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O plus E誌 2016年8月号掲載
 
 
X-MEN:アポカリ
プス』
(20世紀フォックス映画)
      (C) 2016 MARVEL & Subs. (C) 2016 Twentieth Century Fox
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [8月11日よりTOHOシネマズ スカラ座他全国ロードショー公開予定]   2016年6月28日 GAGA試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  新3部作の完結編だが,シリーズはまだまだ続く  
  CG/VFX大作が続く。人気シリーズ「X-MEN」の9作目だが,スピンオフものを除けば6作目となる。まず『X-メン』(00年10月号) に始まり,『X-MEN:ファイナル ディシジョン』(06年9月号) までの旧3部作が製作された。その1&2本目のメガホンをとったブライアン・シンガーが,新3部作の製作・企画を担当し,自らその2&3本目の監督も務めている。本作は,その新3部作の完結編である。
 新3部作の核は,まだX-MEN集団が確立する前の若き日のプロフェッサーX(ジェームズ・マカヴォイ)とマグニートー(マイケル・ファスベンダー)で,超能力をもつミュータントたちが,2人のいずれかに就く。1作目『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(11年7月号)は,2人の少年時代(1944年)を少し描いた後,大半は1960年代の物語であった。2作目『X-MEN:フューチャー&パスト』(14)は1970年代が中心であったが,2023年から1973年にウルヴァリンがタイムスリップして来るというサプライズがあった。そして,いよいよ本作は,BC3600年に眠りについたミュータントの始祖アポカリプス(オスカー・アイザック)が,1983年に蘇り,堕落した世界に失望して,大騒動を引き起こすという物語である。
 以下,当欄の視点からの要約である。
 ■ 映画は古代エジプトから始まる。冒頭からCG/VFXをふんだんに使った魅力あるシーンの連続だ。ピラミッドのあるエジプトの町,大群衆,カメラがピラミッドの中に移っても素晴らしい映像が続く。液状化した金の描写などは絶品だ。最近の大作はいずれもオープニング・シーケンスに力を入れているが,シリーズ中屈指の出来映えだと思う。反乱が起き,ピラミッドは崩壊し,アポカリプスは永い眠りにつく。この間約10分で,そこからタイトル映像に入るが,人類の歴史を辿るタイムトンネル風のビジュアルが好い出来だ。
 ■ 1983年に蘇ったアポカリプスは,文明を堕落させ,核兵器までもつに至った人類に失望し,世界を一旦破壊し,再構築しようと考える(写真1)。彼は,マグニートー,サイロック,ストーム,エンジェルの4人のミュータントを「黙示録の四騎士」として支配し(写真2),世界滅亡に着手する。磁場の影響で,金属が吸い上げられ,橋や建物は崩れる(写真3)。地震や津波の崩壊と違う。なかなかの見ものだ。とりわけ,粉々になって砂のように空に舞い上がる様子(写真4),人が壁に塗りこめられてしまう描写が秀逸だ。彼らの動きを阻止しようとするミュータント達との攻防が,前半から中盤で約1時間続く。
 
 
 
 
 
 
 
写真1 蘇ったアポカリプスの強大な破壊パワー
(上右半分:原画像,上左半分:VFX加工中,下:完成映像)
 
 
 
 
 
写真2 アポカリプスは四騎士を従えて,世界の破壊を宣言する
 
 
 
 
 
写真3 橋もビルも破壊され,空に舞い上がる
 
 
 
 
 
写真4 砂状になって,空に舞い上がる描写が見事
 
 
  ■ 彼の存在と意図を知ったプロフェッサーXことチャールズ・エグゼビアは,ミスティーク(ジェニファー・ローレンス)の助けを得て,ビースト,クイックシルバー,ナイトクローラー,ハボックらの若きミュータントらを組織する。中盤は,彼らの個々の能力をアピールする場面,終盤はアポカリプスを葬り去る大きな闘いが待っていることは言うまでもない。そう考えると物語の構造は簡単で,CG/VFXもたっぷりと登場するのだが,物語の面白みに欠けていた。ここぞとばかりに,コミックでお馴染みのミュータントを登場させているので,流れが悪い。前2作が素晴らしい出来映えだっただけに,この完結編の評点は辛めにした。
 ■ 個別に観れば,エンジェルの白い翼の描写が素晴らしかった(写真5)。金属製の身体に変化した後の翼もまた味のある表現だ(写真6)。本作のCG/VFXの主担当はMPC,副担当はDigital Domainで,前述の『ジャングル・ブック』と同じだ。両社だけで数百人の陣容で,ほぼ同じ時期に(日本では同日公開),同時並行で力作2作品を完成させたのに感心する。本作では,他にRising Sun Pictures, Cinesite, Hydraulx, Legacy Effects等も参加している。
 
 
 
 
 
写真5 エンジェルの白い翼のCG描写が素晴らしい
 
 
 
 
 
写真6 金属になってからのデザインも秀逸
(C) 2016 MARVEL & Subs. (C) 2016 Twentieth Century Fox
 
 
  ■ 物語に締まりがないのは,シリーズの顔,ウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)がいないためだろうか。本作ではクレジットすらされていない。そう思っていたら,ほんの少しだけ,カメオ出演のように彼が登場した。そして,エンドロールの後には,来年公開のスピンオフ作品『ウルヴァリン3(仮題)』の予告と思しき映像が付されていた。シリーズは,まだまだ続く。
 
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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