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O plus E誌 2009年6月号掲載
 
 
 
スター・トレック』
(パラマウント映画)
 
  (C) 2008 Paramount Pictures. Star Trek and Related Marksand Logos are Trademarks of CBS Studio Inc.
  オフィシャルサイト[日本語][英語]  
 
  [5月29日より丸の内ルーブルほか全国松竹・東急系にて公開予定]   2009年5月14日 GAGA試写室(大阪)  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  ぐんとスケールアップして,面目躍如のリニューアル  
 

 SF映画ファンでこの題名を知らない人はいないだろう。1966年の放映開始以来これまでに5つのTVドラマ・シリーズ,1つのTVアニメ・シリーズ,劇場用映画10本を数える一大映像群である。トレッキーと呼ばれる熱烈ファンが世界中にいるというが,熱烈度の割にその数は多くない。『スター・ウォーズ』シリーズが世代を超えて新しいファン層を開拓したのに対して,こちらは一般からの注目度も数段劣る。丁度ビートルズとローリング・ストーンズの関係に近いと言われる所以である。
 本欄では,劇場版映画の10作目に当たる『ネメシス/S.T.X』(03年4月号)を初めて取り上げ,このシリーズの歴史を詳しく紹介した。日本での興行不振のため邦題は「Star Trek」の冠を伏していることにも言及した。同作品はVFX的には意欲作であり,SF映画としても十分水準以上の出来映えだったが,やはり興行的には成功しなかったようだ。
 これだけのハンデを背負いながら,本作品は日米とも堂々と副題なし,オリジナルの表題で再登場する。いや,最初のTVシリーズは『宇宙大作戦』なるチンケな題だったから,本場と対等の立場で原点に戻っての再出発である。それだけの自信作ということなのだろう。その意欲は見事に達成され,素晴らしいリニューアルとなった。感心し,惚れ惚れとする出来映えだ。
 各シリーズの時代設定は23世紀から24世紀だが,本作品は,TOS (The Original Series)の直前の2233年から物語が始まる。若き日のカーク船長の無法ぶりや青年スポックがバルカン星を離れ,宇宙艦隊に入隊した当時の様子も描かれている。言わば『スター・トレック ビギンズ』と呼ぶ方がピッタリくる設定である。こう来ることは分かっていた。『バットマン ビギンズ』(05年7月号)や『007/カジノ・ロワイヤル』(07年1月号)の成功を見れば,原点帰りし,最新のVFX技術をまとってスケールアップしたくなるのは当然だ。
 監督は『M:i:III』(06年7月号)『クローバーフィールド/HAKAISHA』(08)のJ・J・エイブラムス。新しい映像美を追求するこの監督は,「自分はファンではなかった」と公言している。それが良かったのだろう。TOSを徹底分析し,21世紀の映画ファンを堪能させる新感覚作品を作り上げた。以下,その見どころである。
 ■ 予測はしていたものの,冒頭から映像の質感向上に圧倒される。デザインとCG映像の迫力の両方でだ。TVの『宇宙大作戦』も映画版も『スタートレック』といえば,チープ感が付きまとっていた。それを一瞬にして吹き飛ばす勢いだ。改めてスチル画像をじっくり眺めても,仕上げの丁寧さに感心する(写真1)。USSエンタープライズ号の建造シーンなどは,思わず息を飲む(写真2)

 
   
 
 
 
写真1 全編を通じてのスケールアップ,ハイクオリティ化に,CG/VFX技術が大きく貢献している
 
   
 
写真2 アイオワで建造中のエンタープライズ号
 
   
   ■ 本作のCG/VFXはILMが主担当だとすぐに分かった。SWシリーズで培った彼らの宇宙ものの表現力と自負心なくして,これだけの映像は作り得ない。バルカン星の消滅やブラックホールの表現は見事の一言に尽きる。USSエンタープライズ号は旧来のイメージを残しつつも,新しさを感じるいいデザインだ(写真3)。この質感は新しいシェーダーを使って創り上げているに違いない(写真4)。お馴染みのテレポートも嬉しくなるほどの出来映えだ。    
 
 
 
写真3 精悍かつボリューム感のあるデザインだ
 
   
 
写真4 新シェーダーによる見事な表面の質感表現
 
   
   ■ 宇宙船内部もしかりである。クルーの配置やブリッジ内の様子は既視感に溢れつつ,モニター内の映像は斬新そのものだ(写真5)。7人のクルーはTOSの俳優のソックリさんではないが,近いイメージを与えてくれるキャスティングだ。ジェームズ・T・カークを演じるクリス・パインは,ウィリアム・シャトナーの若き日のようであり,『スター・ウォーズ』のルーク・スカイウォーカー(マーク・ハミル)が甦ったようでもある。
 ■ 最大の成功要因は,TOSの象徴的存在であったMr. スポックの扱いだろう。表題欄の写真を観た時は,レナード・ニモイが若いメイクで出ているのかと錯覚した。眉を釣り上げ,尖った耳で登場すれば誰でもバルカン星人に見えるが,ザッカリー・クイント演じる青年スポックの演技は素晴らしかった。加えて,驚いたことに伝説のレナード・ニモイが老いたスポックとして登場する。新旧スポックが対面する場面は,サービス精神に溢れている。トレッキー達は感涙にむせぶに違いない。
 
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写真5 デッキ内の様子。クルーの制服が実にレトロだ。
(C) 2008 Paramount Pictures. Star Trek and Related Marks and Logos are Trademarks of CBS Studio Inc. All Rights Reserved.
 
   
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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