O plus E VFX映画時評 2023年12月号

『ハンガー・ゲーム0』

(ライオンズゲート/KADOKAWA配給 )




オフィシャルサイト[日本語][英語]
[12月22日よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー公開中]

(C)2023 Lions Gate Films Inc.


2023年11月30日 角川試写室(東京)

(注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています)


安全運転のフランチャイズ映画で,前日譚の新3部作の始まり

 ジェニファー・ローレンス主演でヒットした『ハンガー・ゲーム』シリーズの前日譚で,3部作の1作目とのことだ。前日譚もシリーズ化するという点では,『ロード・オブ・ザ・リング 3部作』 (01〜03)に対する『ホビット 3部作』(12〜14)や,SWシリーズの当初の3部作「EP4〜EP6」(77〜83)に対する『スター・ウォーズ EP1〜EP3』(99〜05)を思い出す。前シリーズでの出来事や主要登場人物は判明しているので,人気作ほど,そこにどう繋げるのかが興味の的である。原作はスーザン・コリンズ作のヤングアダルト小説で,彼女自身が前日譚も執筆し,従来通り映画の製作総指揮に名を連ねている。ただし,『ロード・オブ…』『ホビット』の原作の「指輪物語」「ホビットの冒険」ほど,文学性の高い,高尚な小説ではない。
 そもそもヤングアダルト小説がその程度のもので,若い 読者層を意識して,読みやすさ,廉価版の早期発売(あるいは最初からペーパーバック版)をセールスポイントとしている。その映画版も『トワイライト』『メイズランナー』両シリーズと同様,早撮りの粗製乱造で,当欄では美術,VFXはお粗末極まりないと苦言を呈していた。当初は原作通りの3部作の予定だったのが,第3巻を前後編に分け,『ハンガー・ゲーム FINAL:レジスタンス』(15)『同:レボリューション』(同)と題して,半年の時差をおいて2本を公開した。これは,先を走っていた『トワイライト』シリーズの手口とそっくりだった。ただし,悪いことばかりでなく,米国では小説も映画も爆発的にヒットしたため,続編は1作毎に製作費がアップし,新たな出演俳優やCG/VFXの質も向上した。この点でも『トワイライト』シリーズと同じ道を歩んだのである。
 ところが,類似の上記両シリーズから前日譚は生まれなかったのに,本シリーズだけがそれに踏み切った。S・コリンズは元々テレビ脚本家であるから,比較的フットワークが軽く,映画化を前提とした前日譚をすぐに書いたようだ。最近,安全運転すぎて冒険心がないと言われる「フランチャイズ映画」の典型例だが,安定した製作費を当てにしていいなら,当欄としては,3部作の1作目からVFX的にも充実していることを期待してしまう。
 題名にも触れておこう。邦題の『ハンガー・ゲーム0』は,短く,分かりやすい。一方,原題は長く,『The Hunger Games: The Ballad of Songbirds & Snakes』である。邦訳本は3年以上前に出版されていて,「ハンガー・ゲーム0 少女は鳥のように歌い,ヘビとともに戦う」の上下巻が,文庫本/電子書籍で入手できる。ブックカバーにも,鳥と蛇が対峙する構図の絵が入っている。文庫2冊分を映画で3部作にするのはいいとして,続編の映画の邦題はどうするつもりだろう? まさか『ハンガー・ゲーム0.2』にはしないだろうから,『ハンガー・ゲーム0:副題』の形にするかと思われる。
 なぜそこまで題名を気にするかと言えば,当欄としては,このシリーズでのSongbirdとSnakeの役割と,どんなCGで描かれるのかが気になるからである。題名からは,『グリーン・デスティニー』(00)の原題『臥虎蔵龍』, 英題『Crouching Tiger, Hidden Dragon』を思い出してしまうが,同作は象徴として「虎」と「竜」なる言葉を使っただけで,映画に「虎」や「竜」は登場しなかった。一方,本作では,予告編を観ただけで,大量のヘビ(恐らく,CG)が登場している。前シリーズでは,カケスの大群の襲撃を描いていたので,それと同一種なのか,別の鳥なのか,筆者にとって大いなる関心事なのである。


