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O plus E誌 2012年5月号掲載
 
 
 
 
『タイタンの逆襲』
(ワーナー・ブラザース映画)
 
 
      (C) 2012 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND LEGENDARY PICTURES FUNDING, LLC

  オフィシャルサイト[日本語] [英語]  
 
  [4月21日より丸の内ピカデリーほか全国ロードショー公開中]   2012年3月29日 ワーナー試写室(東京)  
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  物語は凡庸だが,3D演出には格段の進歩の跡あり  
  上述のサム・ワーシントン主演の『タイタンの戦い』(10年5月号)の続編の登場である。丁度2年前に公開の前作は,評論家筋からは酷評されながらも,3Dブームもあって堂々たる興行成績を残した。当欄では,その3D効果に関しても,CG自体の出来に関しても,低評価しか与えなかったのだが,わずか2年で続編というのは,予めその計画があったのだろうと推察する。
 原題は『Wrath of the Titans』で,直訳すれば「タイタンの怒り」だが,これを「逆襲」としたのは『スター・ウォーズ』シリーズの第2作(エピソード5)『帝国の逆襲』(80)にあやかってのことだろう。前作で魔物クラーケンを退治した半神のペルセウスは,勿論サム・ワーシントンが演じているが,ゼウス,ハデス,ポセイドンの3兄弟も,引き続きリーアム・ニーソン,レイフ・ファインズ,ダニー・ヒューストンが配されている。
 物語の設定は前作の10年後である。妻を亡くしたペルセウスは,男手一つで息子を育てていた。人間が神を祈らなくなったことから神々の力が落ち,冥界に閉じこめていた邪悪な巨神クロノスが目を覚ましかけている。共に力を合わせて闘おうという父ゼウスの頼みをペルセウスは断る。やがて,伯父ハデスがクロノス側に寝返り,ゼウスは捕らえられ,地上には魔物たちが出没する……。
 前作のルイ・ルテリエが製作総指揮に回り,監督には『世界侵略:ロサンゼルス決戦』(11年4月号)のジョナサン・リーベスマンが起用されている。もう1つ嬉しい交替は,アンドロメダ王女役が『007/ダイ・アナザー・デイ』(03年2月号) のロザムンド・パイクになったことだ。まさか,ヒロインにはもっと美人をと当欄で書いたせいではあるまいが,さすがボンド・ガール,その存在感だけで,魔物と汗臭い戦士達中心の映画に潤いを与えている。彼女自身,顔に泥をつけたままで戦う姿の方が魅力的だ。
 この種の続編で期待できるのは,キャステイングやコスチューム・デザインに余り時間をかけなくて済むので,その分,新登場のクリーチャーのデザインや魔界のCGモデリングに時間がかけられることだ。その点は,まさに期待通りの迫力であった。以下,その要点である。
 ■ VFXの主担当は前作に引続きFramestoreとMPCの2社で,他にMethod Studios, Nvizible, Prime Focus, Pixomondo等も参加している。全編CG/VFXのオンパレードだが,随所に大型の模型(写真1)や大規模な野外セットなども使われていたようだ(写真2)。最近の技術ではまず見分けがつかないが,俳優の配置や3D効果を考える上で,実物があった方が考えやすいようだ。
 
 
 
写真1 VFX満載だが,随所での模型の使い方も上手い
 
 
 
写真2 こちらは屋外ロケシーンをVFX加工
 
 
  ■ 火炎を吐き,空を飛ぶ双頭獣「キメラ」,上半身2体で4本の手をもつ「マカイ」(写真3)等,早々にユニークな魔物たちが登場するが,デザインは悪くない。ポセイドン,アレス等,神々が固体化して,粉のように崩れ去るシーンは,よくあるパターンだが,CGの質としては上々である。登場場面は多いが,しっかり描かれていたのは,ペルセウスがまたがるペガサスだ。地上のシーンでは,実在の馬にCG製の羽を合成し,空を舞うシーンではフルCGだと見て取れた(写真4)
 
 
写真3 4本の剣が武器のマカイ
 
 
 
 
 
 
 
写真4 地上は羽だけ合成,空を飛翔するペガサスはフルCGだろう
 
 
   ■ 前作と同様,2Dで撮影し,3Dに変換するフェイク3Dを採用している。ハリウッド作品ではリアル3Dの比率が増し,最近では少数派となった方式だが,さすがにこの2年間技術も演出力も向上したと実感できた。前作は撮影が始まってから3D変換することが決まったが,本作では最初から計画されていたので,構図やカメラワークも3D変換しやすいように設定されている。その効果が最も如実に表われていたのは,中盤の迷宮「タルタロスの牢獄」のシーンだ。岩や柱が縦横に配されていて,それが寄せ木細工を解くかのように複雑に移動する(写真5)。実写のリアル3Dでは表現できない立体感抜群のシーンの連続だ。そして終盤,全長500mのクロノスが甦り,圧巻の大スペクタクルとなる(写真6)  
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写真5 岩や柱が縦横に移動し,交錯するシーンは圧巻。3D効果も上々。
 
 
 
 
 
 
 
写真6 終盤の主役は,この巨大な魔物のクロノス
(C) 2012 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND LEGENDARY PICTURES FUNDING, LLC
 
 
  (画像は,O plus E誌掲載分の一部を入替,追加しています)  
   
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