O plus E VFX映画時評 2026年10月号
(注:本映画時評の評点は,上から![]()
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マスコミ試写は早くから観ていたのだが,早めに完成版まで書いてしまいたかったのだが,論評欄の執筆に手間取っている内に,公開日のなってしまった。止むなく,本作もまず【概要と感想】だけでご勘弁願いたい。
巨匠スティーヴン・スピルバーグの久々の最新作である。しばしば彼の名前を目にするので生涯現役の多作監督のイメージが強いが,大半は製作総指揮に過ぎないのに,配給会社が宣伝用に彼の名前を冠するからである。純粋に長編映画の監督作はこれが37作目だ。年1ペースかと思いきや,それ以下で,本作はリメイク作『ウエスト・サイド・ストーリー』(22年1・2月号),自伝的映画『フェイブルマンズ』(23年3月号)以来,約3年半ぶりの監督作なのである。
最近,事前情報を殆ど流さないハリウッド大作が多い中で,本作はかなり早い時期から,SFサスペンスであること,それも地球外生命体に関する映画であることが知られていた。予告編にはスピルバーグ監督が登場し,堂々と「『未知との遭遇』を製作した頃よりも,“人類以外の存在”を本気で信じている」と語る。有名な「ロズウェル事件」やその後の類似事件で米国政府が隠蔽してきた映像も登場するとの噂が流れた。エイリアンが登場する映画の場合,スチル画像は見せないことが多いのに,6月の米国での公開後には,映画の終盤で登場するエイリアンの姿をネット上の「特別映像」で公開されていた。
『未知との遭遇』(77)は『ジョーズ』(75)に続くスピルバーグの大ヒット作であり,当時から同年公開の『スター・ウォーズ EP4』(77)とペアで語られることが多く,SF映画ブームを巻き起こした。山崎貴監督などは,13歳の時に,この2本を観たために特撮の道に進んだと公言している。スピルバーグは,後に『E.T.』(82) 『宇宙戦争』(05年8月号)も撮ったため,エイリアン・オタクのイメージがあった。SFとしては,『 A.I.』(01年7月号)『マイノリティ・リポート』(02年11月号)も近未来社会を描いた秀作であったが,宇宙船も異星人も登場しなかった。本作で久々に異星人を正面から描いたため,「原点返り」と言われている。日頃から,「地球外生命体を本気で信じている人物」と思しき発言をしていたが,本作の広報宣伝用にはかなりそれが強調されていた。
【本編の概要と感想】
いつものように物語展開を追うのではなく,今回は順序を変えて,エッセンスだけを列挙する。題名の『Disclosure Day』は「開示の日」の意である。「異星人の地球への到来は事実であり,米国政府や軍がそれを秘匿していたが,それを全世界に“開示する日”がやって来た」を描いた映画であることが公言されている。
時代は2026年,世界は核戦争による第三次世界大戦の瀬戸際にあった。長らく地球を見守り,平和を願っていた異星人たちは,地球人の愚かな行動に呆れ,地球人類が共感し合い,自らの過ちを改めることができるよう,2人の地球人に特殊な能力を授けた。その1人は,数学者でサイバーセキュリティ専門家のダニエル・ケルナー博士(ジョシュ・オコナー)で,彼は数学を通して,異星人の言葉を理解し,彼らの意図を読み取っていた。
もう1人は,カンザスシティのTV局KCXEで天気予報を担当する気象予報士のマーガレット・フェアチャイルド(エミリー・ブラント)で,普通の生活を送っていた。ある日,恋人のジャクソン(ワイアット・ラッセル)と一緒に過ごしている時に,一羽の小鳥が彼女の目の前に現れた。それをきっかけに,彼女は他人の思考や感情を直感的に理解し,無意識のうちにコミュニケーションできる超能力を発揮できるようになった。生番組の放送中にマーガレットは急に「未知の言語」で話し始め,それが世界中に拡散した。
ダニエルが所属する「ワーデックス社」は政府の秘密組織であり,捕獲した異星人を実験対象にし,拷問を与えながら,彼らの高度な技術をリバースエンジニアリングしていた。ダニエルは会社から「人類と異星人との接触に関する記録」を盗み出し,恋人のジェーン(イヴ・ヒューソン)にこの証拠を世界に公開すると告げる。TV放送でのマーガレットの言葉を聴いた彼は,それが異星人の言葉だと理解したが,同時にワーデックス社もそのことに気付いた。
ワーデックス社CEOのノア・スキャンロン(コリン・ファース)はダニエルの窃盗に気付き,彼を捕獲して監禁する。一方,超能力に目覚めたマーガレットはダニエルの幻影を見るようになり,監禁場所から彼を救出した。2人はスキャンロンが派遣した刺客に命を狙われるが,からくも逃れ,元ワーデックス社従業員のヒューゴ・ウェイクフィールド(コールマン・ドミンゴ)たちから連絡を受ける。彼らは異星人たちの存在に気付き,会社を内部告発していたグループだった。ダニエルとマーガレットは彼らの支援を受け,カンザスTVから世界に向けて情報開示しようとするが……。