バトルは好きになれないが, 64年前の描写は秀逸

 比較的入り込みやすい前日譚を想像したのは,監督・製作が前シリーズ4本の内,2作目からの3本のメガホンをとったフランシス・ローレンスであるからだ。MTV畑の出身で,当欄で紹介した『コンスタンティン』(05年4月号) 『アイ・アム・レジェンド』(08年1月号)の監督も務めたので,比較的早い時期からVFXの威力を知り,かつ音楽の造詣も深い監督である。
 本作の前に前シリーズを観ておいた方がいいかと言えば,間違いなくその方がベターである。その時間がない場合は,下記をざっと見て,「ハンガー・ゲーム」とは何かと「12地区」の位置づけだけでも知っておくことが役立つ。時間があれば,当欄の過去の記事も読んで頂きたい。

【前シリーズとの関係,本作の概要】
 時代は文明が崩壊した後の近未来,舞台となるのは独裁国家パネムで,スノー大統領(ドナルド・サザーランド)なる最高権力者がすべてを支配していた。政治の中心地キャピトル以外は12の地区に分割されていて,各地区は農業・鉱業・工業・商業等の産業種別が限定されていた。各地区の反乱を防止する目的で,各地区から12〜18歳の男女各1名が生贄として選出され,計24人が殺し合う,殺人サバイバルの「ハンガー・ゲーム」が年1回キャピトルで開催され,TV中継されていた。言わば西洋版「バトル・ロワイアル」である。
 主人公は最も貧しい第12地区から,妹の身代わりとして志願した女性のカットニス(ジェニファー・ローレンス)で,第1作,第2作は,弓の名手の彼女がこのサバイバルゲームを勝ち抜く様を描き,残る最終編の前後編は,女性首相(ジュリアン・ムーア)を担ぎ上げた反乱軍がスノー大統領を倒して自由と平和を得るという物語である。
 パネム国の場所は特定されていないが,米国全体の未来像なのか,その一部が独立して首都と12州からなる地なのかと想像した。典型的なディストピア映画であり,その上,殺人サバイバルをエンタメ化して見せるというテーマを好きになれなかった。この種の小説や映画を若者たちが支持し,大ヒットするという世相も好ましく感じなかった。
 さて,本作である。時代設定は,前シリーズ1作目の64年前である。スノー大統領の青少年時代で,特権階級の子弟が通うアカデミーに在籍する18歳のコリオレーナス・スノーが登場する。先々が絶対権力の独裁者であることは分かっているから,彼は暗黒面に落ちてダース・ベイダーになるアナキン・スカイウォーカーのような人物だと分かる。映画は,「Part 1:教育係」「Part 2:賞金」「Part 3:治安維持部隊」に分れている。
 映画の冒頭は,それ以前の暗黒時代が少しだけ登場する。その3年後に「ハンガー・ゲーム」が始まり,第10回ゲームが始まる年へと移る。カットニスが最初にゲーム参加したのは第74回であったから,年数計算は合っている。過去9年間の反省から,第10回記念として,アカデミーの成績優秀者上位24人が,各地区からのゲームプレイヤー個々の教育係(メンター)として配されることになった。スノーに割り当てられたのは,最貧最弱でいわくつきの第12地区の少女ルーシー・グレイ・ベアードであった。全く戦闘能力のないひ弱な少女で,およそ勝ち目はないように思えた。ところが,彼女には音楽の才能があり,歌の力で人々を魅了したり,迫り来る毒ヘビを退散させることができた。
 教育係はゲームプレイヤーと一体となって優勝をめざすが,ゲームの途中でプレイヤーに支給品を届けることができる。マラソンの途中で特殊ドリンクを用意しておく程度ではなく,まるで自分のアバターにアイテムを与え,パワーアップさせるRPGのような感じである。コリオレーナスは策を弄してルーシー・グレイを優勝させるが,その不正がばれて,彼はアカデミーから追放され,罰として治安維持部隊の兵士にされてしまう。ルーシー・グレイを追って第12地区にやって来た彼は再会を果たし,2人は一時恋仲になるが,物語は思わず方向に進んでしまう……。詳しくは書けないが,最終編を待たずにコリオレーナスは早くも権力者への道を歩み始めるとだけ言っておこう。
 SWシリーズに似せたなら,アナキンとパドメの関係になるはずだが,第1作ではそうはならなかった。原作を読む余裕がなく未読だが,読了者からは,小説と映画はかなり違うという声が出ている。電子書籍の一部を試し読みしたところ,下巻は「第三部 治安維持部隊」から始まっていた。即ち,原作はバトル・ゲームに勝利するところで半分なのに,映画は第1作の中盤すぎでここまで達し,既に下巻まで突入している。ということは,続編は2本分あるので,原作小説を遥かに超える物語へと発展して行くようだ。

