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O plus E誌 2015年8月号掲載
 
 
ジュラシック・ワールド
(ユニバーサル映画/東宝東和配給)
      (C) UNIVERSAL STUDIOS & AMBLIN ENTERTAINMENT, INC.
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [8月5日よりTOHOシネマズ日劇他全国ロードショー公開予定]   2015年6月25日 TOHOシネマズ梅田[完成披露試写会(大阪)]
       
   
 
ターミネーター:新起動/ジェニシス』

(パラマウント映画)

      (C) 2015 Paramount Pictures
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [7月10日よりTOHOシネマズ日劇他全国ロードショー公開中]   2015年6月30日 TOHOシネマズなんば[完成披露試写会(大阪)]  
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  VFX史の記念碑的2大作の後継作品が,この夏に  
  既に何度も書いたが,CGの威力をアピールした最初の大ヒット映画は『ターミネーター2 (T2)』(91)であり,その効用を決定的にしたのは,2年後の『ジュラシック・パーク』(93)であった。いずれもCG/VFX担当はILMで,共に視覚効果部門でオスカーを受賞している。このVFX史に燦然と輝く両作品のシリーズ最新作が今夏相次いで公開されるというので,当欄もヒートアップしている。2作とも偉大な原点へのオマージュがたっぷりのようなので,尚更だ。いずれから語ろうかと迷ったが,米国での公開順,試写を観た順に紹介しよう。
 
 
  本当に存在するなら…と思わせるパーク・デザイン  
  記念すべき1作目の恐竜登場シーンでCG利用は僅か15%程度で,他はすべてアニマトロニクスであった。それでもCG技術を,他では表現できないシーンで巧みに使っていた。シリーズ2作目は『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』(97年8月号),3作目は『ジュラシック・パークIII』(01年9月号)で, 恐竜の種類は増え,CGの比率も品質も向上したが,余り印象に残っていない。何しろ,1作目の印象が強烈だった。
 本作は14年振りの4作目で,この間CG/VFXは飛躍的進歩を遂げ,今や恐竜をCGで描くことなど当たり前になった。その元祖たる本シリーズ最新作にはどのような趣向が凝らされているのかが関心の的だが,予告編では露骨に1作目の映像を再利用し,その正統な続編であることを打ち出していた。この予告編が素晴らしく,前評判も高く,6月10〜12日の各国での公開以来,世界的なメガヒットとなっている。
 コスタリカ沖の島に作られた「ジュラシック・パーク」はかつての事故で一時期閉鎖されていたが,大幅な拡張,リニューアルを行なって「ジュラシック・ワールド」として再出発したという設定である。残された恐竜の遺伝子操作により,新しい恐竜がどんどん誕生している。その中の1種,高い知能と運動能力をもった肉食恐竜「インドミナス・レックス」(写真1)が脱走したことにより,パーク内は大混乱に陥り,やがて死者も出る……。このパニックを危機一髪でいかに収めるか,展開パターンは定番で単純だが,楽しみはビジュアル面での進化だ。
 
 
 
 
 
写真1 T-レックスより獰猛で,高度な知能をもつインドミナス・レックス
 
 
  監督・脚本は,コリン・トレボロウ。脚本家出身で監督経験は浅いが,後には製作総指揮で御大S・スピルバーグが控えている。主演は恐竜の飼育係オーウェンにクリス・プラット,ヒロインの管理責任者クレアにブライス・ダラス・ハワードを配している。C・プラットは,『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(14年9月号)で「イケメンだが,どこにでもいる顔で,あまり印象に残らない」と書いたが,今回は主演男女優が共に平凡だ。真の主役は恐竜だから,それでもいいのだが……。
 以下,CG/VFX中心での見どころである。
 ■ 何と言っても,新パークのデザインが素晴らしい。新しいビジターセンターやアトラクションの配置など,世界中の動物園,水族館,サファリの最高峰を本気で集約させたような豪華な設計で,園内の商業施設やホテルは実物大セットを本当に作っている。水棲恐竜モササウルスがサメを食べるショー(写真2),翼竜が舞い飛ぶ翼竜園など,実在するなら行ってみたくなる。最新の遺伝子工学なら,トカゲやワニと化石中のDNAをかけ合わせて新型恐竜を創生できるのでは,と思える演出だ。このビジュアルのリアリティが本作の真髄である。
 
 
 
 
 
写真2 こんなアトラクションなら,絶対に見たくなる
 
 
  ■ CG描写での皮膚の質感,動きの躍動感はもう当たり前で,オーウェルが飼育しているヴェロキラプトル(ラプター)は,微妙な感情を表情や仕草で表現できる(写真3)。その半面,故スタン・ウィンストンに敬意を表して,ラプターの頭部だけのシーン,瀕死のアパトサウルス等はアニマトロニクスで撮影している。1作目の原点に戻り,ハワイの光景にガリミムスを疾走させる等,既視感のあるシーンの再現も嬉しい(写真4)
 
 
 
 
 
 
 
写真3 本作の主役のラプターたち。表情にも注目。
 
 
 
 
 
写真4 既視感溢れるこのシーンも嬉しくなる
 
 
  ■ デザインの最高峰は,パーク内を遊覧できる乗り物ジャイロスフィアだ(写真5)。実際には,2人乗りの座席と骨格だけの車両をレール上で走行させて撮影し,これに球状の透明ボディをVFX付加して回転移動できるように見せている。屋内施設では,恐竜ホログラムが観客を楽しませていた。このホログラム(らしきCG映像)はHybride社が担当で,その他の膨大なCG/VFXシーンの大半は,ほぼILM一社で処理している。本シリーズの生みの親としての矜持だろうか。今後ユニバーサル・スタジオでは,本作のアイディアをどこまでテーマパーク・アトラクションで再現するのか,今から楽しみだ。
 
 
 
 
 
写真5 デザインNo.1は回転移動するジャイロスフィア
(C) UNIVERSAL STUDIOS & AMBLIN ENTERTAINMENT, INC.
 
