この映画の表題は,主人公ジョン・コンスタンティンから取ったもので,まぁこれは他につけようがないから許そう(笑)。主演のキアヌ・リーブスは,『マトリックス』シリーズ以来ネオのイメージが強過ぎて,なかなか他の役柄で登場できない。それにしては,『恋愛適齢期』 (03)で年上のダイアン・キートンに恋する青年医師役は好演だったが,やっぱりネオの方がよく似合う。
この映画は,そう考えたワーナーの製作陣が,ネオのイメージそのままでもう 1本撮ってみようと企画した作品だ。普通の人間には見えない,この世に属さない天使や悪魔の姿が見えてしまう超能力者のジョン・コンスタンティンは,かつて自殺を試みて地獄を垣間見た経験から,悪魔祓い師となり,悪魔と人間の「ハーフ・ブリード」を見つけては次々と地獄へ送り返すヒーローだ。これは,グラフィック・ノベルの『ヘルブレイザー』のキャラクタだというが,なに原作はどうでもよくて,キアヌ・リーブスがネオ流のスーパー・ヒーローとして暴れまくれるキャラを探して来たに過ぎない。
監督は,これが映画デビュー作となる弱冠 34歳のフランシス・ローレンス。製作総指揮に2人,製作に6人も名前があって,回りをベテランでガチガチに固められた中での監督稼業だが,ミュージック・ビデオ出身だけにテンポの良い映像作りで,将来が期待される。ヒロインのタフでクールな女刑事アンジェラ役は,『ハムナプトラ』(99)『スターリングラード』(01)のレイチェル・ワイズで,双子の姉妹イザベル役も演じる。彼女らしい持ち味が出たいい演技だ。
導入部でいきなりキリスト教の悪魔祓いが登場する。『エクソシスト』 (73)以来,映画ファンは何度か目にする光景とはいえ,どうも日本人にはピンと来ない。むしろ,何でこんな気味悪い世界を描くのかと不愉快になって来る。これは観終った後にも残る印象だ。そう言えば,シュワ主演の『エンド・オブ・デイズ』(00年1月号)も似たテーマだったが,本作品の方がテンポは良く,ストーリー展開には思わず身を乗り出して手に汗してしまう。脚本が徹底的に練られていて一部のスキもないからだろう。この映画作りのプロフェッショナルの腕を,もう少し良いテーマの映画に発揮して欲しいものだ。
厭世的,自己中心的な主人公は,ヘビースモーカーで進行性末期肺ガンに冒され,余命 1年足らずを宣告される。映画中にCM風の禁煙メッセージが挿入されているのはお笑いだが,コンスタンティンが悪魔やハーフ・ブリードと対峙する戦いは実に小気味いい。これを『マトリックス』流のCG/VFXが徹底的に支える。
主担当はテペット・スタジオだが,『マトリックス』シリーズの ESC EntertainmentやCIS Hollywoodもかなりの人数を導入して,ガラス窓が飛び散るシーン等手慣れたVFXを披露する。多数のVFXシーンがあって多彩だが,逆に本欄としては特筆すべき点もない。『ロード…』シリーズ等を見慣れた目には,地獄絵図(写真1)など目新しくもないだろうが,じっくり観ればハーフ・ブリードや下級悪魔の造形は,さすがスタン・ウィンストン・スタジオだと感心する場面も少なくない。
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