和製ドラマにしては,親子の絆の描写はクサく,まるでハリウッド映画並みだ。ゲーム同様に国際的なヒットまで目指しているのだろうか? 筆者自身の経験はと言えば,息子と一緒にゲームをしたのは四半世紀以上前のことだ。まだ,オンラインゲームはおろか,家庭用の3D-CGゲームもない頃だった。当欄の愛読者にゲーム愛好家は多くないようだから,最近のゲーム画面のCGクオリティ,オンラインゲームの使われ方を知るのには役立つ映画だと言っておこう。
 『ある町の高い煙突』:真面目な映画,典型的な硬派の社会派映画だ。新田次郎原作というだけでそう感じるが,出演者の中に仲代達矢の名前を見て,尚更そう感じた。約100年前の公害問題を描いた映画だから当然そうなるが,それを考慮しても尚この生真面目振りは群を抜いている。アメコミ・ヒーローもの,SF,ホラーばかり見ていると,たまにはこういう映画もいいなと感じる。時代は1910年代,茨城県の日立銅山が引き起こす煙害と戦った地元住民の物語で,世界一の大煙突建設で問題解決するまでの苦悩を描いている。主演は,住民代表の煙害対策委員長・関根三郎役の井出麻渡で,無名塾出身の舞台俳優だ。企業側の交渉役・加屋淳平(渡辺大),その妹で関根三郎と恋に落ちる千穂(小島梨里杏)を加えた3人が中心人物で,いずれもなかなかの好演だ。地元では大煙突建設は既に伝説であり,かなり美化されているのだろう。被害側も補償側もこんなに立派な人物同士なら,交渉の苦労は少ない。現実はもっと感情的か打算的で,補償問題はこじれたに違いない。監督は松村克弥で,ドキュメンタリー出身の監督らしい演出だ。半面,三郎と千穂のラブロマンスの描き方はぎこちない。映像的には,場所も家も,よくぞこんなロケ地を探してきたなと感心する。一方,煙道,煙突,煙,櫓はCG描写であり,山々や建物の一部もVFXだと見てとれた。
 『凪待ち』:上記の立派な主人公2人とは打って変わって,こちらはキャンブル依存症のダメ男が主人公だ。主演は元SMAPの香取慎吾で,「誰も見たことのない香取慎吾」だそうだ。元々SMAPメンバーでは随一の演技力だったが,人生につまづいた男の喪失感を見事に演じ切っている。バツイチの女性・亜弓(西田尚美)とその娘・美波(恒松祐里)と川崎市で同棲していた木野本郁男は,亜弓の故郷の石巻市に移り住む。ある夜,郁男は口論になった亜弓を車から降ろして1人にしてしまうが,その後,彼女は遺体となって発見される。罪悪感から自暴自棄になった郁男は,再びキャンブルにのめり込む……。「バイオレンスと絶望」「怒りと裏切り」「不条理と悲劇」をテーマとした本作の監督は,『彼女がその名を知らない鳥たち』(17年11月号)『孤狼の血』(18)の白石和彌監督。いま最も脂が乗った監督の1人だろう。原作はなく,骨太のオリジナル脚本だ。途中まで,このダメ男に感情移入して観ていたが,徹底したロクデナシ振りに呆れた。その彼を再生させる亜弓の老父・勝美役の吉澤健が渋く,恰好いい。一方,白石組常連のリリー・フランキーが演じる小野寺は,難役だと思うが,少し作り過ぎの感がした。バイオレンス度はこの監督にしては控え目で,サスペンス度もさほどではなかったが,最後は予想通り,心が救われる思いがした。
 『ハッピー・デス・デイ』:本編前のオープニングロゴ映像では,ユニバーサル映画の地球が何度もぐるぐる回っていた。新種のホラーサスペンスで,主人公の女子大生ツリーは,何度殺されても,同じ誕生日の朝に目が覚める。いわゆるタイムループものだが,同系統の『ミッション:8ミニッツ』(11年11月号)は犯人探しと分刻みのサスペンス,『オール・ユー・ニード・イズ・キル 』(14年7月号) はエイリアンと戦うSFアクションとして描かれていたが,本作は全編コメディタッチの学園ものだ。主演はジェシカ・ロースで,『ラ・ラ・ランド 』(17年3月号)にも出演していたらしいが,全く記憶にない。そこそこ美形で,少し垂れ目なのは,元女流名人の棋士・林葉直子に似ている。男を漁り,教授とも不倫関係のアバズレのクソ女という設定も似ている。それがループを繰り返す内,少しずつ変心し,健気で可愛くに見えてくる。何回死んだかは数え切れなかったが,毎回少しずつ展開が違ってくるのが楽しい。この種の映画は,いかに真犯人を突き止め,ループを終わらせるかを予想しながら観るのが愉しみとなる。もしかすると『ファイナル・デスティネーション』シリーズのように,「結局は全員死んでオシマイ。彼女も絶命して,もはやループも終了」という展開も少し考えたが,それはなく,無事にループは終了すると予想できた。下記の続編が作られていて,主人公も彼氏も同じであることがバレていたからだ。2年前の本作は本邦未公開であったが,続編が製作されたことにより,お蔵入りしていた1作目も一挙に公開となったようだ。
