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O plus E誌 2010年7月号掲載
 
    
 
その他の作品の短評
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
   ■『ソフトボーイ』:男子ソフトボールを題材にした青春映画。ド素人集団がチームを結成し,全国大会を目指すというのはよくある話だが,県内初の男子ソフトボール部というのがミソだ。題材の面白さの割りに,脚本も演技も冴えない凡作に留まっている。実話だというから,尚更驚く。ソフトボールに負けず劣らず,演技も素人並みの学芸会だが,これが邦画の実情とは情けない。北京五輪金メダリストの上野由岐子選手が突如登場するが,それだけが見ものだ。本当に,それだけだ。
 ■『闇の列車,光の旅』:思わぬ掘出し物だった。全く予備知識なく,題名とポスターに惹かれて観たのだが,素晴らしいロードムービーだ。さすが,サンダンス映画祭の監督賞&撮影監督賞受賞作だけのことはある。中米のホンジュラスから,貨物列車の屋根に乗り,グアテマラ,メキシコを経て米国に不法入国しようとする移民たちの生態を克明に描いている。屋根の上からのキャメラワークも出色だ。安易な予定調和の結末ではないなと予想したが,その通りだった。監督は,日系人で,これが長編デビュー作となるキャリー・ジョージ・フクナガ。ロードムービー上手は大成するというから,この名前をしっかり覚えておこう。
 ■『イエロー・ハンカチーフ』 :日本映画史に残る名作『幸福の黄色いハンカチ』(77)の海外でのリメイク作品。刑期を終えて出所した主人公を演じるオスカー男優ウィリアム・ハートの声は高倉健に似ているし,一途に帰りを待つ妻役のマリア・ベロも倍賞千恵子に近いイメージを出しているが,どうやっても二番煎じであり,オリジナル版を越えていない。全く感動しないし,涙も出て来ないのは,結末を知っているからか? いや,そうではなく,ラストに向けての盛り上げが今イチだからだろう。改めて,山田洋次監督の脚本の見事さ,ロードムービー演出の上手さを再確認する。桃井かおりが驚くべき役で登場するのがご愛嬌だ。
 ■『レポゼッション・メン』:人工臓器が普及した近未来で,そのローン返済の滞納者から臓器を回収するレポ・メンが主人公である。このコテコテのSFサスペンスに,ジュード・ロウ主演でどこまで女性ファンを取りこめるかが見ものだ。共演がフォレスト・ウィテカーというのも,興味深い組み合わせである。未来都市の夜景は魅力的で,アクションも『マトリックス』(99)を意識した痛快なものに仕上がっている。ただし,ストーリーは凡庸で,SFならではの身勝手なオチもあまり感心しなかった。
 ■『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』:結婚式直前の男が悪友たちとラスベガスに繰り出して,独身最後の大騒動を展開する。男4人組だから『セックス・アンド・ザ・シティ』(08)の男性版とも言えるし,『サイドウェイ』(05)の人数を倍増したバージョンとも解釈できる。即ち,面白さや共感度合いもその程度ということだ。米国歴代コメディー映画史上最高額の興行収入にして,今年のゴールデングローブ賞受賞作品というが,それほどのものか? 単なるドタバタ劇ではなく,脚本はよく練れているが,やはり日本人とは笑いの感性が違うのだろう。
 ■『ロストクライム -閃光-』:世紀の大事件「三億円事件」の真相がついに暴かれる! というキャッチコピーを真に受けて,事件当時を知る世代が本気で観たら,見事に裏切られる。三億円事件はネタの1つとして使われるだけで,実話でも何でもない。警察組織の腐敗の告発という意味では,豪華キャストで描く邦画版『L. A.コンフィデンシャル』なのだが,この監督(伊藤俊也)の演出が筆者の肌には合わなかった。定年間近のベテラン刑事(奥田瑛二)と血気盛んな若手刑事(渡辺大)というコンビは,警察ものの定番で描きやすいはずだが,あまり息が合っていないと感じた。
 ■『必死剣鳥刺し』:海坂藩を舞台にした藤沢周平の時代小説の映画化7作目で,「隠し剣」シリーズだと3本目に当たる。描かれる人物は,相変わらず,ストイックで凛々しい。全作観ているファンの予想と期待に違わぬ出来と言っていいだろう。たった40頁の短編を忠実に再現し,かつ味わい深く拡張している。監督は『しゃべれども しゃべれども』(07)の平山秀幸。非運の剣豪に豊川悦司,彼を慕う義理の姪に池脇千鶴を配したが,この年の離れた男女のラブシーンが秀逸だ。
 ■『プレデターズ』:SFホラーの大スター,プレデターは,ここ2作はエイリアンと戦ってきたのだが,それもマンネリと悟ったのか,この最新作では原点に戻り,人間を襲うパワフルな悪役として再登場する。1987年に公開されたA・シュワルツェネッガー主演の第1作のテイストを踏襲しているが,舞台設定はある惑星上のジャングルになっている。狩の獲物として,地球から集められた傭兵・狙撃手・工作員・囚人ら8名が,宇宙生物プレデターと壮絶なサバイバル戦を展開する。CG/VFXの見せ場はたっぷりあり,プレデターもパワーアップしているが,その醜悪なデザインがいい。監督は『アーマード 武装地帯』のニムロッド・アーントルで,主演は『戦場のピアニスト』(02)のエイドリアン・ブロディ。貴公子然としたルックスに似合わず,肉体派で運動能力も高いことに驚いた。プレデター・ファンには,満足度が高い映画だと保証する。
 
  (上記のうち,『プレデターズ』はO plus E誌には非掲載です)  
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