【主要登場人物とキャスティング】
 主人公のコリオレーナス・スノー役に抜擢されたのは,英国人男優のトム・ブライスだ。これまで聞いたこともない名前だが,なかなかのイケメンだ。特に,名家の出身で貴公子然とした前半が恰好いい(写真1)。後半の兵士で丸刈りとなってからは,やや精悍な顔つきになり,若い頃のクリント・イーストウッドに似た爽やかさと果敢さを感じさせる。現在28歳だが,スター性があるので,本作で一気にブレイクし,女性ファンを多数獲得することだろう。


写真1 主演の男女。トム・ブライス(左)は本作でブレイクしそう。

 相手役のルーシー・グレイには,『ウエスト・サイド・ストーリー』(22年1・2月号)のマリア役を演じたレイチェル・ゼグラーが配されている。本作は事実上W主演であるが,既にゴールデン・グローブ賞の主演女優賞を受賞しているので,彼女が格上で,最初にクレジットされている。歌姫役なので,彼女の歌唱シーンが数多くある(写真2)。かなりの歌唱力だ。それが彼女が最初にキャスティングされた理由だろう。ただし,全体としては,この役は彼女には相応しくないと感じた。激しい顔つきで,罵声を発する様はおよそ可愛くない。

 
写真2 実は, 旅回りの音楽バンドの歌手。この表情の時は愛らしいのだが。

 同じ『ウエスト…』で,少し悪役であったアニータを演じたアリアナ・デボーズはGG賞とアカデミー賞の助演女優賞を受賞し,『ウィッシュ』(別項)で素直な少女アーシャの声を演じている。『ウエスト…』で同じ部屋に住んでいた2人が,いずれも大きな賞を受賞し,次は全く対照的な役に配されているというのが面白い。俳優は様々な役をこなせることをアピールしたがるが,演技派に転じるのはもっと先で十分だ。特にレイチェル・ゼグラーの場合は,若い内は可憐な女性役のままの方が断然似合っている。次作はディズニーの実写版『白雪姫』なので,再度愛らしい姿を見せてくれることだろう。
 助演陣の筆頭はヴィオラ・デイヴィスで,第10回ゲームを支配するゴール博士役である。ゲームの考案者の1人であり,キャピトルの兵器開発部門の指揮者で,貫録十分の演技を見せる。『スーサイド・スクワッド』シリーズでも,手段を選ばない冷徹な政府高官を演じるなど,最近権力側の中心人物役が多いが,『ダウト~あるカトリック学校で~』(08)や『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』(12年4月号)の頃のような善人で微妙な演技を要求される役柄の方が似合っている。
 もう1人の悪役は,ゲーム考案者のもう1人で,アカデミーの学生部長のハイボトムで,ピーター・ディンクレイジが演じている。姿を見ただけで分かる,よく知られた小人俳優だが,彼の存在だけで一気に映画が引き締まる。一方,同じ祖母に育てられたコリオレーナスの3歳年上の従姉タイガレス役には,ハンター・シェイファーが配されている。この役は,第4作『ハンガー・ゲーム FINAL:レボリューション』では年配女優が演じていたが,さすがに64年前となると,現在24歳の彼女が起用された。ジャッションモデル兼LGBTQの社会運動家であり,トランスジェンダー女性である。自らこの道を選んだだけあって,さすがに美しい。続編では,もっと出番が増えることだろう。

