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(注:本映画時評の評点は,上から,,,の順で,その中間にをつけています。) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
冬季五輪開催の昨年は3月だったアカデミー賞授賞式は,今年は元に戻り,2月の最終日曜日の夜(日本時間2月23日(月))に行われる。本号発売前に結果は判明しているはずだが,本稿は2月14日に書いている。
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ようやく,作品賞候補作の7本目『セッション』(4月号掲載予定)の試写を観た。助演男優賞,脚色賞,編集賞,録音賞も含め,5部門にノミネートされている。何といっても,衝撃的だったのは助演男優賞候補のJ・K・シモンズの怪演である。この種の役柄が助演賞の対象になりやすいことを考慮してもなお,刮目すべき存在である。印刷に回っている,上記の◎○を修正する訳にいかないが,こちらが最有力と言っておこう。 紙幅がなくて書けなかった本音を,もう少し追記しておきたい。 「予想」と「願望」を使い分けたが,「願望」は「そろそろ取らせたい」という意味であって,一番好きな作品,俳優という訳ではない。 作品賞候補作の中では,『アメリカン・スナイパー』が最も好きな作品だ。数々の栄誉に輝くクリント・イーストウッド監督作品は,きっと選ばれないと予想するし,「自分がアカデミー会員であっても,もはや投票しない」と思うから,外したまでだ。大半のアカデミー会員の想いも同じで,5人しかノミネートできない「監督賞」は若い世代にチャンスを与え,敬意を表するため,8作品入る「作品賞」には入れておいたというところだろうか。 メリル・ストリープの「助演女優賞」ノミネートも,ほぼ同じ理由での敬意の表われであり,事実上,受賞対象ではないと想われる。そもそも何で「助演」なのか,どうみても「主演」じゃないかとも思うのだが……。その「主演女優賞」部門は,5作品中2作品しか観ていないので,予想はしなかった。 「主演男優賞」は,『フォックスキャッチャー』のスティーヴ・カレルも,入れたかった1人だ。今年のこの部門はレベルが高く,全くの三つ巴だが,カムバック賞の意味も込めて,アカデミー会員の票はマイケル・キートンに流れると読んだ次第だ。 当欄が最も注目すべき「視覚効果賞」は,有力2作品が,がっぷり四つの好勝負だ。純粋CG/VFX技術力では,『猿の惑星:新世紀(ライジング)』の方が上で,完成度も高いが,前作が凄すぎて,差分値はそう大きくない。ビジュアル・デザインの斬新さも含め,21世紀を代表するSF映画の『インターステラー』を上と見た。もっとも,昨年同じ宇宙ものの『ゼロ・グラビティ』(13年12月号)が受賞したので,その点はマイナスだ。3年前,技術力は数段上なのに『ヒューゴの不思議な発明』(12年3月号)に負けた『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』(11年10月号)の分も加味して,『猿の惑星:新世紀(ライジング)』に同情票が流れるかも知れない。 もう1つの当欄の関心事「長編アニメ賞」は,ゴールデングローブ賞受賞作『ヒックとドラゴン2』の日本での公開予定がないので,試写会もない。これでは,予想のしようがないではないか。米国では5月公開作品で,当初,本邦では11月公開が噂されていたのに,興行的にディズニー作品に勝てないと踏んだのだろうか,見送られてしまった。 それじゃ,ビデオスルーでDVD発売するのかと言えば,それもない。しばらく沈黙しておいて,これでアカデミー賞まで受賞したら,何食わぬ顔をして春休みかGWに公開する気なのだろうか? そう配給会社に毒づきたいところだが,諦めて輸入盤DVDを購入し,観ることにした。フランス発売盤をAmazon経由で買ったところ,何と何と,Blu-rayには英語・仏語の他に,日本語音声も,日本語字幕も付いていた。何だ,いつでも公開できるように,しっかり準備してあるんじゃないか! 早速眺めてみたが,1作目に劣らぬ力作である。日本で大ヒット中の『ベイマックス』よりは,格段に上だ。文句なしに,これを最有力と予想しておきたい。そもそも前作の『ヒックとドラゴン』(10年8月号)も絶賛した良作だった。同年のライバル『トイ・ストーリー3』(同号)より作品的には上だったが,長編CGアニメ分野への貢献を考慮して『トイ・ストーリー3』が選ばれるだろうと「予想」したが,残念ながら,その通りになってしまった。今年は,その借りを返す意味も込めて,『ヒックとドラゴン2』が選ばれるはずであると「予想」し,かつ「願望」しておきたい。 その他の部門の「願望」は以下の通りである。
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【追記2】結果を振り返って......完敗の弁と負け惜しみ | (2015年3月4日記) | 日本時間2月23日に発表があったが,今年の予想の半分近くは外れた。 上記のように,助演男優賞は『セッション』のJ・K・シモンズが最有力と追加記載したが,その通りになった。誰でもそう思う熱演,怪演であるから,この的中は当然だと言える。その他,助演女優賞のパトリシア・アークエット,撮影賞,音響賞,視覚効果賞は当たっていたが,この程度では威張れない。作品賞,監督賞,主演男優賞,長編アニメ賞等の主要部門を外したのでは,今年は完敗である。「願望」だけでなく,アカデミー会員の嗜好を考慮した「予想」まで大外れでは,(所詮お遊びとはいえ)様にならない。 どうしてこうなったかと考え直すと,作品賞ノミネート8作品中,試写を観たのが7作品で,内6作品にをつけている。そして,4月号で紹介する『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』だけがではなく,これが作品賞,監督賞を受賞したという訳だ。要するに,他の6作品に比べて,個人的にこの映画があまり好きでなく,高く評価したくなかったことが予想にも影響したのだろう。それでも,主演男優の鬼気迫る演技には感心したので,アカデミー会員も,それに一票投じるだろうと予想したのだが,それが見事に真逆だった訳である。 さらに見直せば,上記はさほどユニークな予想ではなく,ほぼゴールデングローブ賞通りの予想に過ぎなかった。混戦と言いながら,他誌(例えば,キネマ旬報の座談会)や他サイトの予想も似たり寄ったりで,皆で平凡な予想をして,同じように外れたことになる。 こうした平凡な予想の年には,アカデミー会員はヘソ曲がりが多いのか,当初の下馬評にない意外な作品が選ばれる傾向がある。ゴールデングローブ賞は,「ドラマ部門」と「ミュージカル/コメディ部門」の両方で最優秀作品賞を選ぶので,そのいずれかがアカデミー賞でも作品賞を得る確率が高いのは当然なのだが,意図的にそれ以外の第3の作品を選んでいるのではないかと思えることが,しばしばある。2005〜2011年の7年間で6回もこのパターンであった。この3年間は順当な結果であったので油断したが,今年はまたまた「逆転当選」の結末であった。そこまで読み切って「予想」すべきであったというのは,単なる「負け惜しみ」である(笑)。 視覚効果賞を当てているのは,当欄として当然であるが,長編アニメ賞で,またしても『ヒックとドラゴン2』が取れなかったのは残念でならない。アカデミー会員の目が節穴なのか,製作・配給会社の広報力(裏工作?)の差なのかと,再度「負け惜しみ」を言っておきたい。 | |||||||||||||||||||||||||||||||
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