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O plus E誌 2002年6月号掲載
 
 
『スパイダーマン』
(コロンビア映画/SPE配給)
 
Spider-Man(R), the Characters(R)&(C)2002 Marvel characters,Inc. All Rights Reserved.
       
  オフィシャルサイト日本語][英語   2002年4月18日 日劇1(完成披露試写会)  
  [5月11日より全国東宝洋画系にて公開中]      
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  テロを乗り越えて,ヒーローの銀幕デビュー  
   今年生誕40周年を迎えるアメコミのヒーローが,遂に映画館の大スクリーンに登場した。映画化の前に,一昨年ユニバーサル・スタジオ・フロリダに完成した新テーマパーク「Island of Adventures.での3D映像アトラクションとしても人気を博していた。日頃Dr. SPIDERを名乗る筆者としては,早速オーランドを訪れて4回も体験したが,平均的日本人には名前を聞いたことがあるという程度だったかもしれない。コロンビア映画史上最大の160億円をかけたこの痛快娯楽大作で,スーパーマン,バットマン並みの世界的ヒーローになることは確実だ。
 ところが,完成前にいくつもケチがついてしまった。まず,活躍の本拠地マンハッタンのシンボルであったワールド・トレード・センターのツィンタワーの間に大きなクモの巣を張った予告編とポスターを作ったのだが,あの忌まわしいテロのお蔭で一夜にしてお蔵入りしてしまった。WTCが映ったシーンも使えなくなり,かなりの再撮影を余儀なくされた。不運としか言いようがない。
 次にGWに日米同時公開,その1ヶ月前に完成披露試写会の予定が,ポスプロ作業の遅れからこれが無期延期になってしまった。結局,完成披露は2週間遅れで実施されたが,日本公開だけ当初より1週間遅れとなり,日米同時後悔も崩れてしまった。お蔭でこの記事も,先月号への掲載が間に合わなかった。
 その鬱憤を晴らすかのように,アメリカでは公開後3日間で興収約145億円という記録的メガヒットとなった。アメリカ人のスパイダーマン好きがうかがえる。映画の中身は痛快丸かじり,抜群に面白い映画に仕上がっている。特に,前半のスパイダーマン誕生までが快調で,ワクワクする。監督は『シンプル・プラン』(98)のサム・ライミ,スパイダーマンに抜擢されたのは『サイダーハウス・ルール』(99)『ワンダー・ボーイズ』(00)のトビー・マグワイアだが,敵役ゴブリンを演じる『イングリッシュ・ペイシェント』(96)のウィレム・デフォーの存在感が大きい。
 幼くして両親を失い,叔父夫妻と暮らすピーター・パーカー(T・マグワイア)は,幼なじみのメリー・ジェーン・ワトソン(キルスティン・ダンスト)に思いを寄せながらも,打ち明けられない気弱な高校生だった。ある日,課外授業中に遺伝子を組み換えた新種のクモに刺されたことが原因で,驚異的な動体視力や跳躍力が備わり,手首から強靱なクモの糸を出して,ビルの間を自在に移動できる特殊能力を身に付ける。自らの過ちによる叔父の死を乗り越え,正義の味方スパイダーマン(写真1)が誕生する。一方,親友のハリー・オズボーン(ジェームズ・フランコ)の父ノーマン(W・デフォー)は,軍事用の強力新薬服用の副作用で二重人格となり,世界制覇を目論む邪悪な怪人グリーン・ゴブリン(写真2)となって,人々を恐怖に落し入れる。
 
 
 
     
 
写真1 かたや赤と青の正義のクモ男 写真2 こなた,奇妙な緑の怪人
Spider-Man(R), Green Goblin(R), the Characters(R)&(C)2002 Marvel characters,Inc. All Rights Reserved.
 
