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O plus E誌 2011年11月号掲載
 
 
 
 
『ミッション:8ミニッツ』
(サミット・エンターテインメント
/ディズニー映画配給)
 
 
      (C) 2011 Summit Entertainment, LLC.

  オフィシャルサイト[日本語] [英語]  
 
  [10月28日よりTOHOシネマズ 有楽座ほか全国ロードショー公開予定]   2011年8月7日 JAL国際線機内ビデオ
2011年9月27日 角川試写室(大阪)
 
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  緊迫感と爽快感,さりげないVFXも見どころの1つ  
  異色西部劇2本の後は,ちょっとワクワクするSF映画だ。筆者の今年度ベスト3に入る佳作で,もう一度最初からじっくり観て精査したくなる類いの作品である。実際,この映画は国際線の往路の機内で観て気に入り,すぐにクライマックスからエンディングまでを何度も観た。復路では,全編英語で見直して,VFXの利用箇所やカメラワークを精査した。そして日本に戻ってから,改めて試写会のスクリーンで,前提や展開の矛盾はないか,構成やセリフを最初から再点検した次第だ。
 再度観たくなるのは,迷路かパズルのような構成のためで,テロリストによって爆破された列車内のシーンが何度も(実際には7回!)登場する。人間の脳には死亡時の直前8分間が記憶されているという理論に基づき,特殊プログラム「ソースコード」で犠牲者の意識下に別の人間を送り込み,8分以内に爆破犯人を突き止めようというミッションである。ジャンル的には,タイムトラベルの一種の「ループもの」に属すのだろうが,終盤はパラレル・ワールドとも解釈できる展開だ。「映画通ほどダマされる」という結末は,辻褄が合っているのか,後で考え込む愉しみも残されている。『インセプション』(10年8月号)と比較しての議論が多いが,むしろ『バンテージ・ポイント』(08年3月号)を気に入った読者に絶対オススメの一作である。
 監督は『月に囚われた男』(10年4月号)のダンカン・ジョーンズ。まだこれが2作目とは思えぬ力量で,今後ともこの監督の作品は見逃せない。SFとしての謎賭かけも絶妙だし,本作を爽やかなラブストーリーに仕立てる腕も確かだ。特命を帯びて任務に就く陸軍大尉役は『ブロークバック・マウンテン』(05)のジェイク・ギレンホール。最近,色々な役柄に挑戦し,好い俳優に育ったものだ。相手役の女性は『M:i:III』(06年7月号)のミシェル・モナハン。最初の登場時は野暮臭い感じだったのだが,物語が進む(ソースコード世界に何度も入り込む)につれ,次第に魅力的に見えてくる。これは,主人公の目線でそう感じるようにとの演出だろう。
 独創的かつ爽快なSFだが,サイドストーリーの入れ方も上手い。お決まりの父と息子に会話には胸がじんとくるし,主人公とモニター越しに接する女性空軍大尉(ヴェラ・ファーミガ)との会話はもっといい。年上の女性に甘える仕草は,J・ギレンホールの天性の女殺しの技だろうか。ジェイソン・ボーンとCIA女性管理者パメラの関係を思い出す。V・ファーミガが,マギー・ギレンホールに少し似たタイプなので,姉と弟のような感じも醸し出している。そんな味付けもある映画だ。
 そして,当欄として語らなければならないのが,そうと見えない形でさりげなく使われ,かつ堅実に威力を発揮しているVFXの存在だ。意識空間へのワープ時のコラージュ的な映像や爆発シーン(写真1)はもちろんCG/VFXの産物である。シカゴの町中で列車が爆発し,脱線転覆するシーンがCGであり,その他でも合成と思しきシーンが何ヶ所も登場するとなれば,そもそもこの2階建ての列車が実在したのかも疑わしい(写真2)
 
   
 
 

写真1 列車の脱線や爆発は,当然CG/VFXでの描写

   
 
 
 
写真2 カナダの郊外で撮影(上)。遠景だけでなく,列車そのものもCGで挿入(下)。
 
   
  少し考えれば,シカゴの街中や橋上の大渋滞シーンや主人公が列車から飛び降りるシーンも,VFXで加工したものだと分かるだろう。そして,7度に渡って列車内をカメラが縦横に動き回るが,本物の列車内での撮影はなく,シーン毎に手を変え,品を変えた,巧みなセット造形とVFXの合わせ技である(写真3)。このスリリングでスピーディなカメラワークが,本作の緊迫感を一段と高めていることに注意して欲しい。
   
 
 
 
写真3 列車内も,複雑なセットでの縦横無尽な特撮
(C) 2011 Summit Entertainment, LLC. All rights reserved.
 
   
   この映画を2度以上観る読者のために,ちょっとしたクイズを出しておこう。エンディング近くで,コルターとクリスティーナがシカゴ・ダウンタウンの公園を訪れる幸せそうなシーンがある。複雑な曲面で構成された鏡面のオブジェがあり,それに写った2人の姿を捉えた映像が登場する。撮影カメラ自体を写さずに,これは一体どうやって撮ったのでしょうか?  
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  (画像は,O plus E誌掲載分を入替・追加しています)  
   
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