head
titlehome略歴表彰学協会等委員会歴主要編著書論文・解説コンピュータイメージフロンティア
| TOP | CIFシネマフリートーク | DVD/BD特典映像ガイド | 年間ベスト5&10 |
 
title
 
O plus E誌 2014年4月号掲載
 
 
ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』
(ユニバーサル映画/
シンカ&パルコ配給)
      (C) Focus Features
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [4月12日よりシネクイント他全国ロードショー公開予定]   2014年2月21日 GAGA試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  黄金トリオの3作目は,息の合ったB級SFコメディ  
  メイン・タイトルだけを見ると,まさに地球滅亡を瀕したSFパニック・アクションが思い浮かんでしまう。巨大隕石が衝突するのか,高度な文明をもった攻撃的異星人の襲来か,はたまた核戦争か細菌兵器による人類滅亡の危機なのか。となると,トム・クルーズ,ブラッド・ピット,ウィル・スミスあたりが主演なのか,いやキアヌ・リーブスやマット・デイモンもあり得るなと想像するのも無理はない。この種の終末ものは,過去5年間に当欄がメイン記事掲載しただけでも『2012』(09年12月号)『第9地区』(10年3月号)『世界侵略:ロサンゼルス決戦』(11年4月号)『スカイライン ―征服―』(11年6月号)『バトルシップ』(12年5月号)や,昨夏の『パシフィック・リム』(13年8月号)『ワールド・ウォーZ』(同)等のスペクタル大作を思い出す。
 ところが,副題を見ると,全くその種の大作でなく,B級コメディだなと分かる。原題は単なる『The World’s End』に過ぎないのに,わざわざ品位を落とすような副題を付したのは,配給会社の担当者が誤解して映画館に足を運んだ観客に苦情を言われたくなかったからだろうか。短評欄で触れる『ジャッカス/クソジジイのアメリカ横断チン道中』も事情は同じかと想像する。
 主演がサイモン・ペッグ,ニック・フロストと聞けば,むしろ別種の楽しみが湧いてくる。B級SFコメディ『宇宙人ポール』(12年1月号)で大いに楽しませてくれた,あのとぼけた名コンビである。エドガー・ライト監督まで加えた英国人トリオとしては,『ショーン・オブ・ザ・デッド』(04)『ホットファズ 俺たちスーパーポリスメン!』(07)に続く3作目で,息もぴったり合っている。3作とも監督とS・ペッグの共同脚本なので,自分たちの思い通りの作品にできる訳だ。
 本作では,上記コンビに中年男3人が加わり,幼なじみの5人が20年ぶりに再会し,学生時代に達成できなかったパブ12軒のハシゴ酒を敢行するという設定だ。そして,何とその目標となる12軒目のパブの名前が「ワールズ・エンド」だという訳である。とにかく騒々しく,中年男どもがバカ飲みツアーで破目を外すと始末が悪い。では,『ハング・オーバー』シリーズの英国製ロートル版なのかと言えば,まさにその通りで,人数が1人多い分,ハチャメチャ度も1.25倍は保証できる。
 過去の彼らの出演作品では,才能ある2枚目半のS・ペッグの足を,デブでノロマなN・フロストが引っ張る役回りだったが,本作では立場が入れ替わり,S・ペッグが躁状態の非常識人間で,親友のN・フロストが良識ある抑え役に回っている。最近のS・ペッグは,『ミッション・インポッシブル』シリーズのベンジー(電子工学のプロ)役,新『スター・トレック』シリーズでのスコッティ隊員役等,渋い脇役での出演が目立つので,少しイメージ・チェンジする意図なのだろうか。
 と,前半はただの酔っ払いコメディかと思わせておいて,途中から様相が一変する。何か街の様子が変だと思えば,知らぬ間に住民たちはエイリアンに操られていて,青い血を流し,目を光らせたゾンビと化していた……(写真1)。何のことはない,一旦観客をも欺くメイン・タイトル通りの展開で,ここからはCG/VFXも全開で,顔が半分なかったり(写真2),首が外れたり,電球人間が登場したりする。それでもパブ巡りの酔っ払い精神は忘れず,B級タッチを貫いているのが,黄金トリオの面目躍如だ。
 
 
 
 
 
写真1 目と口の光はLED光源で物理的に実現
 
 
 
 
 
 
 
 
写真2 後半こうしたVFXシーンが続々と現われる
 
 
 
  CG/VFX担当は,『宇宙人ポール』と同様にDouble Negative 1社だが,超大作風ではないが,しっかり良質のVFXを見せてくれる。終盤登場する近代オブジェ風の宇宙人(写真3),火炎に追いかけられるチェイス・シーン(写真4)も上々だが,短いながらも燃え盛るロンドンの光景などは,さすが英国No.1のVFXスタジオの作品だ。
 
 
 
 
 
写真3 近代彫刻のオブフェ風のエイリアンが登場
 
 
 
 
 
写真4 ラスト近くのこのVFXシーンも良くできていた
(C) Focus Features
 
 
  色々な映画のパロディやオマージュを織り込んで,映画通もしっかり楽しめる作品だが,CG/VFXの使い方にも遊び心が感じられる。それゆえ,気心の知れたDN社だけに依頼し,量より質を選んだのだろう。
 
  ()
 
 
 
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
  Page Top  
  sen  
 
back index next