     
   後半は,マンハッタンを舞台としたグリーン・ゴブリンの正邪の戦い,正体を明かせないスパイダーマンとメリー・ジェーンとの恋が展開する。定型パターンの正義の味方の活躍譚だが,アクションはくどすぎず,デビュー作に相応しい躍動感に溢れる動きで魅力満点だ。こういう映画は,単純でスカッとした話に限る。  
     
 
写真3 高層ビルでの活劇シーンは,勿論ブルーバックのスタジオ内での撮影
 
     
   勿論,この映画には視覚効果シーンはたっぷりある(写真3)。摩天楼上空で対決するスパイダーマンとグリーン・ゴブリンには,ラバースーツ着用の実写キャラとCGキャラの両方が用意され,モーション・キャプチャーも多用されていることは言うまでもない。ジョン・ダイクストラ率いるソニー・ピクチャーズ・イメージワークスのVFXチームは約150人。ピクセル・マジック社,デジスコープ社の応援も含めると200名を超える。『スチュアート・リトル』(99)の350名には及ばないものの相当な力の入れ方だ。
 ところが,最近のVFX水準からすると,あまり出来栄えは上質とは言えない。特に前半から中盤あたりまでは,光学的整合性の処理が下手で,嵌め込み合成の不自然感が目立つ。後半のクライマックスでは最近の平均レベル以上の出来だから,やはり再撮影に伴う強行日程の中で,満足な仕上がりに達しないまま打ち切らざるを得なかったのだろう。これもテロの被害者だ。また,『ロード・オブ・ザ・リング』などに比べると,カメラワークやスケール感にももう一工夫欲しかったというのが偽らざる感想だ。脚本もキャスティングも素晴らしいのに,VFXがイマイチなのは残念だ。不可抗力のテロの影響で情状酌量の余地はあるとはいえ,本映画時評としては若干減点でにしておこう。
 
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  トビー・マグワイアは名キャスティング  
 
いいですねぇ。クモの糸で高層ビルの間をスウィングするあのカッコ良さだけでも,見るに値します。ファンも急増するでしょう。UCFの3Dアトラクションで見たスパイダーマンとも動きのイメージは同じですが,爽快感は映画ならではです。いや,面白い!
アメリカ人好みの赤と青のコスチュームも,普通の青年が正義の味方に変身するのも,スーパーマンそっくりです。それでいて,超能力過ぎないのがいいですね。
もともと我が家は大のスーパーマン・ファンだったけど,今日からはスパイダーマンも文句なくお気に入りです。バットマンのような暗い架空の都市が舞台じゃないし,やっぱりニューヨークが似合うなあ。
WTCでジャンプする姿が見たかったですねぇ。
『サイダーハウス・ルール』のトビー・マグワイアがスパイダーマンをやると聞いた時は,ミスキャストだと思ったけど,そうじゃなかったです。
気弱な好青年のピーター君に合わせたキャスティングだったんですね。
そう,スーパーマンにおけるクラーク・ケントです。スパイダーマンは顔を隠しているので,カメラマンのピーター・パーカーの方が重要な役柄ですね。
でも,相手役には何であんな女の子なんですか。 全く魅力的じゃないですよ。
えっ!? 女性のあなたもそう思ったの。男は皆そう感じたでしょうが…(笑)。顔はイマイチでも,結構ナイスバディでしたけどね(笑)。天才子役で,『若草物語』(94)にも出ていたそうですよ。
それでか。安達祐実みたいな感じですね。ヒロインが駄目な分,敵役のウィレム・デフォーが良かったです。この人は悪役をさせたら,天下一品です。
正義感のある軍人も,イエス・キリストも,吸血鬼もやれる演技派ですよ(笑)。
対照的に,グリーン・ゴブリンの姿はいかにもマンガ的で笑っちゃいました。
あれならCGで描きやすいですしね。VFXはどう感じましたか?
私が見てもアラは目立ちましたね。すぐCGだと分かってしまいます。
クライマックスのゴブリンとの対決は夜のシーンだったので,だいぶ誤魔化せました。
昼間でも,エンディングのVFXシーンは素晴らしい映像でしたよ。
では,次に繋がる好材料ということで,VFXは2作目以降での名誉挽回に期待しましょう。
 
     
   
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