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O plus E誌 2012年5月号掲載
 
 
 
 
『バトルシップ』
(ユニバーサル映画
/東宝東和配給)
 
 
      (C) 2012 Universal Studios

  オフィシャルサイト[日本語] [英語]  
 
  [4月13日よりTOHOシネマズ日劇他全国ロードショー公開中]   2012年4月5日 TOHOシネマズ梅田[完成披露試写会(大阪)]  
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  エイリアン襲来は定番だが,デザイン的には新味あり  
  ハリウッド最古の映画スタジオ,ユニバーサル映画100周年記念作品とのことである。先月号の『ジョン・カーター』が,ディズニー110周年記念だったから,一体どうなっているのか調べ直したら,あちらはウォルト・ディズニー生誕110周年記念だった。ユニバーサル映画の設立も,厳密にはパラマウント映画の前身「Famous Players」の方が1ヶ月早いらしい。それでも,栄枯盛衰,統廃合の激しいこの業界で,一世紀同じブランド名で通してきたというのは,大したものだ。
 その110周年,100周年記念作2本が,本邦では同日の公開の上に,主演男優が同じというから驚いた。さして大物俳優ではない。カナダ出身の俳優テイラー・キッチュで,今年30歳である。米国のTVシリーズで活躍していたようだが,映画では『ジョン・カーター』以前では,『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』(09年9月号)に出ていたのが目立つ程度で,無名に近かった存在だ。大作に立て続けに主演というのは,『ターミネーター4』(09年7月号)の準主役に続いて,『アバター』(10年2月号)『タイタンの戦い』(同5月号)のサム・ワーシントンを思い出す。旬の俳優を見つける目が同じなのか,ギャラが安い内にと出演交渉が相次いだのだろう。
 上記2本どちらが先かと言えば,『ジョン・カーター』の撮影が先で,本作は出来立てほやほやである。なぜか米国の5月18日より1ヶ月以上も先に,欧州,日本で公開された。その分,ポスプロのCG/VFXパートの完成がぎりぎりで,しばらくCGが不完全なままでの仮完成版の試写しかなかった。勿論,当欄としては,劇場公開版の完成披露を待たない訳にはいかず,今月号の掲載になってしまった次第である。
 本作に原作はなく,オリジナル脚本だが,予告編を観ただけで,謎の飛行物体やエイリアンが登場する大パニックものだと分かる。よって,ジャンル的にはSFアクションに分類されているが,題名どおり現役の戦艦(バトルシップ)が多数登場し,戦争もの,軍隊ものの趣きもある。異星からの侵略者の襲来で地球滅亡の危機といえば,すぐさま『インデペンデンス・デイ』(96)『宇宙戦争』(05年8月号)『世界侵略:ロサンゼルス決戦』(11年4月号)を思い出すが,スペクタル度においては全くひけをとっていない。CG/VFX技術の進歩の分だけ,バトルの激しさとヴィジュアル度は進化している。
 監督は,『キングダム/見えざる敵』(07年10月号) 『ハンコック』(08年9月号)のピーター・バーグ。後者はコメディ・タッチだったが,前者の終盤の大銃撃戦は今でも印象に残っている。その意味で,本作のクライマックスのバトルの描写には大いに期待した。共演は,テイラー・キッチュ演じるアレックス・ホッパー少尉の恋人役に新進のブルックリン・デッカー。初のヒロイン役だが,長い金髪が似合うなかなかの美人だ。助演陣は,彼女の父親で海軍提督役のリーアム・ニーソン,日本の自衛艦の艦長ナガタ役の浅野忠信の他には,ラップ・シンガーのリアーナが映画初出演しているのが目立つくらいだ。ここでも経費節減しているが,その分,ハワイへの大規模ロケとVFXの製作費に大半を投じているようだ。以下,CG/VFX中心の見どころと感想である。
 ■ 監督自身が父親譲りの海軍オタクというだけあって,この映画のテーマはぴったりだ。前半の軍艦内の装備,海軍兵の描き方等は丁寧で,リアリティも高い。戦艦,駆逐艦等の描写には,本物の海軍の船を使ったのだろうか? 洋上に多数登場する軍艦は当然CGだろうが,最近の技術なら写真1のような場合も,ほとんどの部分をCG/VFXで描いていても不思議はない。
 
 
 
写真1 全員甲板上に整列した駆逐艦は本物か?
 
 
  ■ 当初から気になるのはエイリアンの存在だが,後半になってようやく登場する。生身の身体を外部露出せず,鋼鉄製の宇宙服で覆っているのが特徴だ(写真2)。中に人が入って演じているのではなく,恐らくマーカー付きのMoCapスーツ姿で俳優が演じ,それをパフォーマンス・キャプチャしたものと思われる(写真3)。本作は予備知識なしで,VFX主担当社も調べずに試写会に臨んだのだが,すぐにILMの作品だと分かった。動きも光沢感(写真4)も破壊の様も『トランスフォーマー』シリーズそっくりだ。『リアル・スティール』(11年12月号)のデジタル・ドメインとはかなり違うし,絶対にWETA DigitalでもDouble Negativeでもないと読み取れる。CGの質だけでなく,音響効果の金属音にも個性があるのだろう。
 
 
写真2 鋼鉄製スーツ姿はトランスフォーマー風
 
 
 
 
 
 
 
写真3 後で調べてみたら,やっぱりマーカー付き撮影だった
 
 
 
写真4 この光沢感に個性がある
 
 
  ■ 通常の宇宙人襲来と少し違うのは,彼らの母船が海から登場することだ(写真5)。そのデザインは,醜悪な怪獣のようにも見えれば,まさに戦艦のようでもあり,実にユニークだ(写真6)。侵略者たちのその他の乗り物や武器のデザインにも凝っていて,その道のマニアも大喜びだろう。極め付けは,歯車状の鋭い刃をもって飛来する回転物体で,物凄い破壊力である(写真7)。何かのグッドデザイン賞を進呈したいくらいだ。
 
 
写真5 宇宙船なのに,何と海から登場。
 
 
 
 
 
 
 
写真6 侵入者たちの母艦は,これまでのUFOデザインとは随分印象が違う
 
 
 
 
 
 
 
写真7 鋭い刃を備えて回転し,飛翔する車輪状の兵器。このデザインも破壊力描写も素晴らしい。
(C) 2012 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.
 
 
   ■ その他,道路の陥落シーンもビルの倒壊シーンもしっかり描かれていてVFX満載だが,特段のサプライズはなかった。むしろ,良く出来ていたのは,後半のストーリー展開だ。この種の大作で,「今回は,地球が滅亡しました」という結末の訳はなく,主人公の大活躍で危機は免れるはずだ。そうと分かっていながら,地球軍の反抗と逆襲を描く物語のテンポが良く,しっかり楽しみながら観てしまった。いやいや,結構面白い!  
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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