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O plus E誌 2009年7月号掲載
 
 
 
ターミネーター4』
(ワーナー・ブラザース映画
&コロンビア映画/SPE配給)
 
   
  オフィシャルサイト[日本語][英語]  
 
  [6月13日より丸の内ピカデリー1ほか全国松竹・東急系にて公開中]   2009年5月25日 梅田ピカデリー[完成披露試写会(大阪)]  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  新3部作のスタートは,重厚かつ緊迫感溢れる活劇  
 

 待ち遠しかった1作だ。それでいて,さて何をどう書こうか,少し悩み,緊張する作品である。今更言うまでもなく,VFX史に燦然と輝く偉大なる『ターミネーター2 (T2)』(91)の後継作品だ。本時評がどう評価するかが注目されているようなので,迂闊なことは書けない。今や,海外のCG/VFXスタジオで働く日本人クリエータ達も当欄の読者だというから,責任は重大だ。
 と気にするのは,前作『T3』(03年8月号)にやや高目の評価☆☆+を与えてしまったからだ。「何とか合格点はクリアしたが,特別な存在から普通のアクションVFX大作になったという感じに留まっている」と書いたから,さほどの作品ではないことは読み取ってもらえただろうが,ヒロインの可愛さとCGの出来映えで点数を上乗せしたことに違いはない。興行的には成功したものの,『T3』の中身を今イチと感じた関係者がリターンマッチとして『T4』を計画中との噂は早くから伝わって来ていた。この映画の原題は『Terminator Salvation』で,4作目というより,新3部作の第1作と位置づけたいようだ。本作の公開を待たずして『T5』の製作が発表され,公開は2011年になるとのことである。
『T3』のジョナサン・モストウに代わってメガホンをとるのは,監督デビュー作『チャーリーズ・エンジェル』(00)で一躍名を上げたMcG(マックジー)だ。CM界の出身だけに,テンポの良い作風がウリである。主人公ジョン・コナーを演じるのは,『バットマン ビギンズ』(05年7月号)『ダークナイト』(08年8月号)の2本を大成功させたクリスチャン・ベール 。 バットマンのイメージが強過ぎないかと懸念したが,心配は無用だった。生真面目な人類解放軍のリーダー役はぴったりで,作品を重厚に見せるのには最適な俳優だ。もう1人,本作の重要な役マーカス・ライトを演じるのは,ジェームズ・キャメロン監督の次回作『アバター』(09)に抜擢されたサム・ワーシントン。立て続けにキャメロン関連作品への出演ということになる。過去にタイムスリップしてジョンの父親となる若きカイル・リースには,アントン・イェルチンが配されている。先月号紹介の『スター・トレック』でチェコフ役を演じていた青年である。
 時代は「審判の日」から10年後の2018年。荒廃した世界(写真1)はスカイネット(人工知能をもったマシン達)が支配し,生き残った僅かな人間が抵抗軍を組織して戦っている。前3作でほんの少しだけ垣間見た暗い未来社会が舞台だ。予想通り,冒頭からマシン対人間の派手な戦闘シーンが延々と流れる。映像の迫力もスゴイが,音が良く,音響効果の進歩にも感心する。ヘリ,潜水艦等は,当然CGと模型の併用だろうが,軍の協力を得て,本物もかなり使われているようだ。

 
   
 
写真1 審判の日の10年後の暗い未来社会  
 
   
   スカイネットの標的となったジョン・コナーとカイル・リースを巡る物語に,脳と心臓とだけが人間というマーカスが絡んで,見応えのある物語が展開する。シリーズ中のエピソードも随所に登場して,ファンサービスに余念がない。4分余の長い予告編が公開されていたが,それを全編に拡大したと思えば良い。後半のアクションはボリュームたっぷりで,レジスタンス・ムービーとしての出来映えは秀逸だ。ただし,予備知識のない新たな観客には,ただの暗いアクション映画としか映らないかも知れない。以下,VFXを中心とした見どころである。
 ■ VFXカットの主担当は言うまでもなく老舗ILM。ほぼ同時に『スター・トレック』や『トランスフォーマー/リベンジ』も手がけているためか,全1300カット中の400カット以下に留まっている。PreViz担当はProof社。CGでAsylumやRising Sun Pictures等の応援の得た上に,ミニチュアやマット画専門の会社名があった。ILMからスピンオフした連中に外注しているのだろうか。産業としての広がりが感じられる。
 ■ 別格の存在は,原点となったT-800型をデザインしたスタン・ウィンストン・スタジオだ。昨年急逝した創業者への追悼の意を込めてか,様々なマシンを登場させ,お得意の造形力を遺憾なく発揮している。粗暴な傭兵のT-600(写真2),高さ25mの捕獲者ハーベスター(写真3),バイク型のモトターミネーター(写真4),輸送用のトランスポート等だ。人間とマシンの混血であるマーカスの皮膚の下のメカを見せるサービスシーンは,過去の作品よりスケールアップし,色々工夫の跡が見られる。  
 
   
 
写真2 いかにも粗暴で邪悪な風貌のT-600  
 
   
 
写真3 クモを模した形状の捕獲者ハーベスター  
 
   
 
写真4 疾走するバイク型のモトターミネーター  
 
   
   ■ 後半はお馴染みT-800のスケルトン・モデルの登場場面(写真5)が目立つ。第1作目の恐怖心を再現したいという原点帰りの意図だろうか。では,その骨格に皮膚をつけたカリフォルニア州知事は登場するのだろうか?ちょっと笑いを誘う小粋な登場の仕方とだけ言っておこう。当然,肖像権料は払っているのだろう。      
   
 
写真5 後半はお馴染みのT-800の骨格が再三登場  
 
   
   ■ 未来のコンピュータ画面のシーンも結構登場するが,透明板のディスプレイ,タッチ入力であまり新味はない。スカイネットの記憶スペースに進入し,データを検索するシーンは,分子モデルのような3Dデータ構造が描かれる。WWWのようなリンクを表示したつもりなのか,サプライズはなかったが,悪くはない。
 ■ さて,総合評価の評点である。意欲作ではあるが,偉大なる『T2』と同等の満点をつける訳には行かない。先月の『スター・トレック』に比べて,楽しさも少ない。『T3』と同じ☆☆+にせざるを得ないが,本作の方がずっと見応えがあるとだけ言い訳しておこう。  
 
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  (画像は,O plus E誌掲載分とは異なり,Web掲載可能なものに限定しています)  
   
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