 
  「I'll Be Back」の公約通り,復活したが……  
   一方の『ターミネーター』シリーズは,『T2』の大ヒット後,『ターミネーター3』(03年8月号)『ターミネーター4』(09年7月号)が公開されている。改めて思えば,『T3』は全くの駄作,『T4』はそれより若干マシであったが,印象に残らない凡作であった。では,当時なぜ『T3』『T4』にそこそこの評点を与えたか,少し言い訳するならば,同時代の他の映画と比べて,VFX技術としての挑戦があったからである。最近はそれが当たり前になった以上,CG/VFX多用だけで高い評点は与えられない。
 本作の監督は,『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』(14年2月号)のアラン・テイラー。『T3』以降,毎回製作会社/配給会社が異なり,監督も脚本家も交替している。映画化権が次々と転売された結果,シリーズ全体のアイデンティティも一貫性も失われてしまった。
 本作の最大の焦点は,2期8年のカリフォルニア州知事を終え,「I'll Be Back」の公約通り,本シリーズに戻ってきたアーノルド・シュワルツェネッガーの扱いだ。昔鍛えた体躯があるとはいえ,さすがに老醜は隠し切れず,CGでの加工にも限度がある。原作者で『T2』までメガホンを取ったジェームズ・キャメロンが,その解決策を助言したという。お馴染みのT-800型ターミネーターは,戦闘能力は不変でも,外形の皮膚は経年変化で老朽化するという解釈だ。なるほど,人型ロボットなら,こういう設計の機種があっても不思議ではない。
 本作の時代設定は2029年で,世界を支配する人工知能スカイネットとジョン・コナー率いる人類抵抗軍が決着をつけようとしている(写真6)。『T4』の2018年を2029年に変えただけだ。そして,ジョン・コナーが生まれる前の1984年にターミネーターを送り込み,母サラ・コナーを抹殺しようというお馴染みの展開となる。未来から過去を変えに来るのなら,タイムラインはどんどん分岐し,いくらでも勝手な話に持ち込める。本作は,そのご都合主義の極致であり,1984年から2017年に移動するに至っては,ここで物語について行けなくなったという観衆も少なくなかった。以下,その欠点に目をつぶりつつ,精一杯評価したCG/VFXの見どころである。
 
 
 
 
 
写真6 本作では2029年が,スカイネットに支配された未来社会
 
 
  ■ 注目は1984年の新旧ターミネーター対決だ。若作りのT-800シュワはシリコン・ラバー製のパペット(写真7)とCG製デジタルダブルの併用だ。一方,サラ・コナーの守護神として待ち受ける壮年T-800は生身の演技である(写真8)。その33年後の2017年には,老年T-800が登場する(写真9)。こちらも生身の演技だが,皮膚の下のメカの露出シーンは,勿論CG/VFXで加工後の産物だ(写真10)
 
 
 
 
 
 
 
写真7 最も若いT-800は,シリコンとCGで実現
 
 
 
 
 
写真8 壮年の守護神T-800は,本人が少しだけ若作りで登場
 
 
 
 
 
写真9 2017年に待ち受けていた姿は,ほぼ実施の年齢で登場
 
 
 
 
 
写真10 こういったVFXシーンは,いつ見ても嬉しい
 
 
  ■ 韓流スターのイ・ビョンホンが,液状金属ロボットのT-1000として登場する。確かに『T2』のロバート・パトリックと顔の骨格が似ている(写真11)。構えたポーズ,歩き方までそっくりで,これは『T2』ファンにとっては頗る嬉しい。その他,『T1』『T2』でお馴染みのシーンやセリフが多数登場し,サービス精神は旺盛だ。
 
 
 
 
 
写真11 R・パトリックそっくりのT-1000のポーズ
 
 
  ■ 本作でサラ・コナーを演じるのは,エミリア・クラーク。予告編で見る限り,ノースリーブ姿で銃を連射する様は,まさにサラ・コナーだった。ところが,クロエ=グレース・モレッツ似の容貌は可愛過ぎて,これでは戦う女性に見えない(写真12)。もっと不満は,ジョン・コナー役のジェイソン・クラークだ。好い俳優だが,この悪人面では,『T2』の美少年ジョンの未来の姿に見えない。
 
 
 
 
 
写真12 クロエちゃん似で.これじゃ可愛過ぎる
 
 
  ■ CG/VFXは,全編でたっぷり利用されている。主担当はDouble Negative,副担当はMPCで,その他数社の中にILMまであるとなれば,質が悪かろうはずはない。「審判の日」後の破壊された世界(写真13),少しレトロな雰囲気のタイムマシン(写真14),クライマックスの金門橋上での戦い等,枚挙にいとまがないが,もはやそれを観ても新しさは感じなかった。『T2』の名声を汚さぬよう,次作以降はターミネートした方がいい。
 
 
 
 
 
写真13 「審判の日」で破壊された世界。一流スタジオが描けば,この程度は容易に達成。
 
 
 
 
 
写真14 未来にも転送できるTMは,少しレトロ調
(C) 2015 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
 
 
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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