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O plus E誌 2019年5・6月号掲載
 
 
アラジン』
(ウォルト・ディズニー映画 )
      (C) 2019 Disney Enterprises, Inc.
 
  オフィシャルサイト[日本語]    
  [6月7日よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー公開予定]   2019年5月14日 TOHOシネマズ梅田[完成披露試写会(大阪)]
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  第2次黄金期ディズニーアニメの実写映画化第2弾  
  毎月のように凄まじいラインナップで迫ってくるディズニー配給網だが,本号で紹介するのは『ダンボ』(19年Web専用#2)に続き,かつてのセル調アニメの実写映画化作品である。キャッチコピーは「『美女と野獣』のディズニーが贈る,胸躍る冒険と真実の愛を描いた究極のエンターテインメント」であるから,本作の出来映えを予想するには,今年の『ダンボ』より『美女と野獣』(17年5月号)を物差しにした方が良さそうだ。
 原点となった作品を振り返ってみよう。伝統あるディズニーアニメの第1次黄金期と言われるのは1950年代から60年代初めまでの時期である。しばらく低迷の後,『美女と野獣』(91)『アラジン』(92)『ライオン・キング』(94)の3作が第2次黄金期とされている。いずれも興行的に大成功で,主題歌はスタンダード曲となった。3作ともブロードウェイ・ミュージカル化され,我が国の劇団四季もレパートリーに加えている。まだCG利用はごく一部で,典型的なディズニー風のアニメだった。その最初の『美女と野獣』が2年前にCG/VFX満載の実写映画化され,成功を収めたからには,残る2作品も同じ道を辿るのは時間の問題だった。本作に続いて,実写版『ライオン・キング』は来たる8月9日公開である。
 アニメ版『アラジン』の原典は,「アラビアン・ナイト(千夜一夜物語)」の「アラジンと魔法のランプ」である。誰もが「アリババと40人の盗賊」「シンドバッドの冒険」と並ぶ人気エピソードだと知っているが,正確な話を覚えている人は意外と少ない。ディズニーアニメはそれを独自解釈で「愛の物語」として描いている。
 その92年アニメ版をおさらいしておこう。中東の架空の国アグラバーが舞台で,お忍びで町に出たジャスミン王女は泥棒の青年アラジンと運命の出会いを果たす。悪人に唆され,岩山の洞窟でアラジンが入手した魔法のランプを擦ると魔人ジーニーが現われ,3つの願いを叶えてくれると言う。恋するジャスミンに近づくため,アラジンが魔法でアリ王子に化けるが,国も王女も奪おうとする国務大臣ジャファーが妨害する。最終的にアラジンはジャスミン王女と結ばれるが,お馴染みのシンデレラ物語ではなく,「逆玉の輿」だ。3つ目の願いで,魔人ジーニーが普通の人間に戻るのも,同作の特長である。
 このアニメのヒット後,ビデオ販売専用の続編『アラジン ジャファーの逆襲』(94)『アラジン完結編 盗賊王の伝説』(96)が製作されたが,今回実写映画化されたのは,1作目だけで,しかもほぼ忠実に物語をなぞっている。
 監督は『シャーロック・ホームズ』(10年4月号)『キング・アーサー』(17年7月号)のガイ・リッチー。よく知られた物語の再映画化が得意なようだ。主演は,アラジンでもジャスミンでもなく,ジーニー役のウィル・スミスが最初にクレジットされている。実際,存在感抜群の派手な演技で陽気な魔人を演じている。元が人気ラッパーだけに,歌もダンスもキマっていた。やや影が薄いアラジン役はエジプト系カナダ人のメナ・マスード,ジャスミン王女は英国人とインド人の混血のナオミ・スコットが演じている。アニメ版以上に意志の強い現代風女性で,ヒロインに相応しい美形だ。
 以下,当欄の視点でのコメントである。
 ■ 物語がほぼ同じゆえに,実写でいかに豪華に見せるかがポイントだ。市場のカラフルなセット,アラジンのパルクール風のアクションから始まり,岩山の洞窟(写真1),魔法のランプの登場場面(写真2)もアニメ版より高級感に溢れている。王宮内部もジャスミンの数々の衣装もゴージャスで(写真3),ジーニーや悪役ジャファーの衣装まで立派に見える(写真4)。アリ王子が王宮に向かうシーンは,まるでディズニーランドのパレードだ。
 
 
 
 
 
写真1 アニメ版同様,ライオンの顔をした岩山の洞窟
 
 
 
 
 
写真2 洞窟の中で見つけた魔法のランプ
 
 
 
 
 
写真3 ジャスミン王女は,次々と色を変えてカラフルな衣装で登場
 
 
 
 
 
写真4 敵役のジャファーも結構豪華な衣装で登場
 
 
  ■ CG描写の最大の見どころは,ランプから現れたジーニーである。巨大化したり,下半身がなく飛び回ったり,着衣のまま普通の人間姿以外は,当然CG製のウィル・スミスだろう(写真5)。アラジンのパートナーの猿のアブー(写真6),ジャスミンのガード役の虎のラジャー,ジャファーの参謀役のオウムのイアーゴ(写真7)の3匹も,アニメ版から引き続き登場する。勿論いずれもCG製だ。もうこの程度は当たり前と思いつつも,後述の日本映画や韓国映画と比べると,レベルの高さを感じる。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
写真5 ウィル・スミス演じるジーニーは存在感抜群。この姿は,ほぼすべてCG製。
 
 
 
 
 
写真6 アラジンのパートナーのアブー。表情や体毛の表現もいい出来だ。
 
 
 
 
 
写真7 ジャファーの参謀役のイアーゴ。敵ながら,見事な飛翔。
 
 
   ■ アグラバーの王宮や町の遠景や空からの俯瞰シーンはすべてCG描画だろう(写真8)。昼も夜も美しい。恋する2人が名曲“A Whole New World”を歌いながら,魔法の絨毯で空を飛ぶシーンはどこで登場するのか心配したが,しっかりVFXで描かれていた(写真9)。そこで空から眺めるシーンも絶景だ。CG/VFXの主担当はILM,副担当はHybrideとOne of Usで, プレビズはProof,ポストビズはHost VFXが担当している。 
 
 
 
 
 
写真8 朝焼けの中のアグラバー王国と宮殿。美しい。
 
 
 
 
 
写真9 名曲に乗って,期待通りのカーペット飛行
(C) 2019 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
 
    
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
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