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O plus E誌 2003年6月号掲載
 
 
『X-MEN2』
(20世紀フォックス映画)
 
       
  オフィシャルサイト[英語]    2003年4月21日 ナビオTOHOプレックス(完成披露試写会)  
  [5月3日より全国東宝洋画系にて公開中]      
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  これぞVFXの正しい使い方。個人技が冴える!  
   今年のアメリカ夏映画のトップバッターは,またまたアメコミ作品の映画化,人気作の2作目という興行的に安定収入を見込める企画だ。後に控えている『マトリックス・リローデッド』『チャーリーズ・エンジェル/フルスロットル』『ターミネーター3』が世界(ほぼ)同時公開となると,この映画も後にずらすわけに行かず,すでにGW後半から公開されている。VFX利用の変化・進化を見届けたい本時評としてはどれも見逃せない。
 同じ20世紀フォックスのアメコミもの『デアデビル』(2003年4月号)には失望したが,この映画はいい方に期待を裏切られた。面白い。躍動感がある。VFXの使い方も生きている。似たような企画で,ほとんど同じVFXスタジオやスタント・チームが参加しながら,監督・脚本が違うと,かくも映画の面白さ,しまり具合が変わるのかと感じた一作だ。
 突然変異種族で超能力をもつミュータントたちの活躍譚だが,前作で主要キャラの紹介は終わっているので,2作目はストーリー展開にも力を入れやすい。この映画では,原作のミュータント3世代分を適宜ピックアップし,自在に再構成している。いきなり見ても楽しめるが,1作目の予備知識があるとなお楽しいし,この映画の後に前作をじっくり見直してもいい。この種の映画は,マニアが登場人物表で得意技を確認しながら,その個性と超能力を楽しむものだ。
 監督のブライアン・シンガー始め,撮影,衣装デザイン,特殊効果担当や出演俳優たちもほぼ前作と同じだ。改めて豪華キャストだなと感じたが,それはこの3年の間に皆活躍し,出世したからだろう。前作で抜擢されハリウッド・デビューを果たしたウルヴァリン役のヒュー・ジャックマンは『ソードフィッシュ』(01)『ニューヨークの恋人』(02)でトップ・スターの仲間入り,ストーム役のハル・ベリーは『チョコレート』(02)で黒人初のアカデミー賞主演女優賞獲得のあと,『007/ダイ・アナザー・デイ』(02)でボンド・ガールに,マグニートー役のイアン・マッケランは『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズでの灰色のガンダルフでブレークしたかと思えば,プロフェッサーXのパトリック・スチュアートも『ネメシス/S.T.X』(02)で当たり役のピカード艦長でチーム・リーダーぶりを示してくれた……,という訳だ。ローグ役のアンナ・パキンは随分大人になったし,アイスマン(ボビー・ドレイク)やパイロ(ジョン・アラダイス)といった若い世代は今後の活躍が期待される。
 脂の乗りきった俳優陣の再結集だけにX-MENたちの存在感も増し,個人技がパワーアップした感じも良く出ていた。中でも,ボンド・ガール2人が活き活きしていて素晴らしい。白髪の髪形を変えたストームのハル・ベリーは一段と可愛くなり,ジーン・グレイ役のファムケ・ヤンセンのクールな魅力も最大限に引き出されている。先月紹介した『アイ・スパイ』とは大違いだ。
 人間とミュータントの平和的共存を願うプロフェッサーXとX-MENたちが,それに敵対するマグニートー率いるテロ組織「ブラザーフッド」と戦う単純な対立構図かと思いきや,今回は反ミュータント運動を展開する邪悪な人間のストライカーが登場し,ミュータントたちは団結して彼と戦う。原題の『X2: X-Men United』は,この団結と再結集を意味したものだろうが,何やらイラク攻撃を正当化するアメリカ社会の士気高揚をねらったプロパガンダのようにも思えてくる。
 といっても勧善懲悪型の単純明快なストーリーではなく,憎悪,友情,家族愛,三角関係なども微妙に絡ませている。少し深みのある描き方を狙ったため,この波乱含みの物語展開はあまり分かりやすくない。それでも,人物像はよく描けているし,クライマックスへのもって行き方はうまいものだ。少し予想外の結末は,ネタバレになるので書けないが,さすが『ユージュアル・サスペクツ』(95)の監督だけのことはある。
 VFXの担当には,前作主担当のデジタル・ドメイン社の名はなく,最近どこにでも顔を出すシネサイト,リズム&ヒューズの両社に加えて,伝統あるGrant McCune Design,新興のFrantic Films,特殊メイク専門のFX Smith社などが参加している。オープニングタイトルはAsylum Effects社が製作したようだ。
 まず,新登場ミュータントのナイトクローラーが登場する冒頭の大統領襲撃シーンが小気味いい(写真左)。ワイヤーアクションと粉末状になって消えるVFXのコンビネーションが見事だ。サイクロップスの破壊光線(写真右),ストームが引き起こす静電気や異常気象,ミスティークの変身,パイロが操る火炎の威力などもCGならではの表現で,一段と磨きがかかってきた。超能力個人技を楽しくメリハリをつけて描くのは,VFXの正しい使い方だ。強いて言えば,ヘリは少しチャチに感じたが,後半のダムの決壊シーンはいい出来だった。今や視覚効果の実力は,こともなげにこの種のシーンを臨場感高く描き上げる。
 この映画は,関西地区の完成披露試写会,大阪・梅田のナビオTOHOプレックスなるシネコンの一番大きな画面で観た。テンポよく繰り広げられるアクションは,ホットドッグとコーラで楽しむ大きなスクリーンと立体音響に似合っていた。観て損はない。
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写真 続編はミュータントたちの個人技が冴える
TM &(C)2003marvel. (C)Fox
 
   
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