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O plus E誌 2000年7月号掲載
 
 
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『M:I-2』
(パラマウント映画)
 
       
      (6/1 イマジカ試写室)  
         
     
  期待を裏切らない娯楽作品  
 
 ブライアン・デ・パルマ監督,トム・クルーズ製作・主演の大ヒット作『ミッション:インポッシブル』(1996)の続編で,原題はフルネームなのに,邦題は最初から略号の『M:I-2』になってしまった(どうもこの題はキーボード入力がしにくい)。今後『M:I-3』『M:I-4』とシリーズ化することも暗示している。
 ノンストップ・アクションは見飽きたと言いながら,やっぱり見に行ってしまった。あれだけの宣伝を打たれ,それでいてストーリーや制作ノートの情報統制が敷かれると,どうしても気になってしまう。実際,マスコミ用試写会も席1つ確保するのがやっとだった。シネコンに出向いてどれか1つだけ見るとなると,この映画を選んでしまう観客も多いことだろう。
 米国では,『グラディエーター』の大ヒットを,2週間後公開のディズニーの『ダイナソー』(日本では正月映画として公開)が予想通り軽くオーバードライブした。そして翌週,この『M:I-2』が2作を大きく引き離す大ヒットを記録した。なるほど,その人気に応えるだけの娯楽作品だ。いかにもハリウッド映画の方程式通りに製作されたという感じで,1作目が好きな観客にはこの続編も期待を裏切らない。少なくとも『スピード』から『スピード2』ほどの落差はないと言える。
 ブライアン・デ・パルマが『ミッション・トゥ・マーズ』に移ったため,替わってメガホンをとったのは香港出身のジョン・ウー監督である。『ブロークン・アロー』『フェイス・オフ』での実績があるだけに,いい後継が見つかったものだ。トム・クルーズとの相性も悪くないようで,溌剌とした気持ちのいい良質のアクション映画に仕上げている。
 トム・クルーズ人気で若い世代の指示も多いのだろうが,筆者らの年代には人気TV番組『スパイ大作戦』の映画化と意識している。60年代から70年代初期にかけてこの人気シリーズは,確か月曜日の夜9時から放映されていて,この時間帯は飲み屋から客が消えたというほどの人気だった。吹き替えは,若山弦蔵,納屋悟郎,田中信夫,小林修の名声優陣で,テープの指令声は大平透,紅一点の声は後の参議院議員山東昭子のはずだ(ということを,今でも宙で覚えているほどである:-))。あのテーマ曲が流れてくるだけでゾクゾクしてくるファンは少なくない。
 トム・クルーズ自身がこの番組の大ファンだったので映画にしたかったというが,第1作はなるほどそのチーム・プレイの味を残していた。ラングレー(CIA本部)侵入のメンバー構成がまさにそれである。ところが,第1作目で物語の行きがかり上,明智の隊長ジム・フェルプス(ジョン・ボイド)と力持ちのプロ(ジャン・レノ)を殺してしまった。残ったのは,変装のプロのイーサン・ハント(トム・クルーズ)とコンピュータ・ハッカーのルーサー(ヴィング・レイムス)だけである。ヴィング・レイムスは実にいい味を出しているが,これでは『スパイ大作戦』の面白さは出てこない。
 製作・主演とはいえ,トム・クルーズが格好良すぎて,スーパーヒーローぶりが目立つ。小道具もバイク・アクションも楽しいが,これではまるで「ニュー007」だ。もう少しトリック重視か,情報提供型映画にした方がシリーズが長続きすると思う。
 
一見の価値ある断崖のシーン
 
 メイキングに関する情報がほとんどなく,SFX系のスチル写真も全くないので,以下は映画をさらっと見ただけの想像と感想である。
 ■オリンピックを控えたシドニーの街を選んだのは正解だ。宇宙から見たオーストラリアもよくできていた。最近,オーストラリアでの映画制作も活発で,VFXスタジオも活気がある。もっとも,この映画のVFXは英国系のスタジオが主役のようだ。
 ■冒頭のロッククライミング・シーンが素晴らしい。『グラディエーター』の後だっただけに見事な合成に息をのんだ。ディジタル合成もここまでのクオリティに達したのかと。ところがどうやら,これは トム・クルーズ自身がユタ州の何千フィートもの断崖絶壁でスタントを演じたらしい(写真1)
写真1
合成ではなく,せいぜいワイヤー消し程度ということか。こんなところで曲芸の実演をやるなんて,それはそれで凄い!このシーンだけでも一見の価値はある。
 ■テレビではカセット・テープ,前作では機内ビデオで伝達されたIMF本部からの指令は,今回はサングラス型のシースルー・ディスプレイに映される。前作ではメガネ型カメラを描いていた。複合現実感システムの研究者としては,嬉しくなって笑ってしまった。よーし,ああいうのを実際に作って見せてやろうか。
 ■敵役のアンブロース(ダグレイ・スコット)の両眼に,炎の中から登場するイーサン・ハントのシルエットが映る。他でも何度か使われたテクニックだが,このSFXは実に効果的だった。これもディジタル合成ではなく,実写ではないのか?そんなはずはない。実写なら,カメラが目に映ってしまうはずだから。
 ■バイク・チェイスは見ものだし(写真2),クルマが間近で2,3回転するシーンも技ありだ。勿論,何らかのSFXだろう。
写真2

 ■侵入シーンは今回も迫力ある。変装やコンピュータ利用と並んでこのシリーズの名物となるだろう。ただし,GPSや衛星からの地上撮影は,『エネミー・オブ・アメリカ』の方がずっと迫力があった。
 ■イーサン・ハントの特技の変装は前作よりも頻繁に出てくる。変装の仮面を剥ぐところは,ラバーマスクらしくない。中間プロセスにVFXをうまく利用しているのだろう。
 ■映画が終わったとき隣の席の業界人が「あんなに変装を使えるなら,もっと他でも使えば敵を欺けるじゃないかよー」と大真面目で話していた。こんな娯楽映画でそんな辻褄合わせを望んでも仕方がないのに。いや真剣に見て下さって,監督も映画会社も感謝しています。
 ■もう1つ,帰りがけの駅までに別の記者達が「何であんな女使うんだ。どう見ても助け出したいほどの美人じゃないよな」と大声で話していた。ヒロインのナイア(サンディ・ニュートン)のことである。好みもあるし,女性の美醜を論じるのははばかられるが,この意見には同意する。「ニュー007」を目指すなら,ボンド・ガール級を揃えて欲しいものだ。
 
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