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O plus E誌 2009年4月号掲載
 
 
 
レッドクリフ Part II −未来への最終決戦−』
(東宝東和&エイベックス
エンタテインメント配給)
 
  (C)2009, Three Kingdoms, Limited.
  オフィシャルサイト[日本語][中国語]  
 
  [4月10日よりTOHOシネマズ日劇ほか全国東宝洋画系にて公開予定]   2009年2月5日 TOHOシネマズ梅田[完成披露試写会(大阪)]  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  後編も期待通りの豪華絵巻,世代を超えて満足度大  
 

 日本では,Part Iは昨年度の洋画の興収第2位だった。知名度の高い『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(08年7月号)に首位を譲ったのは止むなしとしても,ロングランを続けていたのは,噂を聞いて劇場に足を運んだ,世代を超えた映画ファンに支えられたからだろう。三国志ブームを引き起こしたのは,物語構成・英雄譚が,日本人の精神世界にフィットするものを持っていたからと,筆者は解釈している。
 当欄としても実に待ち遠しかった。業界関係者の面々もそうだったらしく,夕方からの完成披露試写会の席は,昼前後にはもう座席指定にやって来る人達の光景が目立った(筆者もその1人である)。東京の舞台挨拶には,ジョン・ウー監督,諸葛孔明役の金城武,小喬役のリン・チーリンが登場し,大阪,名古屋,福岡の会場にも映像が同時中継されていた。ジョン・ウー監督の語りが長く,通訳泣かせなのが印象的だった。台湾のモデル・リン・チーリンの長身と美しさにも驚きだった。映画の中ではクラシックな美人だが,素顔はそれより数段上の現代風超美形である。是非,今度は現代を舞台とした彼女の主演作を観てみたいものだ。
 時代は西暦208年,魏呉蜀が覇権を争う中国の三国時代で,軍師・諸葛孔明の奇策により,孫権・劉備連合軍が,魏の曹操の大軍を追い払ったところまでがPart Iだった。「赤壁の戦い」と称せられる,三国志の中でも著名な戦闘は,曹操軍の2,000隻の戦艦と80万の兵士による逆襲を描いている。日本で言えば,謙信対信玄の「川中島の戦い」に匹敵するが,その本家本元とも言える講談調の戦記ものである。さぁー,やっと始まるぞ……。
 一旦は曹操軍を撤退させた孫権・劉備連合軍の砦も,なお大軍に対峙され,食料不足と疫病のために戦意も尽きようとしていた。劉備は一旦兵を引き,孫権軍は孤立するが,軍師・孔明だけは,孫権軍の司令官・周瑜(トニー・レオン)との友情を重視してその場に残る。風上であることを利用し,火攻めで赤壁に向けて攻め込もうとする曹操軍。孫権(チャン・チェン)の妹・尚香(ヴィッキー・チャオ)はその大軍に潜入し,周瑜の妻・小喬は意を決して敵の大将・曹操(チャン・フォンイー)に身を委ねる。彼女に心を奪われた曹操の一瞬の気の緩みが,戦いの命運を左右してしまう……。
 作風としてはNHK大河ドラマの中国版,映画版であり,香港・米国で鍛えたジョン・ウーが日本市場も十分意識して作った活劇である。伝統的な講談風に男の生き方や権謀術策の模様を描いているが,その半面,上記の女性2人が大活躍するのは現代風の解釈なのだろう。Part IIでは,周瑜・曹操・小喬・尚香の活躍が目立つ。日本人観客には,Part Iに比べて諸葛孔明の活躍がやや少ないのが残念だが,周瑜こそが本作品の主役であるから止むを得ないところだ。
 壮大であり,後半の戦いの部分は一大スペクタルで見応え十分だ。堂々としていて迫力はあるが,くど過ぎない。老若男女に通じるものがあり,満足度は大で,これぞ映画だ。アジアNo.1ヒットの地位も当然だ。この戦いの映像には,戦争のむなしさ,残虐さは全く描かれていない。それでいいのかという問いには,これはイデオロギー映画でもメッセージ映画でもなく,純粋に古くから伝わるエンターテインメントの映像的表現であると答えざるを得ない。「三国志」とは,そういうものだ。
 以下,CG/VFXに関する感想と評価である。
 ■ 前半の圧巻は,またまた孔明の智恵で,敵軍から10万本の矢を集めるシーンである。勿論,飛来する矢はCGで,藁人形に突き刺さっているのは本物だ(写真1)。矢が飛ぶ音も印象的だが,刀の音,炎の音も工夫されている。

 
 

 
 
 

写真1 前半の圧巻は,敵から集めた10万本の矢

   
   ■ その他,CGは船,山,燃える船(写真2),多数の灯籠などの表現に使われている。曹操軍の船団の描写には,Part Iと同じシーンが登場するが,この重複は止むを得ないところだ。
 ■ 雲の動きもデジタル処理で実現されている。これだけ雲の動きが意味のある映画も珍しい。その表現が可能になったからこそ,この時代に「赤壁の戦い」をビジュアル化しようという企画が出て来たのだろう。CG抜きの戦闘シーンの描写にも一工夫ある(写真3)。  
 
 
 
 
 

写真2 風向きを利用した火攻めもCGの貢献が大

   
 
 

写真3 陸戦での奇策は,楯で囲ったブロック戦術

 

 
   ■ 後半の壮大な戦闘シーン(写真4)には,かなりしっかりしたイラスト(写真5)が事前に描かれていたようだ。デジタル技術は多用されているが,古き良き職人芸とのミックスもまた,この映画の魅力を引き出している。     
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写真4 雄大な構図の映像はデジタル技術の出番

   
 
 
 
 
 
写真5 城炎上と船炎上のイラスト画。この絵も結構すごい。
(C)2009, Three Kingdoms, Limited. All rights reserved.
 
   
  (画像は,O plus E誌掲載分から追加しています)  
   
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