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O plus E誌 2007年2月号掲載
 
    
 
その他の作品の短評
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
   今月は,一見に値する秀作・佳作が多い。是非何本かは観て欲しいところだ。
 
   
    ■『ディパーテッド』:香港映画の傑作『インファナル・アフェア』(02)のハリウッドリメイク版。トニー・レオンが演じた「マフィアに送り込まれた囮捜査官」をレオナルド・ディカプリオが,アンディ・ラウが演じた「警察に潜入したマフィア組員」をマット・デイモンが演じる。マフィアのボス,コステロを演じるジャック・ニコルソンの存在感がもの凄い。この脚本は,セリフが多過ぎてゆとりがない。前半は長くて退屈するが,後半にぐっと盛り上がる。ギャング映画を描き慣れたマーティン・スコセッシ監督の腕だろう。鮮度と緊迫感は香港版が,重厚さと迫力では本作品が勝っている。
 ■『幸せのちから』:5歳の男児を残して妻に逃げられ,所持金21ドルのホームレスから億万長者になった実在の人物,クリス・ガードナーの成功譚と父子愛を描く。次々と襲う不運と生活苦に,私ならすぐに挫折して逃げ出しただろう。アクション・スターのウィル・スミスに背広姿はもったいないなと思ったが,重い機械を抱えてひたすら走る姿は感動的だった。観客席で,思わず一緒に走っている気分になる。実の父子競演で自然に演じられたとはいえ,この少年の健気であどけない演技は絶品だった。見事なくらいに上手い!
 ■『世界最速のインディアン』:これも実話だ。ニュージーランド南端の田舎町から,40年前に買ったバイク「インディアン」を改造して,米国のスピード・レースに挑んだ伝説的ライダーを名優アンソニー・ホプキンスが演じる。1960年代に地球の裏側から単身での参戦も驚きだが,1967年に塗り替えた1000cc以下の世界最速記録が未だに破られていないのも驚異的だ。この映画では,自分も身をかがめてバイクの背に跨がり,猛スピードを出している気分になる。60余歳で挑戦を忘れない姿勢に勇気をもらう。規則を曲げてでも,この老ライダーを受け容れたアメリカ人にも拍手だ。
 ■『墨攻』:紀元前5世紀に中国の思想家・墨子が起こした「墨家」を題材にした森秀樹作画の和製コミック(「ビッグコミック」に連載)を,香港の映画監督が映画化し,香港・中国・韓国のスターが競演,日本人スタッフも参加したというアジア映画界上げての大作だ。内容は少数群が大軍と戦う籠城もので,主人公・革離を演じるアンディ・ラウが素晴らしい。アジアきっての大スターに成長したなと改めて感心する。時代も設定もまるで違うのだが,なぜか革離の雄姿はブラッド・ピット演じる 『トロイ』のアキレスを彷彿とさせ,エンディングは韓国映画の 『グエムル』を想い出した。
 ■『ドリームガールズ』:四半世紀前に初演のブロードウェイ・ミュージカルの完璧な映画化。デトロイト出身の黒人女性コーラスグループのサクセス・ストーリーとショービジネス界での愛憎物語で,モデルはダイアナ・ロスとシュープリームスだろう。ジェイミー・フォックスの悪役ぶり,エディ・マーフィーのパフォーマンス,ダニー・グローバーの優しさ,そしてビヨンセのスターとしての輝き,新人J・ハドソンのパワフルな歌唱力……。歌詞に込められた魂の叫びと無言ですべてを語るエンディングの素晴らしさ。脚本も完璧だ。
 ■『それでもボクはやってない』:『Shall we ダンス?』(96)の周防正行監督の久々の作品。痴漢冤罪事件で起訴され有罪になる不条理を訴えた映画として,公開前から話題になった。ドラマ性は乏しく,TVの特番程度の内容なのだが,脚本が見事でぐいぐい引き込まれる。刑事裁判の実態を訴える社会的意義は大きく,男性観客なら当然主人公に感情移入して憤慨するだろう。帰宅後,妻子には「自分が同じ目にあったら,やったことにして解放される道を選ぶから」と宣言してしまった。でも「関西在住となった今は,そんな満員電車の心配はないな」と思う半面,「西の植草教授」として噂になったら困るなとも感じた次第だ(笑)。いや,あのミラーマン植草は否認したままか…。
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  (上記のうち,『それでもボクはやってない』はO plus E誌に非掲載です)   
   
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