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O plus E誌 2012年3月号掲載
 
 
 
 
『長ぐつをはいたネコ』
(ドリームワークス・アニメーション
/パラマウント ピクチャーズ配給)
 
 
      PUSS IN BOOTS (R) and (C) 2011 DreamWorks Animation LLC

  オフィシャルサイト[日本語] [英語]  
 
  [3月17日より新宿ピカデリー他全国ロードショー公開予定]   2012年2月2日 GAGA試写室(大阪)  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  スピンオフ作だが,1作目からパワー全開で絶好調  
  CGアニメ界でピクサーに対抗する老舗ドリームワークス・アニメーション(DWA)の人気シリーズ『シュレック』は,4作目(10年12月号)で終了した。結構固定ファンがあり,最終作もかなりの秀作だっただけに,少し惜しい気もしたが,あの世界観の中だけで物語を展開するのはさすがに苦しかったのだろう。果たせるかな,しっかりと脇役が主役を張るスピンオフ作品が登場した。
 シュレックの相棒としては,第1作目から登場のドンキーの方が格上であるが,ここで抜擢されたのは2作目から出演していた「長ぐつをはいたネコ」のプスである。伊達男でありながら,輝く愛らしい瞳の必殺技をもつなど,個性の上でも,擬人化した物語を展開する上でも,1枚看板はこちらと判断された訳だ。ただし,安易に『シュレック』シリーズのドンキー,ピノキオ,クッキーらを登場させず,プス以外は新たなキャラクター達で臨んでいるのがえらい。当然1作で終わらず,このままシリーズ化するつもりなのだろう。
 勿論,プスとて完全にオリジナルなキャラではなく,古くから童話界で「長靴をはいた猫」(Puss in Boots)として知られた存在だ。何でも,フランスの作家シャルル・ペローが17世紀に書いた童話で有名になったが,それ以前のグリム童話にも登場しているらしい。羽飾りのついた帽子とブーツ姿は,児童絵本でもよく見かけるコスチュームだ(写真1)。助演陣には,彼を悩殺する美女猫のキティ・フワフワーテと,元親友のハンプティ・ダンプティが配されている(写真2)
 
   
 
写真1 孫にも衣装で,子供の頃からこの姿
 
   
 
写真2 これが主役のトリオ。きっとシリーズ化するのだろう。
 
   
  物語は,彼が孤児であり,親友との確執からお尋ね者として放浪しているという設定になっている。冒頭はマカロニ・ウェスタン風のタッチで始まり,この伊達男が目一杯の演技を見せる(写真3)。ワクワクするような展開,テンポは快調,ピクサーが少しもたついているのに対して,DWAのクリエーター達は絶好調だ。
   
 
写真3 この伊達男には,竹中直人の声がよく似合う
 
   
   『シュレック』シリーズでも書いたが,字幕版でなく,本作は絶対に日本語吹替版で観ることをオススメする。プスの声は,オリジナルのアントニオ・バンデラスよりも,日本語吹替の竹中直人の方が合っている。大仰な演技や,一転して猫なで声のセリフは,まるで彼のために設定されたかのようなキャラクターだ。見せ場の1つであるダンス対決のシーンでは,『Shall we ダンス?』(96)での彼の仕草を思い出してしまった。
 このダンス・シーンのために,MoCapが積極的に導入されている。派手な追跡シーンはアクション映画級であり,CGアニメなのに実写映画のVFX手法が加味されている。毛並み,水,炎の表現に一段と磨きがかかっていることは勿論だ。デザイン的には,『カンフー・パンダ2』(11年9月号)が見事なまでに中国の都市景観を描いてみせたのに対し,本作は徹底してラテン系で統一している(写真4)。プスの故郷の町は南欧風であり,音楽もラテン・ナンバーが中心だ。
   
 
 
 
写真4 店内の細部もスペイン風のデコレーション
PUSS IN BOOTS (R) and (C) 2011 DreamWorks Animation LLC. All Rights Reserved.
 
   
   本作は,『カンフー・パンダ2』『ランゴ』とともに,アカデミー賞長編アニメ部門にノミネートされている。『カーズ2』や『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』が選から漏れたのは,見事に当欄の評価と一致している。痛快だ。  
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  (画像は,O plus E誌掲載分は削除し,別のものを掲載しています)  
   
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