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O plus E誌 2010年5月号掲載
 
 
 
タイタンの戦い』
(ワーナー・ブラザース映画)
 
 
      (C) 2009 WARNER BROS ENTERTAINMENT INC AND LEGENDARY PICTURES  
  オフィシャルサイト[日本語][英語]  
 
  [4月23日より丸の内ピカデリー他全国ロードショー公開中]   2010年4月12日 梅田ピカデリー[完成披露試写会(大阪)]  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
   CG/VFXの分量は十分だが,やや豪華さに欠ける  
   原題は『Clash of the Titans』。特撮映画の巨匠レイ・ハリーハウゼン最後の劇場公開作品となった1981年の同名映画のリメイクである。こちらはむやみにカタカナにせず,そのままの題であることが好ましい。企画の途中から3D作品化することが決まった大作で,CG満載というが,主演は『アバター』のサム・ワーシントン,ギリシャ神話が題材というのは『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』(10)と同じだから,何やら企画が安易で,少し新鮮味に欠ける気がしていた。『パーシー…』は3月号に間に合わず,Web上の短評しか書けなかったので,ここで比較しながら論じてみよう。
 ゼウスやポセイドンの名は知っていても,大抵の日本人にはギリシャ神話は縁遠い存在だが,さすがにこの2本を立て続けに観れば,神々の名前くらいは頭に入る。ジュピター(木星),ウラヌス(天王星)同様,土星の衛星であるタイタン(ティターンとも言う)も神の名前かと思っていたが,これは巨大な体をもつ神々の集合名詞で,狭義にはウラヌスとガイアの間に生まれた十二神を指すそうだ。『パーシー…』は現代社会に生きる少年パーシー・ジャクソンが実は半神半人で超能力をもつという設定だったが,本作『タイタンの戦い』は同じオリンポスの神々を登場させ,まともにギリシャ神話の時代の物語として描いている。
 大神ゼウス(リーアム・ニーソン)と人間の子であるペルセウス(サム・ワーシントン)(写真1)が,王女アンドロメダ(アレクサ・ダヴァロス)を守るため,冥界の王ハデス(レイフ・ファインズ)と対峙し,獣人カリボス,蛇女メデューサ,大海獣クラーケンと闘う冒険譚である。多分,欧米ではよく知られた物語の新解釈なのだろう。神話を堂々と正面から描く大河ドラマ風の演出だ。監督は『トランスポーター』(02)『インクレディブル・ハルク』(08年8月号) のルイ・ルテリエ。リュック・ベッソンが育てたフランス映画界の期待の星である。
 
   
 
写真1 半神半人の英雄ペルセウス
 
 
 
   CG/VFXの主担当は,お馴染み英国勢のFramestoreとMoving Picture Co.で,それぞれ200人前後のCGクリエータを投入している。その他,Cinesite,Flash Film等も参加している。CG/VFX的には結構な大作であるはずなのに,今一つ大作感がなく,スケール感も乏しい印象しか与えないのはなぜだろうか?
 その1つは,106分という上映時間が,この種の作品としては短めであり,駆け足すぎたからだろう。主要登場人物や魔物の紹介部分で,もう少しタメがある演出の方が良かったかと思う。この点では,お子様映画に徹した『パーシー…』の方が軽快で,理にかなっていた。ヒロインの女優陣があまり魅力的でなかったのも,豪華さを感じさせない一因だったのだろうか(写真2)。  
 
   
 
 
 
写真2 王女アンドロメダ(上)はまずまずだが,女神イオ(下)もう少し何とか……
 
   
   CG/VFXのレンダリングは上質なのに,デザインが今イチと感じた。全く同じように登場するメデューサ(写真3)の髪の毛の蛇も,彼女の目から出る光線で石化する描写も,圧倒的に『パーシー…』の方が優れていた。大海獣のクラーケン(写真4)は,『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』(06年8月号)の大蛸に負けている。 ペルセウスを背にするペガサスの翼も飛翔する姿も,何かぎこちない。同じ俳優が乗るだけに,『アバター』の翼竜バンシーがいかによく出来ていたかを再認識することだろう。
 試写会は『アリス…』と同じ劇場で3D版を観たが,目は疲れなかったものの,この映画を3D映像化した効果もあまり感じられなかった。ハリウッド大作は,映画ならではの豪華さで作らないと意味がない。中途半端な大作は,大作とすら感じない。改めて『アバター』の偉大さを感じた今月の3D映像2作品だった。 
 
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写真3 髪の毛も胴体も毒蛇のメデューサ
 
   
 
 
 
写真5 写真4 海に棲む巨大な魔物のクラーケンも今イチ
(C) 2009 WARNER BROS ENTERTAINMENT INC AND LEGENDARY PICTURES
 
   
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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