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O plus E誌 2012年3月号掲載分を改稿
 
第84回アカデミー賞の予想
   
   
 

 O plus E誌3月号には僅かな紙幅しか残っていなかったため,短い記事しか書けなかったが,ここでは大幅に改稿・加筆して,2012年2月27日(日本時間)に発表される第84回アカデミー賞の予想をしておこう。なお,本稿は2月18日に書いている。全く客観的な予想というより,例年通り,幾分期待と願望を交えた意見である。
 作品賞候補9作品の内,有力候補の一角,ジョージ・クルーニー主演の『ファミリー・ツリー』とウディ・アレン監督の『ミッドナイト・イン・パリ』が未見だ。したがって,観終った7作品内での予想になるが,『アーティスト』(次号で紹介)と『ヒューゴの不思議な発明』を本命&対抗と考える。『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』(次号で紹介)も素晴らしい感動作だが,個人賞をとりそうな印象が強く,作品賞の感じがしない。
 最新技術を駆使し,緻密で美術賞は確実の『ヒューゴ…』が完成度は一番だが,映画業界そのものと偉大なる先達を礼賛しているだけに,アカデミー会員はこの身内話を素直に褒め称えることに気恥ずかしさを感じ,少し躊躇するのではないかと思う。同じ映画業界ネタでも,サイレントからトーキーへの大変革期を描き,モノクロ,スタンダード・フォーマット,しかも本気でサイレントで撮ったという『アーティスト』に票が集まるだろう。今後そう何度も使える手ではないだけに,この制約の中であれだけの作品に仕上げた手腕に対して,ここでオスカーを与えておかねばと考える投票者が多いと予想する。
 監督賞は,普通に考えれば挑戦心の衰えない『ヒューゴ…』のM・スコセッシで不思議はないが,5年前に凡作『ディパーテッド』で受賞してしまったのがマイナス要因かと思う。となると,この部門でも『アーティスト』のミシェル・アザナヴィシウスが有力候補だ。
 一方,主演女優賞は,既受賞者であっても『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』のメリル・ストリープを(願望も込めて)大本命に推したい。何しろ,この部門だけで14回目,合計17回目のノミネートという最多記録保持者である。そろそろ,2度目の主演女優賞,3度目のオスカーを得てもおかしくない。あの貫録の英国首相の前には,マリリン・モンローもドラゴン・タトゥーの女も霞んで見えてしまう。偉大なる「鉄の女」への敬意も込めての受賞を期待している。
 同賞に『ヘルプ …』のヴィオラ・デイヴィスを推す声も大きい。なるほど,オスカー級の好演だと思うが,彼女を主演女優賞部門にノミネートしたことに作為を感じる。実際の主演は,クレジット順からしてもエマ・ストーンであるはずなのに,オクタヴィア・スペンサーと並んで黒人女優2人にオスカーを持たせたいために,主演女優賞と助演女優賞に分けてノミネートしたと感じられる。まぁ,この2人が壇上で並ぶ姿も観てみたい気もするが……。ちなみに,メリル・ストリープとヴィオラ・デイヴィスは,3年前の第81回に同じ『ダウト~あるカトリック学校で~』で,主演女優賞と助演女優賞にノミネートされた関係であり,この時は2人とも受賞を逃している。
 さて,当欄の最大の関心事,視覚効果賞部門は,『猿の惑星:創世記』と『ヒューゴ…』が,本命と対抗だ。CG/VFXの使い方の上手さ,3D演出で,後者は出色の作品だが,最新技術を駆使して見事な「猿」を描いた前者が少し優勢と見る。
 長編アニメーション賞は,ゴールデングローブ賞受賞の『タンタン冒険/ユニコーン号の秘密』と,老舗ピクサーの『カーズ2』を蹴落として生き残ったドリームワークスの2作品の内,筆者は『長ぐつをはいたネコ』よりも『カンフー・パンダ2』の完成度を買う。ただし,へそ曲がりが多いアカデミー会員は,少し異色の『ランゴ』を選ぶかも知れない。海外製の他の2作品はノミネートだけで,最初から圏外だろう。

   
 
 
 
『アーティスト』:モノクロ,4:3のフォーマットで,レトロ感いっぱい
(C) La Petite Reine - Studio 37 - La Classe Americaine - JD Prod - France 3 Cinema - Jouror Productions – uFilm
 
   
 
 
 
ヴィオラ・デイヴィス(右)とオクタヴィア・スペンサー(左)。2人揃っての受賞も観たい気もするが……。
(C) 2011 DreamWorks II Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.
 
   
  [受賞者発表後の感想]
 「予想」というより「願望」というのが,昨年は言い訳になったのだが,今回は的中率が高く,熱心な読者から「85点か90点」とのお褒めの言葉を頂戴した。ここまで当たると,やっぱり好い気分である。この的中率なら,勢いで3連単かWIN5の馬券を買ってしまおうかと…(笑)。
 作品賞,監督賞に『アーティスト』,主演女優賞の大本命にメリル・ストリープとしたのは当然としても,長編アニメーション賞に『ランゴ』の名前を出したのが,ウケたようだ。
 ただし,当欄の最大関心事である視覚効果賞は,本命◎の『猿の惑星:創世記』でなく,対抗○の『ヒューゴの不思議な発明』になってしまった。『ヒューゴ…』は,先月号で大きなスペースを割いて3D演出を絶賛しただけに,嬉しくはあるのだが……。結果論で言えば,アカデミー会員の性癖からして,過去10年間で5回も受賞しているWeta Digital社よりも,『タイタニック』(97)以来14年ぶりノミネートのロブ・レガート(VFXスーパバイザー),進境著しい新興のPixomondo社が選ばれることは十分予想できたことだった。
   
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