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O plus E誌 非掲載
 
 
ハンガー・ゲーム FINAL:レジスタンス』
(ライオンズゲート/ KADOKAWA配給 )
      TM & (C) 2015 LIONS GATE FILMS INC.
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [6月5日よりTOHOシネマズみゆき座他全国ロードショー公開中]   2015年5月15日 GAGA試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  最終章の前編は,予想通り,後編を待ち遠しく感じさせる営業方針  
  米国の青少年層に圧倒的人気を誇るヤングアダルト小説の映画化シリーズも既に3作目だ。原作は3部作だが,2010年発行の最終巻「Mockingjay」は,映画ではPart 1, Part 2の2部構成に分けて製作されることになった。即ち,本作はシリーズ4作中の3作目であり,最終章前後編の前編にあたる。この前後編は,それぞれ『ハンガー・ゲーム FINAL:レジスタンス』『…FINAL:レボリューション』なる邦題が付けられている。
 この分割公開のパターンは,『ハリー・ポッター』シリーズの原作の最終巻(第7巻)に対して実行され,興行的には大成功を収めた。続いて,本シリーズの先輩格の『トワイライト』シリーズも原作全4巻の最終巻の映画化で同じ手口を用いていたので,こちらもそうなるだろうと想像していたが,予想通りだった。邦画では,人気コミックを原作にもつ『るろうに剣心』『寄生獣』『進撃の巨人』等が,原作の最終巻ではないのに,続々とこの路線を真似ている。ライトノベルであれコミックであれ,原作が長寿化している場合は,確実に固定ファンの集客が期待できるので,前後編まとめて撮影し,短期間に連続公開するのは,興行政策上,確実な収益が見込める極めて安全な方法だと言える。
 既に『メイズ・ランナー』(15年6月号)の項で述べたが,本作は今後シリーズ化されることが確実な同作と比較して語るつもりが,本作の公開が遅くなって断念した。単に比較できなかっただけでなく,O plus E誌にも掲載できなかったため,公開日前後にWebページでのみ紹介するつもりが,次号以降に掲載予定の作品に追われ,ついつい執筆の機会を逃してしまった。
 CG/VFXの歴史を同時代進行で記録に残すという当欄の使命からして,シリーズ中の本作(前編)だけを飛ばして,11月公開の後編(完結編)を語る訳には行かない。既にネット上では,後編の予告編も流れている。記録に残すという意味で,急ぎで本作の要点を述べておく。
 前作『ハンガー・ゲーム2』(14年1月号)に引き続き,本作も北米Box Office成績はメガヒットとなった。いくら人気シリーズとはいえ,ここまで高水準の興行成績を保つのは大したものである。批評家筋の評価は前2作より落ちているが,2部作の前編で,話が尻切れであるから,これは止むを得ないところだ。
 監督は前作に引き続きフランシス・ローレンスで,主要スタッフもほぼ同じである。主演のカットニスを演じるジェニファー・ローレンス以下,ピータ役のジョシュ・ハッチャーソン,ゲイル役のリアム・ヘムズワース,敵役スノー大統領のドナルド・サザーランドら,主要登場人物もそのまま続投している。新たな大物俳優として,独裁国家パネムへの抵抗勢力を率いるコイン首相役でジュリアン・ムーアが加わっている。彼女の参加で,物語の厚みがさらに増している。
 予告編を観ず,上記キャストを確認せずに試写を観て,少し驚いた。反乱軍の幹部として,フィリップ・シーモア・ホフマン(写真1)が出演しているではないか! 前作でクーデターを企て,カットニスを救い出したことは覚えていたが,昨年2月に急逝したというので,この最終編2作に登場しないのだと思い込んでいた。彼の出演場面をそれまでに撮り終えていたとは,嬉しい誤算であった。
 
 
 
 
 
写真1 2014年2月に急逝したP・S・ホフマン(左)の登場場面は既に撮影済みだった
 
 
  前作でスノー大統領の仕掛けた罠から脱出したカットニスが,地中深くの反乱軍の秘密基地に向かうところから物語は始まる。本シリーズでパネムの管理下にあるのは第12地区までだと思っていたが,何とパネ厶のキャピタルを倒そうとする第13地区が存在し,コイン首相率いる反乱軍が地下都市に集結していた。
 反乱軍への参加を要請されるカットニスは,役柄上の存在感も,演じるJ・ローレンスの女優としての成長度も1作毎に増している。敵対するスノー大統領の存在感もまた,これまで以上だ。当然,後編ではパネム独裁政府とこの反乱軍の大激突が描かれることは明らかで,この前編はその助走段階である。それを考慮しても尚,本作の冒頭から中盤過ぎまでは,いささか退屈だった。人質として政府に捕らわれているピータがカットニスにメッセージを送って来る辺りから物語が俄然面白くなり,残り40分の展開には固唾を呑む。さあ,ここからどうなる,と思ったところで前編は終了する。続編が楽しみで,待ち遠しく感じるという点では,脚本側の勝利で,観客は翻弄されている。
 以下,当欄の視点によるCG/VFX活用シーンの感想である。
 ■1作目から2作目にかけて,映像クオリティはかなり向上し,CG/VFX利用場面も格段に増えたが,本作では同じ傾向が続いている。やはりヒットすれば,それだけ続編の製作費も潤沢になり,作品も充実するという好循環の典型だ。ただし,例によって重要なシーンのスチル画像が公開されないのが残念である。CG/VFXの主担当は前作に引き続きDouble Negativeで,他にMPC, Scanline VFX,Ironhead Studio, Embassy VFX, Rising Sun Pictures, Gentle Giant Studios等が参加している。VFXシーンの大半は,一見それと見えないインビジブルVFXで使われており,その点でも本シリーズの成長の跡が見られる。
 ■ ビジュアル的に力が入っていたのは,第13地区の造形である。地下に降りる長いエレベーターの落下シーンに始まり,地下都市の中央広場,反乱軍の基地,居住地区等も見ものである。特に印象に残ったのは,地下であるのに,かなりの高さの吹き抜け構造の空間が存在していることだ。このデザインのセンスはなかなか良い。前作では「VFX技術は向上したものの,引き続き美的センスは良くない」と書いたが,この第13地区に関しては,見事にその欠点を補い,ユニークなデザインで登場している。
 ■ もう1点論じるに足るのは,戦闘機兼輸送機のホバークラフトの描写だろう。政府軍の最新鋭機は既に前作で登場しているが(写真2),反乱軍が保有しているのは旧型の機種という設定だ。俳優が絡む場面用に実物大模型が作られ,飛行シーン(写真3)や基地内に多数駐機しているシーン(写真4)はCGで描いている。あっと驚くのは,政府軍の戦闘機を,カットニスとゲイルが矢で打ち落とすシーンだ(写真5)。いくら弓矢の名手でも,そりゃないだろう(笑)。
 
 
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写真2 前作に登場した政府軍の最新型ホバークラフト
 
 
 
 
 
写真3 反乱軍のホバークラフトは旧式で,少し能力が落ちる
 
 
 
 
 
 
 
写真4 地下基地内での駐機シーン(上:合成前,下:合成後)
 
 
 
 
 
写真5 いくら名手の2人でも,これで打ち落とすとは!
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