【美術セットとCG/VFXの見どころ】
 本稿の前半で「安定した製作費を当てにしていいなら…」と書いてしまったが,この当ては外れた。本作の公表されている製作費は$100 millionで,前作(第4作)の$160 millionの60%程度しかない。もっとも,前シリーズの第1作目は$78 millionで1作毎に増えたのだから,やはり安全運転で走り始め,興行成績を見て徐々に増やすのだろう。『ザ・クリエイター/創造者』(23年10月号)の紹介記事中で大作の製作費の比較をしたが,『ジョン・ウィック』シリーズは4作目でやっと本作と同額の大台に達したのだから,悪くないと考えるべきかも知れない。本作は,人気俳優の高額ギャラなしの金額なのだから,VFXに使えるコストは見かけほど減っていないとも言える。実際,以下に述べるように,美術班はかなり健闘し,監督はVFXの使い方を心得ていると言える。
 ■ 新シリーズの都市景観の基調を,1950年代末から60年代初めのベルリンにしたという。本シリーズ全体は近未来のはずなのだが,第1作『ハンガー・ゲーム』(12年10月号)の実質的な撮影時期は2011年の夏で,そこで描いた景観から64年前を描くには,それだけ時間軸上を戻った1950年代末を考えるのが好都合だったようだ。また,本作冒頭の暗黒時代から第10回ゲーム開催までは13年で,第二次世界大戦での敗戦から10数年経ったベルリンもこれに符合する。写真3は現存する博物館を意図的にレトロな感じに加工しているが,壊滅的な戦争で残ったビルの復興期の姿に見える。現在のベルリンの景観にVFX加工したシーンが,キャピトル市中として随所に登場する(写真4)。いずれも好い出映えだ。


写真3 上:1830年に建設され, 1966年に修復されたベルリンのアルテス博物館(世界遺産)
下:2階部分を描き加え, 古めかしく加工。周りの木々はそのままで, ビルは追加している。

写真4 現在のベルリンの景観をVFX加工。いずれにもパネムの国章が多数描かれている。

 ■ 前シリーズでのバトルは,屋外でも展開し,第2作の後半は「生きて帰れぬ島」が舞台となっていたが,本作の第10回ゲームは,まだすべて闘技場内で行われている。その正面玄関(写真5)と内部(写真6)は予告編の冒頭から登場するので,本作を象徴する建物であり,バトルの会場なのである。前者の2本の柱はどこかで観たことがあると思ったら,1936年のベルリン五輪のメイン競技場(オリンピアシュタディオン)の正面玄関にあるシンボルであった(写真7)。その後もこの大きな競技場は改修して維持され,2006年のサッカーW杯等に利用されている。一方,後者の建物内部の闘技場には,ポーランドのヴロツワフ市にある百周年記念ホール(写真8)を撮影に使用している。1813年の「ライプツィヒの戦い」(ナポレオン軍とプロイセン&ロシアの連合軍の激闘)を記念して1913年に建てられたホールで,ユネスコ世界遺産に指定されている。こうした由緒正しき歴史的建造物の上下を繋ぎ合わせ,VFX加工して写真5を描いているのだから,心憎い演出である。


写真5 闘技場の外観は, 2つの歴史的建造物を合成してVFX加工

写真6 闘技場の内部は, ポーランドの百周年記念ホールを借用

写真7 ベルリン五輪の競技場。(上)右の柱にナチスの鉤十字が丸形で描かれている。
(下)1936年当時のスタジアムの全景。左上に正面玄関の2本柱がある。

写真8 1913年に建てられた世界遺産の百周年記念ホール(2001年に撮影)

 ■ 上記の闘技場は,劇中で反逆者による爆薬攻撃があり,天井が破壊される。勿論,借用して撮影している世界遺産を破壊する訳にはいかないから,破壊後の闘技場の姿はCG/VFXの産物である(写真9)。爆発による落下物や大きく壊れたホールの上部はCGによる描写である。残った瓦礫は実物を持ち込み,床の穴はCGで描き加えて撮影したという(写真10)。これも好い出来だ。


