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O plus E誌 2014年4月号掲載
 
 
LEGO(R)ムービー』
(ワーナー・ブラザーズ映画)
      (C) 2012 The LEGO Group
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [3月21日より新宿ピカデリー他全国ロードショー公開中]   2014年2月24日 GAGA試写室(大阪)
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  童心に戻ってレゴの世界を楽しめ,3Dも堪能できる  
  楽しい映画が生まれた。フルCGアニメの3D上映は今や当たり前で珍しくもないが,素材が一味違う。知育玩具として有名な「LEGO(R)](以下,(R)は略)で作った世界を描いたCGアニメだ。米国で初登場以来,3週連続のトップを飾った。実写の大作を押しのけてのこの成績は立派だ。お子様映画だと思っていたら,予想外に楽しく,大人もワクワクする上質の娯楽映画だったというところだろうか。
 LEGO(レゴ) は,大多数の読者がご存知だろう。カラフルで凹凸のあるプラスチック製の組立てブロック玩具である。デンマークのレゴ社製の製品だが,世界中で製造され,特許が切れてからは,他社の類似品も多数出回っているようだ。現在40歳以下の世代なら,子供時代に自分で遊んだはずで,筆者らの世代は,自分の子供に買い与え,一緒に組み立てた記憶がある。
 基本は単純なブロックを多数接合して造形するだけだったが,大きな変化はミニフィグの登場だった。手足が稼働し,単純な笑顔が描かれた人形である。そのサイズに合わせて,建物,道路,鉄道,ボート等が作られるようになり,膨大な数のセット商品が売られるようになった。「南海の勇者シリーズ」「お城シリーズ」もあれば,「スター・ウォーズ・シリーズ」「ハリー・ポッター・シリーズ」等も販売されている。要するに,積み木的な遊び方と,プラモデル組立て的な愉しみ方の両方があり,その体験人口が年々増えている。
 さて本作は,そのレゴで作った世界での物語を,劇場公開用フルCG長編アニメとして映画化した作品である。基本ブロックはもとより,ミニフィグもCGとして描くのは至って簡単だから,技術的課題は何もない。従って,純粋に物語としての面白さ,映像を意図的にレゴの世界に限定することのメリットが問われることになる。結果的に,この映画化は大成功であったと言える。
 主人公は,レゴワールドのブロックシティの作業現場で働く,ごく普通の青年のエメット君だ。平凡な彼が,伝説のヒーローと間違えられ,ワールドの自由を奪おうとする悪者と対決し,3日後に迫った世界の終わりを救おうとする物語である。骨格は,至って単純だ。
 原案・脚本・監督は,『くもりときどきミートボール』(09年10月号) のフィル・ロードとクリストファー・ミラーのコンビだ。そういえば,エメット君のキャラは,同作の主人公フリント・ロックウッドに似ている。また,『ルイスと未来泥棒』(07年12月号)のルイス君や『アーサー・クリスマスの大冒険』(11)のアーサー君にも似ている。要するに,平凡な青年が,主人公として大活躍するお決まりのパターンなのだが,そこにレゴの世界で映画を作りたいと決心した製作者達の心意気と遊び心が重ねられ,楽しい映画に仕上がった訳である。
 以下は,CG技術と映像表現に関する感想である。
 ■ CG担当は,豪州のアニマル・ロジック社。元はVFXスタジオだが,初の長編フルCGアニメの『ハッピー フィート』(07年3月号)でオスカーを得る等,実績は十分だ。前作『ウォーキング with ダイナソー』(14年1月号)は当欄で酷評したが,あれは脚本が悪かっただけで,同社のCG描画力の問題ではない。レゴワールドを描くなど朝飯前で,数々の映画的手法を駆使して,味わい深い映像表現を達成している。
 ■ 映像表現の最大のポイントは,ミニチュアで作るコマ撮りアニメのような味付けだ。まず,ミニフィギュアたちの質感が素晴らしい(写真1)。スーパーマンやバットマン(写真2)が登場するのも楽しいが,彼らも販売されているフィギュアそっくりだ。レゴブロックに傷をつけたり,汚れを入れたり,実物らしく見せている。
 
   
 
 
 
 
 
 
写真1 ミニフィギュアやブロックを質感豊かに描写
 
 
   
 
 
 
写真2 人気フィギュアの中でも,蝙蝠男は準主役級
 
   
  ■ 被写界深度を浅くとり,背景をぼかし気味にしている(写真3)。ミニチュア感を強めるとともに,S3D表示での立体感も高めている。それでいて,カメラを引いた場合のスケール感も抜群で,この映画の3D上映は殊更見やすかった。CGアニメ初期に多用されたウォークスルーなどは全くなく,実写映画風のカット割り,カメラワークもまた,実物感を高めていた。
 
   
 
 
 
 
 
写真3 被写界深度を浅くとり,3D表現も効果的
 
   
  ■ ブロックシティはすべてCG描画だが,そのセット・デザインが素晴らしい。実際にレゴで製作できるか,逐一デンマークの本社に確認したという(写真4)。TVアニメやビデオゲームでは実現できない,映画ならではのクオリティで実現していることに好感がもてた。
 
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写真4 爆発シーンでの破片もしっかりLEGOブロック
(C) 2012 The LEGO Group. All rights reserved.
 
   
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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