 ■『ハッピー・デス・デイ 2U』:という訳で,2年待たずに2週間後に続編が公開される。できれば,同日に同じ映画館で2本連続して観ることをオススメする。1作目の題名は「Happy Birthday Day」もじりであり,本作の「2U」は勿論「To You」と読ませるのだろう。本編前のオープニングロゴは,画面が3分割され,地球が3つ回っていた。今度はタイプループに加えて,パラレルワールドだなと察しがつく。監督のクリストファー・B・ランドンは続投で,主人公のツリー(ジェシカ・ローズ),恋人のカーター(イズラエル・ブルサード),その他の学友達も続演だ。監督も原作と同じクリストファー・B・ランドンで,同じ顔ぶれがキャンパス内で,ほぼ同じことを繰り返すのが楽しい。時代設定は2年後だが,本作では,カーターのルームメイトのライアン(フィー・ヴ)が量子力学を駆使して作った実験装置が原因で,ループが発生していたことが判明する。またもやツリーはループに巻き込まれるが,今度は友人たちも一緒で,それも別次元の世界でのループだった。並行世界ゆえに,死んだはずのママやルームメイトも登場する。前作のようなホラー性はなくなり,SFアクションコメディの性格が強まっている。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズのファンなら,本シリーズも気に入るはずだ。実際,本編中で登場人物たちが同シリーズのことを話していた。
 『ニューヨーク 最高の訳あり物件』:本作でまず気になったのは,表題中の「最高の」がどこに係っているかだった。「訳あり」なのか,それとも「物件」なのかである。2017年の東京国際映画祭での上映時のタイトルは『さようなら,ニック』で,原題『Forget about Nick』のほぼ直訳だから,今回の題名は軽妙なコメディであることを強調しているのだと分かる。チラシには2人の美女が背を向けながら意味あり気な視線を交わし合い,その間で男性が小さくなっている。概要を読まなくても,大人の女性用の映画で,女性監督の作品だと想像できる。舞台は現代のNYマンハッタンの最高級アパートで,突如,同じ夫に捨てられた元妻2人の共同生活が始まる……。こりゃ,面白そうだ。主人公はモデル兼ファッションデザイナーのジェイドで,演じるのはノルウェー出身のイングリッド・ボルゾ・ベルダル。ニコール・キッドマン似の女優で,『ヘラクレス』(14年11月号)では古代の女戦士を演じていたのに,本作では打って変わって,現代のキャリアウーマン役だ。彼女に10年前に夫を略奪された前妻マリア役は,ドイツ人演技派女優のカーチャ・リーマンで,全く価値観を異にする対照的な女性として描かれている。驚いたのは,監督が『ローザ・ルクセンブルク』(86)『ハンナ・アーレント』(12)のマルガレーテ・フォン・トロッタだったことだ。社会派映画,伝記映画で名声を得たドイツ人老監督が,こんなお軽いコメディを撮るとは!ジャンルとしては『プラダを着た悪魔』(06年11月号)と同系列だが,同作ほどノリは良くなかった。やはり硬派一辺倒だった女性監督には,この種のコメディは似合わない。むしろ共通点があったのは,『セックス・アンド・ザ・シティ』(08年9月号)だろうか。ジェイダとマリアの元夫ニック(ハルク・ビルギナー)の描き方は,同作のミスター・ビッグに似ている。一体こんなジジイのどこが魅力的なのかさっぱり分からないという点で,男性観客には理解不能の女性専科映画である。
 『ゴールデン・リバー』:ベネチア国際映画祭で銀熊賞(監督賞)を受賞したフランス製の西部劇で,監督・脚本は名匠ジャック・オーディアール。スタッフの大半は気心の知れたフランス人だが,初めての英語劇だという。そりゃそうだろう,米国西海岸が舞台でハリウッドの名優たちを起用しているのに,彼らにフランス語を話させては興醒めだ。カナダ人作家パトリック・デウィットが2011年に著した「シスターズ・ブラザース」が原作で,日本でも年末の各種ミステリーベストの上位にランキングされている。時代はゴールドラッシュに沸く1851年で,まだペリー提督が浦賀に来る前の時代である。最強の殺し屋イーライ兄弟(ジョン・C・ライリーとホアキン・フェニックス)とその手先の連絡係(ジェイク・ギレンホール)が,提督の依頼を受け,黄金の存在を判別する化学式を発見した科学者(リズ・アーメッド)を抹殺しようとする。