写真9 破壊攻撃後の闘技場内部。爆発で天井が壊れ,残骸が床に残る。

写真10 撮影風景。瓦礫は持ち込んで配置した。

 ■ 「ハンガー・ゲーム」の実況中継シーンも見ものだった。司会者や教育係は競技中に闘技場には入れないので,別の小ホールで観衆と一緒に映像モニターでバトルの様子を眺めている(写真11)。これにはベルリン五輪のフェンシング会場を利用したそうだ。中央の大型モニター,24人のプレイヤー個々の状態を表示する小モニターは,いかにもレトロな感じの表示機器である(写真12)。ただし,多人数が同会場で一緒に観戦するのはバブリックビューイング風であり,各プレイヤーの24画面はZoomのUIにも似ている。このモニター群全体がCGかと思ったが,全て実物だそうだ。映像は嵌め込み合成ではなく,すべてリアルタイムに表示し,このシーン自体がライブ撮影とのことである。


写真11 ゲームの模様は,ライブ中継された映像で観戦する

写真12 昔のTV受像機をイメージした樽型画面とアスペクト比

 ■ 各教育係には,担当するプレイヤーを眺める映像端末が用意されている(写真13)。観衆用の大小モニターもこの個人用モニターも,撮影現場でタブレット端末を操作して映像を入れ替えたという。映像はクラウド内に蓄えられ,教育係や全国には同時配信されるというハイテク前提の描写だが,映像モニターは1950年代のTV受像機を思い出させる形状と画面アスペクト比である。もはやCRTモニターではないので薄型だが,おそらく表示は液晶パネルで,外側だけレトロな形状の筐体を作ったと思われる。


写真13 各教育係に配られた映像端末。1950年末にはこんな薄型にはできなかった。

 ■ 他にレトロな印象を与えるのは列車の到着シーンだ。各地区から貨車でやって来たプレイヤーを教育係が出迎えるシーン(写真14)と,治安維持部隊の兵士となったコリオレーナスが第12地区に到着するシーン(写真15)で使われている。鉄道博物館にある古い貨車や客車を利用して現地で撮影するのに,列車を停車させる鉄道小屋も用意したそうだ。よって,走行する列車は本物だろうが,駅の内部や周りの建物はCG製だろう。その他では,コリオレーナスがこっそり使う小型録音器はいかにも古くさいデザインだが,こんな携帯型録音器は1960年代初めには技術的に実現していない(写真16)。ゴール博士のラボはかなりモダンだが,中でも博物館の展示室を彷彿とさせる実験資料室はなかなかの見ものだった(写真17)

   
写真14 各地区からの男女各1名が貨車で到着。列車は本物だが, 駅舎はCG描写。

写真15 コリオレーナスの列車が第12地区に到着。製鉄所は合成だが, 列車の前部もCGっぽい。

写真16 小型携帯録音器。デザインはレトロだが, 1960年前後にこの小型のレコーダーは作れなかった。

写真17 博物館の展示室風のゴール博士のラボ。手前の左右一対か二対だけが本物で他はCGだろう。

 ■ 映画の原題や原作の表題にある「ヘビ」は,しっかり劇中に登場した。多数のヘビが蠢く様子(写真18)は一目見ただけでおぞましいし,猛毒のヘビがプレイヤーに迫るシーンは観ている側も身をよじりたくなる。ところが,ルーシー・グレイやゴール博士はヘビを愛玩動物のように扱っている(写真19)。一方,Songbirdが何なのかは,よく分からなかった。歌姫であるルーシー・グレイのことを指しているのか,本当に人間のように歌う鳥がまだこれから登場するのか,謎である。後半,マネシカケスと思しき嘴の長い黒い鳥が短時間登場したが,この鳥がどう物語に繋がるのかも不明だ。本作のVFXの主担当はGhost VFXで, 他にImportant Looking Pirates, Outpost VFX, RISE VFX, Crafty Apes, Clear Angle Studios, Incessant Rain Studios等が参加している。PreVisとMoCapはHalon Entertainmentの担当で,いずれも一流と言えるスタジオではなく,コストを抑えつつ多数のシーンを処理した苦労が伺えた。


写真18 (上)ゴール博士が飼育している大量の毒ヘビ
(下)コリオレーナスの策略で, 無数のヘビが闘技場にばら撒かれる

写真19 ルーシー・グレイは, 平気でヘビと戯れることができる
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