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O plus E誌 2009年12月号掲載
 
 
 
2012』
(コロンビア映画
/SPE配給)
 
   
  オフィシャルサイト[日本語]][英語]  
 
  [11月21日より丸の内ルーブルほか全国松竹・東急系にて公開中]   2009年11月4日 SPE試写室(大阪)   
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  いくらCGでもここまで壊せるかという大破壊,凄い!  
 

 ポスターを観ただけで,内容の半分以上が分かってしまいそうな映画だ。『火天の城』(09年9月号)の安土城も壮観だったが,この映画の大都市が地割れし,海中に没して行くキービジュアル(表題欄)も相当に凄い。CGなら何でも描けるといっても,これは破格だ。
 監督・脚本は『インデペンデンス・デイ』(96)『デイ・アフター・トゥモロー』(04年7月号)のローランド・エメリッヒ。そう聞いただけで,70%以上が見えてくる。物語は凡庸で,人物描写も淡泊だが,とてつもない大スペクタルを見せてくれるはずだ。それにしても,『デイ・アフター…』を「究極のディザスター・ムービー」と称していたのに,その単純な延長線上にある映画をまた作るのかと……。きっと皆にそう言われたのだろう。「この種の映画はこれで最後だ。もう2度と作らない」との談話が伝わって来た。もう少し詳しく調べると,「地球上で起こり得るあらゆる災害を描いた。これ以上の描写はできない」という意味らしい。どこまでが真意かはともかく,CGの威力も限界も知り抜いたパニック映画の巨匠がそういうのであれば,ポスターや予告編以上の驚きを見せてくれるに違いない。
 題名の由来は,古代マヤ文明の暦は西暦2012年12月21日で終わっていて,これが「世界終末の日」だということらしい。それなら「ノストラダムスの大予言」と大差ないが,この映画では,2009年に太陽系の惑星直列があり,活発化した太陽からの強い放射線によって地球の核が熱せられて,3年後の2012年には世界の気象や地殻構造に大異変が起こるという理屈がついている。何であれ,地球滅亡を前にした定番のパニックものだが,それがいきなり襲って来るのではなく,3年間の猶予があったため世界主要国は結託し,「ノアの方舟」作戦で限られた人類だけを生き延びさせようとする……。
 主人公の売れない作家ジャクソン・カーティス役に『ハイ・フィデリティ』(00)のジョン・キューザック,妻ケイトにアマンダ・ピート,大統領科学顧問のエイドリアンにキウェテル・イジョフォーというのは,随分地味なキャスティングだ。脇役陣もしかりだ。主役は次々と起こる災害だということなのだろう。
 話は冒頭から徹底して分かりやすい。人間模様の描写にこだわったり,妙に気取ったりしないから,好感が持てる。大作というより,超B級という方がピッタリくる。元俳優のカリフォルニア州知事や愛犬を連れた英国女王には,そっくりさんを起用して登場させるなど,少し洒落っ気もある。全2時間38分の長尺の中で,災害が始まるまでの50分が長く,かったるい。ここを少し短くできないかと思うが,続く大災害で一気に驚かせ,後半を盛り上げる助走として止むを得ないのだろう。
 さて,お待ちかねの大災害はロサンゼルスの地割れから始まった。予告編でも観ていたが,この壊し方は驚愕だ(写真1)。CGの表現力が進歩したとはいえ,ここまで描けるようになったかと感心する。パニック映画嫌いでも,これは一見に値する。それも映画館の大きなスクリーンで大音響とともに観るべきだ。LA地区の破壊で度肝を抜いた後は,火山噴火の溶岩に襲われるイエローストーンをバックに間一髪のアクションが展開する(写真2)。その後は,ハワイを火の海にし,人々が集うヴァチカンを一瞬の内に滅亡させるが,リアリティたっぷりのスペクタクルだ。ホワイトハウスの壊し方も上手い。

 
   
 
 
 
 

写真1 まず,ロサンゼルスが大被害に。この壊し方は予想を遥かに上回る。とにかく壮絶!

   
 
 
 
 

写真2 溶岩に呑み込まれたイエローストーン国立公園から間一髪で脱出う

   
   ここまで来たら,後半をどうまとめるのかが関心事だ。大津波は予想通りの出来映え(写真3)だったし,方舟の大きさもさすがで,全編でVFXの威力を最大限に引き出している。VFX担当は約10社だが,SPIW,Digital Domain,Double Negative等の一流スタジオが名を連ねている。そりゃ,見応えがあるはずだ。来年のアカデミー賞視覚効果賞の最有力候補の1つだろう。あまり名前を知らなかったUncharted Territory社というのは,『インデペンデンス・デイ』以来エメリッヒ監督と親交のあるヴォルカー・エンジェル氏の会社のようだ。
 大騒動の末の結末は,まあこんなものだろうか。家族愛を強調し,ハッピーエンドで終わるのは,ハリウッド映画のお約束だから止むを得ない。娯楽映画として,たっぷりと楽しませてくれる。強いて欠点を上げれば,やはりジョン・キューザックでは小物過ぎて,ここまでの活躍は馴染まない。クライマックスの危機を前に,各国首脳が善人よろしく,意見を一致させることも不自然だ。少し物語の展開を急ぎ過ぎた感があるが,それを割り引いて考えれば,見応えは十分だ。
 
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写真3 中盤以降は,ヒマラヤ山脈にまで達する大津波が見せ場

   

   
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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