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O plus E誌 2008年8月号掲載
 
 
purasu
ダークナイト
(ワーナー・ブラザース映画)
 
      TM&(C) DC Comics (C) 2008 Warner Bros. Ent.  
  オフィシャルサイト[日本語][英語]  
 
  [8月9日より丸の内プラゼールほか全国松竹・東急系にて公開予定]   2008年7月14日 ワーナー試写室(東京)  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  新シリーズの2作目は,一段とシリアスで刺激的  
 

 随分ネクラな題である。てっきり夜の闇に魔物が徘徊するホラーかと思ったら,原題は『The Dark Knight』だった。おっと,そーか。闇夜じゃなくって,「暗黒の騎士」さんだったのか。黒いマスク,黒マント姿の主人公をポスターで見て,ようやく正体が分かった。クリストファー・ノーラン監督,クリスチャン・ベール主演というから,なんだ,これは『バットマン ビギンズ2』じゃないか。バットマンの名前を表に出さないのには,それなりの理由があってのことだろう。
 題名は,DCコミックスのミニシリーズ『Batman: The Dark Knight Returns』から来ているようだ。それまでの勧善懲悪の典型パターンから,大人の観賞に堪えるハードボイルド調に転じた典型的作品と言われているから,鬼才C・ノーランが担当する新シリーズのタッチにぴったりした設定である。前作同様,バットマンことブルース・ウェイン(C・ベール)がマイケル・ケイン,モーガン・フリーマン,ゲイリー・オールドマンという超豪華な助演陣を引き連れての再登場だ。
 3人の中では,G・オールドマン演じるゴードン警部補の活躍が目立つ。他には,「光の騎士」たる地方検事ハーヴェイ・デントを『ザ・コア』(03年6月号)のアーロン・エッカート,ブルースと彼の両方に愛されるヒロイン,レイチェルを『主人公は僕だった』(07年5月号)のマギー・ギレンホールが演じている。そして何といっても驚きは,先頃急逝したヒース・レジャーが熱演する宿敵ジョーカーだ(写真1)。ティム・バートン版第1作の『バットマン』(89)でジャック・ニコルソンが演じた,あのピエロ風貌の最強最悪犯罪者である。その超人ぶり,極悪ぶりは圧倒的だ。悪役が個性的で凄いほどヒーローものは面白いというが,その点では満点に近い出来映えと言っても良い。物語は,ジョーカーにゴッサム・シティー全体を人質に取られたバットマンは,その仮面を取ることを要求され,窮地に陥る……。

 
     
 
写真1 ヒース・レジャー演じるジョーカーは鬼気迫る
 
     
   CG/VFXの主担当は,押しも押されぬメジャー・スタジオとなったDouble Negativeで,Framestoreが副担当,BUF Campaign,Cinesite Europeなども参加している。目立ってユニークなシーンではないが,バットマンの飛翔や高層ビルからの落下は言うまでもなく,数多くの爆発やカー・アクションのシーンにもVFXが多用されている(写真2)。バイクでの疾走シーン(写真3)や緊急避難時に路上を埋め尽くす車両などもデジタル処理の産物だろう。間違いなく印象に残るのは,大爆発で顔半分が焼け爛れたデント検事の顔面だ。一瞬,精巧な特殊メイクように見えるが,おそらく顔半分をグリーンで覆い,そこにCG合成して描いたものだろう。それにしても大迫力だ。子供や女性には,ちと刺激的過ぎる。  
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写真2 この程度のカー・アクションはまだまだ序章

 
 
 
 
 
 

写真3 壊れたバット・モービルの残骸パーツから生まれたバイクでゴッサム・シティー内を縦横無尽に疾走する
TM&(C) DC Comics (C) 2008 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

 
 
 
   
 熱演のヒース・レジャーに捧げる映画 
 
久々の役は,初登場の編集部のN嬢です。まず,この映画の第1印象はどうでしたか?
長かったですねぇ。ゴードン警部補が再登場してもう終わりかと思ってから,まだ延々と先がありました。
物語が動き出すまでの1時間が長過ぎますね。ここを半分にして,全体で2時間余がベストでしょう。
ヒース・レジャーのジョーカー役が衝撃でした。亡くなったと聞きましたが,これが遺作ですか?
いや,テリー・ギリアム監督の『パルナッサス博士の想像力』の撮影途中に薬物中毒で事故死したとのことで,そちらが遺作になりました。エンドクレジットには,彼にこの映画を捧げるとありましたが,生きていたら本作で助演男優賞をいくつも獲ったことでしょう。
『ブロークバック・マウンテン』(05)には涙しましたが,それとはまるで違った凄い演技でしたね。
あの映画でホモの相手だったジェイク・ギレンホールの姉のマギーが,この映画のヒロインですね。
えーっ,そうだったのですか。不思議な縁ですね。
主演の2人に愛されるヒロインにしては,あまり美人じゃないし,大して魅力的でもないですね(笑)。全体は俳優の個性を生かした,結構シリアスなドラマ仕立てですが,印象に残ったのは誰でしょう?
まず,ヒース・レジャーのジョーカー。次いで,誠実な警察官のゲイリー・オールドマン,そして顔を火傷した後の地方検事です。バットマンの存在感がまるでなかったのが気になりました。これでいいのかと……。
シリーズ中で,そういう位置づけの映画なのですよ。あえてヒーロー不在にしたというか,多数の主役級が織りなすドラマにしたというか……。だから題名にも入っていないのだろうし,こうした試練をくぐり抜けてバットマンが再び飛翔するのです。
シリアスなのが流行とのことですが,私はスカッと悪人を倒す,楽しいスーパーヒーローが好きですね(笑)。エンターテインメントなんですから。
ま,そういう人は『アイアンマン』まで待って下さい(笑)。
で,本作の評点は☆いくつになるんでしょう?
徹底した本物志向で,絵作りはうまいし,終盤の演出は見事だし,さすがC・ノーランだと感じさせてくれます。でも,長過ぎる分,☆半分の減点ですね。
 
   
   
  (画像は,O plus E誌掲載分から削除・追加しています)  
   
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