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O plus E誌 2017年6月号掲載
 
 
LOGAN/
ローガン』
(20世紀フォックス映画)
      (C) 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [6月1日よりTOHOシネマズ日劇他全国ロードショー公開予定]   2017年3月30日 GAGA試写室(大阪)
       
   
 
ガーディアンズ・
オブ・ギャラクシー:
リミックス』

(ウォルト・ディズニー映画)

      (C) Marvel Studios 2016
 
  オフィシャルサイト[日本語]    
  [5月12日よりTOHOシネマズ スカラ座他全国ロードショー公開中]   2017年4月28日 GAGA試写室(大阪)  
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  陰と陽,対称的なマーベル・ヒーローもの2本  
  受ける印象からすれば全く別種の映画であり,別々に紹介しても良かったのだが,あえて2本並べて論じることにした。共通項はただ1点,いずれもマーベル・コミックスの実写映画作品というだけである。それが見事なまでに,陰と陽,映画の性格付けも違えば,配給会社も違っている。一方はシリーズ9作目で主演男優が退場するパワフルかつ重厚なドラマであり,もう一方はシリーズ2作目でパワー全開,軽妙かつ華麗な娯楽作品でスピード感に溢れている。あまりに対称的なので,比べて語りたくなった次第である。
 
 
  3つの3部作の着地点に相応しい,重厚な大力作  
  人気の『X-MEN』シリーズの9作目である。『X-メン』(00年10月号)『X-MEN2』(03年6月号)『X-MEN:ファイナル ディシジョン』(06年9月号)が,最初の3部作だった。若き日のプロフェッサーXとマグニートーを登場させた新3部作は,『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(11年7月号)に始まり,新旧両キャストを時間軸上に配した『X-MEN:フューチャー&パスト』(14)を経て,『X-MEN:アポカリプス』(16年8月号)でこの3部作を終えている。その間を縫って,シリーズの顔のウルヴァリンことローガン(ヒュー・ジャックマン)だけにスポットライトを当てたスピンオフ作品『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』(09年9月号)『ウルヴァリン:SAMURAI』(13年10月号)が製作された。本作はその3部作の完結編に当たる。
 既に17年間にわたってこの役を演じ続けてきたH・ジャックマンが,本作をもって降板すると報道されている。加えて,X-メンたちの育ての親,プロフェッサーXことチャールズ・エグゼビア役のパトリック・スチュワートも降板することが伝わってきた。不老不死であるはずの彼らが本作の中で一体どうなるのかが話題になり,消滅するのか,新作の中でまた甦るのかも噂になっている。なるほど,前評判を煽る上手い営業戦略だ。ここでは,これで彼らが引退しても不思議ではない展開と結末になっているとだけ記しておこう。
 まず登場するH・ジャックマンが余りにも老け顔であることに驚く(写真1)。いくら17年演じ続けていたとは言え,まだ48歳,この疲れた顔はないだろう。時代設定は2029年,治癒能力を失って傷つき,これが疲れ果てたウルヴァリンの姿なのである(写真2)。表題に敢えて「ローガン」の名を使ったのは,もはや殆ど普通の人間だという意味を込めているのかも知れない。単なる老けメイクではなく,シーンによってはVFX加工で表情も作っているようだ。このローガンが,何と運転手として働きながら,老いて,もはや自己制御もできないプロフェッサーXを介護している。その姿が痛々しい。何やら老老介護が普通の近未来社会を暗示しているかのようだ。
 
 
 
 
 
写真1 17年間演じ続けたにしても,この風貌には驚いた
 
 
 
 
 
写真2 不死身であったウルヴァリンも,この窮地に
 
 
  他のミュータント仲間も超能力を失い,散り散りになり,絶滅の危機に瀕している。そんな中で,少女ローラ(ダフネ・キーン)がウルヴァリンに近い能力を持っていることが判明する。ミュータントの未来を託すべく,ローガンは彼女を守るために,迫り来る敵と戦う……。
 監督は,前作『ウルヴァリン:SAMURAI』に引き続き,ジェームズ・マンゴールド。ところが,本作は同じ監督の作品と思えないほど変貌し,充実している。少しダークな物語であるが,重厚で深味のある映画であることがすぐ分かる。バットマン・シリーズの『ダークナイト』(08年8月号) が大成功を収め,同路線を指向する映画が急増したが,肩を並べる作品は登場せず,大半は失敗に終わっている。本作は「X-MENにおける『ダークナイト』だ」と言及する評があるように,パワフルさでも奥深さでも,比肩し得る作品に仕上がっている。
 以下,当欄の視点でのコメントである。
 ■ 本作はシリーズ最高傑作であると評価したい。その半面,CG/VFXの使用量は最低水準である。それでも,ウルヴァリンの超硬合金の爪(写真3)や追跡者ピアースの金属製の義手(写真4)の大半のシーンはCGで描いているだろうし,ヘリやとてつもなく長い列車もCG描写だと思われる。狂乱状態のプロフェッサーXの猛烈なサイコパワーで空間が歪むシーンなども VFXの産物だろう。担当はImage Engine, Soho VFX, Rising Sun Pictures等で,さほど大人数をかけていない。
 
