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O plus E誌 2008年1月号掲載
 
 
 
アイ・アム・レジェンド
(ワーナー・ブラザース映画)
 
      (C)2007 Warner Bros. Entertainment Inc.  
  オフィシャルサイト[日本語][英語]  
 
  [12月14日よりサロンパス ルーブル丸の内ほか全国松竹・東急系にて公開中]   2007年12月7日 御堂会館  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  滑り出しは快適にぶっ飛ばすも,後半失速で,残念!  
 

 この映画の試写が始まる前に,後席にいたメディア関係者(新聞の文化欄の記者?)の男性2人が大きな声で話していた。「世界同時公開は止めて欲しい。フィルムがギリギリまで来ないから,試写を観る機会は限られていて,じっくり記事を書く余裕がない。字幕はひどいし,まともな情報もない。公開を焦る映画には大味なのが多いし,完成度も低い」という趣旨だった。これには全く同感だ。字幕翻訳家泣かせなのは言うまでもなく,その品質が劣悪なのは責められない。完成寸前まで後処理しているCG/VFXに至っては,試写時と公開版では中身が差し替えられていることもある。そんな映画の紹介や評論に,含蓄ある内容を期待してはいけないのだ。
 この映画も,ほとんど事前情報やまともなスチル写真がなかった。それでも,ウィル・スミスと犬だけが映っている光景(写真1)と「人類が死滅してしまった地球上で,たった1人の生存者」というキャッチコピーは秀逸だった。地下鉄構内に貼られていた東京と大阪の壊滅シーンも人目を引いた。『アイ,ロボット』(04年9月号)『幸せのちから』(07年2月号)と秀作が続いていたウィル・スミスだけに,これは観なくちゃと期待は膨らんだ。ワーナー作品なら,間違っても『日本沈没』(06年7月号)のような企画倒れの凡作ではないだろうと。
 果たせるかな,滑り出しからペースは快調だった。2012年,誰もいない静まり返ったニューヨークの街を真っ赤なマスタングで走り抜ける主人公は,ウィルス学者のロバート・ネビル。 3年前,感染力の高い新型ウィルスの蔓延で人類は絶滅し,免疫力をもった唯一の生存者である彼の話し相手は愛犬のサムだけだった。店員も客もいないスーパーで買い物をし,DVDを借り,セントラル・パークに畑を作り,毎日サウス・ストリート・シーポートに現われて,他に生存者にいないかと全周波数のAMラジオ放送で呼びかける。
 この設定が斬新で,それを支える映像の視覚効果も素晴らしかった。ワシントン・スクエア近くの住居の地下にある実験室の描写も秀逸だった。そんな日常生活の中で,夜になると迫り来る「ダーク・シーカーズ」の恐怖とは……。物語の先は全く読めず,すごい展開になるぞとワクワクした。なるほどこの映画なら,事前情報を流さずに期待させる営業戦略も許せると思った。
 監督は,『コンスタンティン』(05年4月号)のフランシス・ローレンス。設定上,共演者はいないはずなのだが,実は回想シーンで妻子役など,多数の人物が登場する。そして,後半の展開で別の人物が登場する。ここからがいけなかった。後半は一気に失速し,ただの○○○映画と化す。竜頭蛇尾とはこのことだ。まだまだ期待して映画館に向かう読者も少なくないだろうから,あえて後半の展開や結末を書くことは控えておこう。
 CG/VFXの主担当はSony Pictures Imageworksで,副担当はCIS Hollywoodだ。PreVizは,Proof社が担当している。冒頭の無人のニューヨークのシーンは圧巻だった。これが全部CG製とは思えないから,大半は実写で撮っておいて,人を消し,走る鹿を書き加えたのだろう。その鹿を襲うライオンもCG製,NY市を封鎖する時の爆発や壊滅した橋などもデジタル技術の産物だろう(写真2)。撮影には,かなり大規模なオープンセットを組んだと思われるが,ミニチュアやデジタルマットも巧みに組み合わせているようだ(写真3)。映画全体は凡庸でも,CG/VFXの観点からはかなりの力作である。
 もう1つ評価すべきは,原因となったウィルスの位置づけや,既感染者のための治療法を求めて実験を繰り返す設定だ。実験室のシーンにはリアリティがあった。多数の専門家の技術指導を受けたと思われる。エンドロールには,その名前がずらっと並んでいた。   

 
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写真1 巨大なオープンセットを構築? それとも大半は.デジタル合成か?
 
   
 
 
 

写真2 実写の光景(左上)から橋が陥落した光景(右下)を成績

 
   
 
 
 
 
 
 
 
 
写真3 こちらは,大きなスタジオ内の演技に実写とCGを合成して荒廃したタイムズスクエアを表現
(C)2007 Warner Bros. Entertainment Inc.
 
   
  (画像は,O plus E誌掲載分から追加しています)  
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