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O plus E誌 2012年1月号掲載
 
 
 
 
『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』
(パラマウント映画)
 
 
      (C) 2011 PARAMOUNT PICTURES

  オフィシャルサイト[日本語] [英語]  
 
  [12月16日よりTOHOシネマズ日劇他全国ロードショー公開中]   2011年12月8日  TOHOシネマズ梅田[完成披露試写会(大阪)]  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  目の覚めるようなアクション,シリーズ最高の痛快作  
  人気シリーズの4作目だが,題名は『M:i-4』とはせずに,番号はなしで,上述のような副題を付してきた。前作との間は5年半空いていて,さすがのトム・クルーズ人気も少し陰り始めたかと思いきや,どうしてどうして完成披露試写会はほぼ満席で,もの凄い熱気だった。かなり早い時間に座席指定に行ったのに,既に半分以上の席が埋まっていた。まだまだ日本での人気は高い。間が空いたからこそ,皆さんイーサン・ハントの復帰が待ち遠しかったに違いない。結論を先に言えば,その期待に応えるべく,痛快かつパワフルな作品に仕上がっていて,娯楽作としてはシリーズ最高傑作だと言える。
 冒頭の任務中にロシアのクレムリン宮殿が爆破されるが,その濡れ衣を着せられ,関与を恐れた米国政府は所属組織のIMF(Impossible Mission Force)を解散する。それは表向きの話で,登録を抹消されたイーサンたちには,世界制覇を目論むテロリストの核兵器使用阻止の極秘命令(Ghost Protocol)が発せられる。腕利きのチームを急遽編成し,彼はドバイ,ムンバイへと敵を追う……。
 監督が,ブラッド・バードというのに驚いた。前3作が,『アイアン・ジャイアント』(99)『Mr. インクレディブル』(04年12月号) 『レミーのおいしいレストラン』(07年8月号) といずれもアニメ作品である。後2作でオスカーに輝いているとはいえ,実写映画の人気シリーズへの抜擢はちょっとした冒険だ。ピクサーと『ファインディング・ニモ』(03)のアンドリュー・スタントン監督は,実写映画の『John Carter』を製作中というから,CGアニメ界から実写映画への進出が相次ぐ訳だ。ILMが『ランゴ』(11年11月号)でフルCG進出して来たのとは逆の現象である。
 最近単独行動が目立ったイーサンが,徹底したチーム・プレイでミッションに挑むのも,その作戦が綿密なのも嬉しい。さすがかつての『スパイ大作戦』シリーズの大ファンだっただけのことはある。加えて,このチーム・メンバーが魅力的だ(写真1)。まず,タフな女性エージェントのジェーン・カーター(ポーラ・パットン)。物凄い戦闘能力で敵と戦うかと思えば,ナイト・ドレス姿のセクシーな肢体には目を見張った(写真2)。『プレシャス』(10年5月号)で,主人公の少女を見守る代替学校の地味な教師を演じていたのとは,同じ女優と思えぬ変身ぶりだ。続いては,前作にも少し登場した天才的ハッカーのベンジー・ダンで,今作では晴れてチーム・メンバーとなる。最近どこかで見かけた顔だと思ったら,別項の『宇宙人ポール』の主演コンビの1人,サイモン・ペッグだった。そして,敏腕分析官,実は訳ありの元エージェントのウィリアム・ブラントを演じるのは,オスカー受賞作『ハート・ロッカー』(10年3月号) に主演したジェレミー・レナーだ。イーサンとも対立する存在感が光っていた。チーム・メンバーとしての彼の起用が,本作のクオリティを高めていることは間違いない。
 
   
 
写真1 これが極秘の任務に就く新チームのメンバー
 
   
 
 
 
写真2 タフな女戦士から,ナイスバディのレディへの見事な変身
 
   
  最大の見どころは,何と言っても,ドバイにある世界一の高さ828mを誇るビル「ブルジュ・ハリファ」でのスタント・シーン(写真3)だ。その123階付近からトム・クルーズ自身が実際に屋外に出て,10mの急降下も演じたという。いくらスタジオ内で事前体験し,現場では命綱のワイヤーはあったとはいえ,よく目が眩まないものだ。眼下の光景やビルへの映り込みはVFXの産物かと思ったが,すべて実写のようだ。この一連のシーケンスを観るだけでも,入場料分の価値は充分ある。
   
 
 
 
 
 
写真3 とにかく,このスタントシーンには驚愕。この映像を観るだけでも,入場料分の価値はある。
 
   
  もう1つの見どころは,ふんだんに登場する電子小道具,新兵器の数々だ。ベンジーは,007シリーズのQ,『スパイ大作戦』のバーニーのように電子工学のエキスパート,特殊機器の発明家として大活躍する。ビルの壁面を登るための手袋(写真4)はゲーム機用のパワーグローブを彷彿とさせ,カメラとスクリーンを使った偽装工作にはVR関係者ならニヤリとするはずだ。コンタクト・レンズに仕組んだカメラは一段と高解像度化し,スキャン結果をネット経由でプリンタ出力できるまでになっている。iPadがさりげなく,電子小道具の一環として何度も登場する。そのスパイ・ガジェット類が鉄道車両の中に隠されているというのも楽しいアイディアだ。その半面,最近イーサンが変装の達人であるシーンがあまり出て来ないのは,少し淋しい(この作戦では変装計画がありながら,未遂に終わっている)。
   
 
写真4 外見はまるでVR用のパワーグローブ
 
   
   
   VFXの主担当はILMで,ベテランのジョン・ノールがスーパバイザを務める。前述のクレムリン宮殿の爆破シーン,ドバイの砂嵐,ムンバイでのカー・アクション(写真5)等々は,さすがと思わせる出来映えだった。敵役のヘンドリックスとイーサン・ハントのクライマックスでの攻防は,立体駐車場を舞台に繰り広げられ,まさに縦横無尽のカメラワークだ(写真6)。しっかりアクション・デザインし,プレビズで何度も確認した上での産物だ。  
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写真5 ボンド・カー並の未来デザインも実にかっこいい
 
   
 
 
 
写真6 立体駐車場での攻防。3D上映でないのが残念だ
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  (画像は,O plus E誌掲載分を入替・追加しています)  
   
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