敵対するはずの4人が,成り行きから手を組むという展開で,4人の掛け合いが面白い。とりわけ,科学者が共和国を理想郷と夢見る考えに,殺し屋達が感化されて行く様子が,西部劇としてユニークと言える。一応,お馴染みの幌馬車,酒場,銃撃戦は登場するが,細部の描写がリアルだ。必需品の馬への気遣い,野宿の準備,川で水を汲み,食事を作り,歯を磨き,足を洗うシーンまで描かれている。残り30分頃から物語は急旋回し,結末が心地よい。4人の内,殺し屋の兄役のジョン・C・ライリーが絶品だ。彼と夫人のアリソン・ディッキーが映画化権を獲得し,製作陣に名を連ねているだけのことはある。フランス人監督を起用して外国人の視点から描かせたことが,本作の最大の成功要因だと思う。
 『田園の守り人たち』:こちらもフランス映画だが,第1次世界大戦時のフランスの片田舎の村が舞台で,しっかり全編フランス語で語られている。監督・共同脚本はグザヴィエ・ボーヴォワで,夫や息子が戦争に駆り出された農家の女性達を情感豊かに描いている。大半のシーンが,まるで絵画のようだ。田園風景はミレーの「晩鐘」,モネの「積み藁」,人物はゴッホの人物画を思い出す。カラフルで,構図も照明もレンズも緻密に計算されている。戦闘シーンは殆どなく,農園と家族の絆を守ろうとする人間関係の描写が中心だ。フランスの田舎の保守性,頑迷さを感じさせる物語で,安直な結末にはしなかった。しっかりした映画を観たなという感じに浸れる。フランスの名女優ナタリー・バイと娘のローラ・スメットが劇中でも母娘役で初共演している。この一家に雇われるフランシーヌ役は新人女優のイリス・ブリーで,今後の注目株だ。覚えておこう。
 『アイアン・スカイ 第三帝国の逆襲』:2012年に公開された『アイアン・スカイ』の続編である。前作はそもそも試写を観る機会がなかったのだが,少し話題になっていると知っても,DVDを入手する気になれなかった。第2次世界大戦以降ずっと月に裏側に潜んでいたナチスの残党が,UFOの大群を率いて地球を侵略してくるという荒唐無稽な設定を馬鹿にしたためである。ところが,その続編が製作されたということから,それなりの見どころがあったのかと思い直し,ようやくネット配信のビデオで前作を観た。なるほど,中身はB級,VFXはA級というだけのことはある。加えて,ヒロインのレナーテを演じるユリア・ディーツェはなかなかの美形で,印象に残った。本作に関して,注目した点が2つある。まずは,前作同様,本作もCloud Fundingという手法で,約1.5億円もの資金を調達したという。エキストラ出演の権利等の特典をつけ,世界中から有志のカンパを得たそうだ。もう1つは,予告編の中身に驚いた。何と,ヒトラーが恐竜に乗って登場する。別の予告編では,トランプ大統領が登場し,「マーガレット・サッチャーやプーチンを出しておきながら,なぜ自分をこの映画に出演させないのか」と憤る。もうハチャメチャだ。映画本編ではさらに,スティーブ・ジョブズ,ウサマ・ビンラディン,毛沢東,金正恩までが登場するという。一体どうなることやら……。前作と同じく,フィンランド,ドイツ,ベルギーの合作映画で,引き続きフィンランド人のティモ・ヴオレンソラ監督がメガホンをとっている。前作の時代設定は2018年で,終盤の核戦争で地球の大半は破壊された。本作の設定はその30年後で,荒廃した地球を脱出した2千名弱の人々がナチスが建設した月面基地で生き延びていた。主人公は,レナーテとジェームズの娘オビ(ララ・ロッシ)である。彼女は絶滅に瀕した人類を救うため,地球の深部にあるというエネルギー源を求めて地球に降り立ち,地底のロストワールドで驚くべき世界を目にする……。確かにPixomondo社が担当したCG/VFXはA級であった。斬新ではないが,T-レックスも宇宙船も月面基地も,しっかりハリウッド水準で描かれている。随所で「スター・ウォーズ」「インディ・ジョーンズ」「ジュラシック・パーク」シリーズへのオマージュと思しきシーンが登場する。『アバター』(10年2月号)も意識しているなと感じる。そうでありながら,SF映画としての出来映えは,B級どころかC級だった。物語展開は妙に生真面目なところがあり,荒唐無稽な前提とマッチしていない。バランスが悪い。予告編の方が,ずっと良く出来ている。いっそ,ギャグ,パロディ満載の「悪ノリのコメディ」に徹した方が成功したと思う。そこが少し残念だが,前作に惚れ込んだ映画ファンなら,本作も必見だと感じた。
 
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