 
 
 
 
 
 
写真3 かろうじてウルヴァリンらしい活躍を見せるシーン
 
 
 
 
 
 
 
写真4 冷酷な追跡者のピアースの右手はメカニカル
 
 
  ■ ローガンの老いて疲れた顔はVFX技術で加工したものであることは既に述べた。それが可能ならば,ローラの鬼のような形相も,大半はデジタル技術の産物だと想像できる(写真5)。かなりの演技力をもった少女ではあるが,さすがにあの恐ろしい形相までは無理だろう。この程度のCG/VFXで済ませたということに,本作の内容についての自信が感じられる。
 
 
 
 
 
写真5 顔も全身もスキャンしたデータがあり,随所でCG製のローラが登場する
(C) 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation
 
 
  シリーズ2作目も絶好調,軽妙で痛快な大娯楽作  
   日米同時公開のため,本号が出る頃には,本作は公開後既に2週間近く経っている。通常なら本誌掲載は断念し,Webページだけでの紹介にするところだが,当欄としては外す訳には行かない一作だった。本邦での公開順は逆になったが,先に観ていた『LOGAN/ローガン』と比べて語りたかった。
 シリーズ2作目で「マーベル・シネマティック・ユニバース」の15作目に当たる。刑務所で出会った荒くれ者5人組が「銀河系の平和を守る護衛軍」となる1作目は,3年前の夏に公開されている。この上まだマーベル・ヒーロー達が増えるのかと思ったが,なかなか良くできた娯楽作だった。続編の本作は,既に各人の紹介が終わっているので,さらに快調に物語が展開する。
 『LOGAN/ローガン』とは異なり,全編の9割以上ではっきりCG/VFXだと分かる描写が登場する。5人組と言っても,ロケットとグルートはフルCG表現だから当然だとも言える。では,着いて行くのもやっとのノンストップ・アクションの連続かと言えば,そうでもない。明示されてはいないが,第1幕,第2幕…のように話が分かれているので,物語展開が把握しやすい。
 脚本・監督は,前作に引き続きジェームズ・ガン。既に第3作の監督も決定している。5人組のリーダーの「スター・ロード」ことピーター・クイルを演じるのは,クリス・プラット。前作では「イケメンだが,どこにでもいる顔で,あまり印象に残らない」と書いたが,その後『ジュラシック・ワールド』(15年8月号)で主演し,最近『マグニフィセント・セブン』(17年2月号) 『パッセンジャー』(17年4月号)にも登場したので,すっかり馴染みの顔になってしまった。本作では,彼の父親だと名乗るエゴ(カート・ラッセル)が登場し,このトンデモナイ父親のために大騒動に巻き込まれる。
 一方,美しい暗殺者ガモーラ(ゾーイ・サルダナ)にも妹ネビュラ(カレン・ギラン)が存在し,彼女も物語の大きな鍵を握る。かく左様に,新登場キャラをうまく物語に繋げているが,5人組で最も変化が大きかったのは,樹木型ヒューマノイドのグルートだ。前作で破壊され,新芽から再出発することが予告されていたが,本作では小木の「ベビー・グルート」として登場する。彼の出番とルックスに関しては,後で語ろう。以下,当欄の視点での感想と論評である。
 ■ 前作で存在感抜群だったのは,アライグマのロケット。本作では,相変わらず憎まれ口を利きながらも,ピーターやベビー・グルードを支える役に回っている(写真6)。前作では,その毛の質感表現と動きに感心したが,もはやそれも当たり前に思える。CG/VFXの担当は,Weta Digital, Framestore, Method Studios等,10数社で,質・量ともにトップレベルだ。それを逐一語る紙幅はない。オープニングからクライマックスまで,緩みなく,しっかり描かれているとだけ記しておこう。
 
 
 
 
 
 
 
写真6 前作の主役アライグマのロケットも,本作では助演の役割
 
 
   ■ CG/VFX技術を活かすための,美術セット自体のデザインが素晴らしい。前作でもそれを褒めたが,本作では一段と力が入っている。ソヴリン星をはじめ,惑星や基地ごとに,かなり凝った印象のデザインが施されている(写真7)。各シーン毎に別の美術班を割り当て,対抗心からのレベルアップを図っているように思える。
 
 
 
 
 
写真7 この程度のCGセットは,全編で随所に登場
 
 
   ■ 最も印象的だったのは,可愛いベビー・グルートの活躍ぶりだ(写真8)。最も長身で,激しいアクションをこなしたグルートが,愛らしい姿で再登場するので,その落差に驚く。小さな木であるのに,結構手の込んだルックスである。キャラクター・グッズ市場を意識したデザインだと感じたが,早くも「マーベル史上最高の可愛さ」として,かなり人気しているようだ。声の出演には,子役か女性を起用するのかと思ったが,前作に引き続きヴィン・ディーゼルの声だった。もっとも,セリフは「I am Groot!」だけなので,違和感は小さい。  
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写真8 ベビー・グルートはタイトルバックからクライマックスまで全編で登場。
よく考えられたデザインで,グッズ市場でも大人気。
(C) Marvel Studios 2016
 
 
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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