全体としては,まさにスピルバーグ映画であった。難解さは全くなく,ストーリーテリングが巧みで,上記の情報を踏まえて観た方が,より楽しめる。時代設定は,今年2026年であるのに,ウォーデックス社の設備や小道具には近未来を感じさせるアイテムが登場して楽しい。これもスピルバーグ流だ。
サスペンス映画としての見せ場は,ダニエルとマーガレットのクルマが貨物列車に引き摺られるシーンだ。ビジュアル的には,ヒューゴらがマーガレットの幼児期の記憶を呼び覚ます仕掛けのシーケンスが素晴らしい。ウォーデックス社が保存していた異星人たちの映像はしっかり登場するが,勿論,本物ではなく,想像による再現映像だろう。これが全くのフィクションなのか,一部は実在するのかは観客の解釈に委ねられている。米国ネバダ州に「エリア51」なる機密性の高い空軍施設がることは周知の事実である。かつてのニクソン大統領の発言や空軍パイロットによる目撃談が都市伝説となっているが,それを信じたくなるような映画になっている。
その一方で,「開示の仕方」には疑問を感じた。カンザスの地方TV局KCXEからNYの全国ネット局に働きかけて世界に同時中継するという方法だったが,いかにも古くさい。今なら,インタ-ネット経由で,一発で世界に拡散できるではないか。北朝鮮が起こそうとしている核戦争のニュースを押し退けて,米国が秘匿していた異星人情報の開示に世界中が注目するというのは,スピルバークの願望に過ぎない。そもそも若い世代のTV視聴率は激減しているし,たとえ,そんな同時中継が始まっても,視聴者はきっとおふざけのフェイクニュースで,異星人の映像などいくらでも生成AIで作れると思うに違いない。今でも米国が世界の中心であると信じている点では,トランプもスピルバーグも同類であると感じた。
【主要登場人物のキャスティング】
もはやS・スピルバーグ監督の経歴や実績は紹介する必要はないだろう。脚本担当のデヴィッド・コープは,彼自身が映画監督,映画プロデューサーであるが,脚本家としてのスピルバーク作品は,『宇宙戦争』の他,『ジュラシック・パーク/ワールド』シリーズ,『インディ・ジョーンズ』シリーズの各数本を担当した。その他も,『ミッション:インポッシブル』(96) 『スパイダーマン』(02年6月号)『天使と悪魔』(09年6月号)等の大作が目立つ。
主演のエミリー・ブラントは,筆者のお気に入りであることは周知の事実で,こちらも過去の代表作を列挙する必要はないだろう。最近作『プラダを着た悪魔2』(26年5月号)は,まずまず予定通りの助演であった。本作のマーガレット役も可もなく不可もなくといったところで,彼女の演技力力からすれば,役不足だと感じた。『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(14年7月号) 『ガール・オン・ザ・トレインク』(16年12月号)や『クワイエット・プレイス』シリーズのようなサスペンス性が高い映画の方が似合い,実力も発揮できる。
一方,ダニエル役のジョシュ・オコナーは,そこそこ主演,準主演級の出演作がある俳優だが,日本未公開作品が多かった。当欄で名前を出したのは,『チャレンジャーズ』(24年6月号)で主演ゼンデイヤに憧れる男子テニス選手役だけだったが,全く記憶にない。その意味では,本作のダニエル・ケルナー博士役が大きな転機となることだろう。
スキャンロン役のコリン・ファースは,常に『英国王のスピーチ』(11年3月号)のジョージ6世役が代表作として語られる英国の名優だが,当欄では他に何作も紹介している。現在68歳で,すっかり貫録がついたためか,本作のような悪役も似合うにようになった。さすがに四半世紀前に出演した『ブリジット・ジョーンズの日記』(01)の頃のようなダンディさはなくなり,シリーズ4作目の『同 サイテー最高な私の今』(25年4月号)では回想シーンで少し登場するだけであった。
ヒューゴ役のコールマン・ドミンゴは,名脇役と言える黒人俳優で,余りによく見かけるため,当欄で取り上げた出演作もいちいち覚えていない。ところが,『ラスティン:ワシントンの「あの日」を作った男』(24年1月号)と『シンシン SING SING』(25年4月号)で主演に抜擢された上に,2年連続でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされ,一躍メジャーな存在になった。本作では得意の脇役に戻ったが,彼がエリザベスに接するシーンで,物語が一気に引き締まった。
【近未来描写とCG/VFXシーンの見どころ】
(しかるべき該当画像は入手しているが,まだ整理がつかないので,以下では代表画像数枚だけを掲載し,後日完成版としてVFX解説する)
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