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O plus E誌 2018年5・6月号掲載
 
 
メイズ・ランナー
:最期の迷宮』
(20世紀フォックス映画 )
      (C) TM and (C) 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation.
All Rights Reserved. Not for sale or duplication.

 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [6月15日よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー公開予定]   2018年5月10日 GAGA試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  シリーズ最終作に相応しい結末で,顧客満足度大  
  ジェームズ・ダシュナー作のヤングアダルト小説の映画化作品で,シリーズ3部作の完結編である。当初予告よりも公開が1年も遅れた。主役のトーマスを演じるディラン・オブライエンが事故で重傷を負い,撮影再開までに約1年を要したからだ。前作の終わりからして,彼抜きでの完結編は有り得なかったから,無事復帰できて良かった,良かったと言わざるを得ない。
 シリーズを少しおさらいしておこう。蔓延する悪性ウィルス「フレア」の治療法を求めての攻防が物語の中心である。感染者はクランクと呼ばれ凶暴化しているが,抗体をもつ青年たちは進行が止まっている。第1作の巨大迷路はその実験の場であった。3年かけて迷路を脱出したトーマスたちは,治療薬を得て世界制覇を目論む組織WCKDに捕捉されたが,その実験施設から逃亡し,砂漠を越えて,レジスタンス組織ライト・アームと合流する。ところが,WCKDの方針を支持するテレサ(カヤ・スコデラリオ)の裏切りで,仲間のミンホ(キー・ホン・リー)が再度捕らえられた……。
 そのミンホの救出劇,WCKDとの闘いが本作の主テーマだ。前2作が「脱出」であるのに対して,再度壁を越えての隔離都市ライト・シティへの逆侵入,WCKD本部ビルへの潜入と,全く逆の構図となっている。前2作を観ていないとメンバー間の関係は分からないが,知らなくてもこの映画は十分楽しめる。ストーリーテリングが上手く,完結編らしい結末に向けての疾走感が心地よい。ラストアクション後の後日談にも,少し癒される。
 以前にも書いたが,メイン欄の作品の興行成績は嫌でも目に入ってくるものの,批評家や観客の評価は,自分が試写を観終えるまで一切見ないことにしている。その流儀で,観賞後に確認したところ,本作の興行成績は前2作ほど奮わず,批評家の評価は辛めだが,観客の評点はそう低くなかった。筆者の評価はもっと高い。
 監督は,シリーズ全作のメガホンをとるウェス・ボール。まだ30代の若手だが,自らVFXとアニメーションの会社を立ち上げただけあって,CG/VFXパートの使い方が上手い。加えて,物語進行と適度な緊迫感の演出にも長けている。出演者は,ほぼ前作と同じだ。
 以下,当欄の視点からの論評である。
 ■ まず移送中のミンホの奪還作戦の列車アクションから始まる。これはアフリカの砂漠でロケしたそうだ。ここで登場するWCKD所有の戦闘ヘリ(写真1)をレジスタンス側が奪い,中盤,終盤でもフル活用する。前作にも登場していたのだが,敵方だと邪悪な存在に見えた機体が,主人公らの援護射撃や救出用に登場すると実に恰好よい(身勝手な話だ)。列車追跡や車輌上のアクションにCG/VFXはしっかり使われているが,あまり目立たない巧みな使い方だ。さすがに,列車一両をヘリで吊り下げるシーンはCG製だと誰もが気付くだろう。
 
 
 
 
 
写真1 この敵方の戦闘機を奪って,その後もフル活用する
 
 
  ■ 後半ではバスの吊り下げシーンも登場する。本作の試写は2D版でしか観ていないのだが,両シーンとも3D上映を意識したものだろう。その他,高層ビルを見上げたり,ビル内での階下プールへのダイビングシーン等々も,さぞかし3D効果は高いだろうなと想像した。最近の大作は,本当に3D効果の演出が上手くなったと感じる。3D変換担当は殆どStereo D社だから,同社にノウハウが蓄積され,3Dチームが監督と徹底的に打ち合わせして構図を決めていることが推測できる。
 ■ 前作で脱出してきたはずの城壁都市が,逆から観るとユートピアに見える(写真2)。こうした遠景のビル群は勿論CGでの描写だが,城壁内の都市景観もほぼすべてCG製のようだ(写真3)。ビル内の近接撮影は大型セットを組んでいるので当然本物だが,この遠景とビル内のセットの中間の扱いが上手い。どこかの市街地や大型ビルを借りて撮影したように見えるが,ほぼすべてデジタル製だという。構図も質感も見事だ(写真4)
 
 
 
 
 
写真2 目指すは城壁に囲まれたラスト・シティ
 
 
 
 
 
写真3 窓の外の市中の光景はすべてCG描写。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
写真4 ダイビングする3人だけが本物で,割れたガラスも外のビルもすべてデジタル合成。
 
 
  ■ 再三登場する夜景が美しい(写真5)。ビルの稜線だけを光らせる照明が印象的で,『トロン:レガシー』(11年1月号)のビジュアルを思い出す。壁の外の荒廃した都市の光景とは,まるで雰囲気が違う。終盤のビルの炎上,倒壊シーンも無理のない演出だ(写真6)。CG/VFX担当は前作に引き続きWeta Digital 1社だが,プレビズ担当は3rd FloorからProofに変わっている。  
 
 
 
 
写真5 たびたび登場するビルの夜景シーンが美しい。町はケープ・タウンを参考にしたそうだ。
 
 
 
 
 
 
 
写真6 実際の炎はごく一部だけ(上)。炎の反射もうまく描き加えている(下)。
(C) TM and (C) 2017 Twentieth Century Fox Film Corporation.
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
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