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plus E誌 2011年4月号掲載 |
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(注:本映画時評の評点は,上から,,,の順で,その中間にをつけています。) |
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海兵隊員たちの決死の戦い,観る側も決死の覚悟
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| 大スペクタクルを予感させるキー・ヴィジュアルやポスター(写真1),さらに写真2のような映像を見せられると筆者のようなパニック映画ファンはぞくぞくしてくる。ソニー・ピクチャーズ作品で,このスペクタクルとなると『2012』(09年12月号)を思い出す。本作も地球人類滅亡の危機ではあるが,天変地異が原因ではなく,宇宙からの侵略ものだ。となると,比べたくなるのは『インデペンデンス・デイ』(96)『宇宙戦争』(05年8月号)『第9地区』(10年3月号)等である。手持ちカメラを多用したドキュメンタリー調となると,『クローバーフィールド/HAKAISHA』(08)も比較対象に入ってくる。本作は,そうした先行作を十分考慮に入れた上での製作だ。
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写真1 見慣れたLAが危機に瀕し,ハリウッド関係者も想いは複雑。 |
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写真2 やっぱり,このスペクタクルは映画ならでは!
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それにしても無骨なタイトルだ。原題は『Battle: Los Angeles』で,1942年2月25日未明にLA上空に飛来した未確認飛行物体に対する迎撃戦「ロスンゼルスの戦い」に由来しているという。これを宇宙人の襲来と解釈し,当時の映像やその後の未確認飛行物体の実録映像が盛り込まれているのが本作のウリである。その種の映像は予告編にも含まれていて,オフィシャルサイト,映画紹介サイト,YouTubeでも観られるから,しっかり予習できる。本作は,そうして地球人類を監視してきたエイリアン達が,遂に2011年に地球侵略に踏み切ったという設定で,残された兵力をもつLAの地だけは死守せんとする海兵隊員たちの死闘を描いている。
監督は,『テキサス・チェーンソー ビギニング』(06)のジョナサン・リーベスマン。主人公の海兵隊隊長は,『ザ・コア』(03年6月号)のアーロン・エッカート。最近では『ダークナイト』(08年8月号)の地方検事役が印象深かったが,本作のような無骨で責任感の強い兵士役が実に良く似合う。共演は『アバター』(10年2月号)で輸送パイロット役を演じていたミシェル・ロドリゲス。女戦士姿が良く似合うが,本作でも空軍2等曹長を演じるから,まさにハマリ役である。大作でありながら,監督や出演者はやや小粒というのが第一印象だった。主役は戦闘シーンのヴィジュアルであって,豪華出演陣は要らないという考えなのだろう。
実を言うと,この映画の試写を観るのに,相当苦労した。大阪での完成披露試写は本号の締切に間に合わないので,東京での完成披露に入れてもらうことになった。校了日前日に観られるなら,滑り込みセーフである。ところが前週に大地震が起こり,加えて計画停電による交通混乱の中で,ようやく汐留の会場に辿り着いた。M7級の余震の確率70%という中での試写会は,避難経路が何度も案内され,観る側も決死の覚悟であった。
以下,内容と視覚効果,音響効果の感想である。
■ ドキュメンタリー調が売りだけあって,さしたるストーリーはなく,正体の知れない敵と戦うハイテンポのバトルの連続だった。「2時間ノンストップ銃撃戦」は誇大広告ではなく,戦闘映画としてのリアリティと緊迫感はかなり高い。手持ちカメラも多用されているが,スタビライザー付きなのだろうか,『クローバー…』のように揺れ過ぎて見にくいということはなく,視野も狭くなく,目が疲れることはなかった。
■ 全編で相当な量のCG/VFXが投入されている。敵の攻撃で炎上する市街地も丁寧に描かれている(写真3)。戦車,輸送機,爆発等々は,手前に本物を利用した上で,炎,煙,爆発,ヘリ,敵機等々が多重に描き加えられていると見て取れた(写真4)。最近では,廃墟の描写も驚くほどではないが,見慣れたLAのシーンとなると複雑な心境になる(写真5)。VFXの主担当はHydraulx社で,他にCinesite, SPIN, SOHO VFX, Embassy VFX等々の名前があった。キャスト同様,さほど一流どころではないスタジオが,これだけのVFXをこなせることに,業界の平均的実力の向上を感じる。
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写真3 空からの攻撃も地上の被害も丁寧に描かれている |
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写真4 海兵隊員と左の航空機以外はCGだろう |
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写真5 廃墟の様子は見知ったビルとなると感慨も一入 |
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■エイリアンの兵士,戦闘艇,終盤にボスキャラとして登場する母艦などは,いずれもどこかで観たようなデザインで,その点でのオリジナリティは感じられなかった。半面,音響効果は素晴らしく,全編を通して緊迫感,不安感を煽るサウンドデザインはプロのものだった。『クローバー…』は後者が勝ち過ぎていたが,本作は映像と音楽のバランスがいい。
■ 大きな余震が来た時点で試写は中止するというが,先にカラー画像を入稿し終えている筆者としては,本作を見終らないと絶対に困る! そうした切迫した中で,このサバイバル映画の緊迫感は格別のものだった。最終のカタルシスが控えめだが,ベタベタした家族愛や不自然なラブシーンがなかったのが良かった。 |
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(画像は,O plus E誌掲載分に追加しています) |
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[注]本作は当初4月1日公開予定であったが,東日本大震災の影響で公開延期となった.上記の評は,当初公開予定前に書いたものである.
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