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O plus E誌 2000年10月号掲載
 
 
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『X-メン』
(20世紀フォックス映画)
 
(c)2000 TWENTIETH CENTURY FOX
       
      (20世紀FOX試写室00/8/10)  
         
     
  いかにもそれと分かるCG,SFXが満載  
   いわゆるアメコミ(アメリカのコミック本)の映画化だが,『スーパーマン』『バットマン』に負けず劣らず人気シリーズになりそうな映画が登場した。『X-メン』は,1963年9月スタンリー・リー(作)とジャック・カービー(画)によって生み出され,創刊以来4億冊以上を売り上げてマーヴェル・コミックス史上最大のヒット作品となり,25カ国語に翻訳され,世界の75カ国で販売されているという。日本の劇画世代を自認する筆者もアメコミ事情には疎く,実物を読んだことはない。
 アニメやゲームにもなっているらしい。アメリカ文化の一部といわれるだけあって潜在ファンも多く,北米で7月14日に公開されるや否や週末だけで54億ドルを稼ぎ出し,7月公開作品のオープニング歴代1位のメガヒットとなった。
 監督は『ユージュアル・サスペクツ』(95)のブライアン・シンガー。まだ32歳で,玄人好みの成長株だ。製作・製作総指揮には,原作者のスタン・リー,マーヴェル・スタジオ社長でTVシリーズの製作責任者アヴィ・アラド等,何人もの名が並んでいる。『スーパーマン』『リーサル・ウェポン』シリーズの監督,リチャード・ドナーもここに名を連ねているのが興味深い。大物と大資本が参加して臨んだ関係者多数の話題作で,興行的成功が当然とされていたようだ。
 突然変異で超能力を持った奇形種,ミュータントたちの物語である。人間社会で迫害されるミュータントの繁栄は人類の打倒の上にしかないと考えるマグニートー(イアン・マッケラン)は,テロ組織「ブラザーフッド」を率いる。一方,プロフェッサーXことチャールズ・エグゼビア教授(パトリック・スチュアート)は,人類との平和的共存を図り,若いミュータントの超能力を引き出す育成機関を設ける。この集団が「X-メン」である。絵に描いたような悪と善の対決図式で,誰が見ても分かりやすい。
 この第1回映画化作品では,危機に遭うと超合金のの巨大な鉤爪が発生するウルヴァリンと,接触した相手の記憶や能力をコピーできる少女ローグが,ミュータントとしてのパワーに目覚め,X-メンに仲間入りするエピソードを中心に展開する.
 ローグ役は,11歳でアカデミー助演女優賞を受賞したアンナ・パキン。一方,狼男ウルヴァリン役は,『M:I-2』が遅れて出演できなくなったダグレイ・スコットに変わり,急遽オーストラリアのヒュー・ジャックマンのハリウッド・デビューとなった。彼は,若い頃のクリント・イーストウッドに似た風貌で,精悍な狼男役がよく似合っている。
 他のミュータントたちは,X-メン側では,物体移動のテレコキネス・パワーをもつ美女ジーン・グレイ,目から破壊光線を発射するサイクロップス,嵐や雷を起こす白髪の美少女ストームらが登場する。一方のブラザーフッド側から,2mを超す巨漢豹男のサイバートウース,舌が3mに伸びるヒキガエルのトード,何にでも変身できるミスティークが対抗する。余程のマニアでないと,名前と顔と得意技をすぐには覚えられない。40年近く続いている原作に登場した多数のミュータントから,この映画向きに適宜選んだようだ。
 これだけが活躍するだけでも大変だ。壁を通り抜けたり,鉄格子を曲げたり,人やクルマや銃が宙に浮くのは序の口で,白い嵐や稲妻,レーザ光や炎が絶え間なく画面内を走る。誰でもCG,SFXと分かるカットのオンパレードだ(写真)。舌がべろ〜んと伸びたり,身体が膨らんだ上に,水のように溶けてしまうのも,もちろんディジタル技術のなせる業だ。『マトリックス』の数倍はあろうかという分量である。この映画では,SFXに負け劣らず,メイクアップも大きな役割を占めている。
 特殊効果担当は,デジタル・ドメインを中心に,シネサイト,マット・ワールド・デジタル等計7社。個人名の出ない追加作業もリズム&ヒューズなど4社が受けていたから,種類と分量の多さは推して知るべしである。少し代表的カットを紹介しようかと思ったが,絞りきれずに断念した。SFX映画時評担当者としては,上映中メモを取るのに疲れた作品である。
 
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写真 CGならではの超能力シーン
(c)2000 TWENTIETH CENTURY FOX
  スター・ウォーズの座を奪うか?  
 
跳んだり撥ねたり変身したり,いかにもマンガ的だけど,この映画はそれでいいのか(笑)。
でも,思ったよりもバカバカしくなく,好感が持てました。テンポがいいですね。
そうかなぁ? 駆け足過ぎて,考えて感情移入している暇はありませんでした。もう少し超能力や各ミュータントの役割の説明があった方が,盛り上がったと思います。
確かに,サスペンス感覚は薄かったですね。第1作なので,色々詰め込もうとしたんでしょう。続編のための伏線と思しきところも,多々ありました。
1時間44分という上映時間は,こんなものでいいんです。ただ,編集段階で30分縮めたというから,そこで無理が生じて説明不足になったんでしょうね。
これは,固定ファン,マニアのための映画だという気がしました。
1963年からというから,アメリカのベビーブーマーたちはこのコミックを見て育ったんだから,彼らにも懐かしいでしょう。今年のSIGGRAPHでは,大きなXの字が入ったTシャツを来ている人をよく見かけました。でも,日本の団塊の世代には馴染みがなく,映画館に足は運ばないでしょうね。
もともと中年・初老のオジサンは,観客対象に数えていないと思います(笑)。
ヒーローが1人でなく複数人の集団という点は,むしろ日本人には受け容れられやすいんじゃないかな。赤穂浪士や真田十勇士や新撰組など,こういう役割分担は結構好まれるんですよ。
例が古すぎますよ(笑)。『バットマン』よりは親しみやすいでしょうね。
カードやキャラクター・グッズを集めるのにも向いてるしね。今後,色々な超能力のミュータントが登場して来るでしょう。その度に,最新のCG技術を競う場になるんじゃないかな。
今回もSFX満載でしたが,多数参加しているためか,かなり出来不出来の差がありました。飛行機の墜落シーンはチャチだったし,傷口がふさがる描写は『T2』から余り進歩してないように感じました。
あれは,パロディのつもりじゃないかな? でも,アチコチに分散発注できるようになったこと自体が業界の進歩なんですよ。3年前じゃ,ILM抜きでこれだけ質・量の揃った視覚効果は実現できなかったでしょう。その意味では,ようやく『X-メン』を描ける時代になったということです。
大道具・小道具・衣装のデザインは良かったですね。センスの良さをあちこちで感じました。
X-メンたちのユニフォームもプラスチックの監獄もカッコよかったねぇ。特筆すべきは,丸テーブルに針状の立体マップを描いて,ハドソン河からマンハッタンを襲うシミューレーション。あれは凄かった!
この写真がないのが残念です。もちろんCGなんでしょうが,質感が素晴らしかったし,動きもデザインも言葉に表せないくらいゾクゾクしました。
『スター・ウォーズ エピソード1』が味噌をつけたので,『X-メン』がSFXのお手本の役割もファッション・リーダーの座も奪ってしまう可能性大ですね。とはいえ,始めて『スター・ウォーズ』を見たときほどの衝撃はないから,マニア以外にどれだけのファンを集められるのか,2作目以降を注目して行きたいと思います。
 
   
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