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O plus E誌 2016年3月号掲載
 
第88回アカデミー賞の予想
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
 

 授賞式は例年通り2月の最終日曜日の夜(日本時間2月29日(月))だが,今年は本号発売後である。本稿は2月15日と21日の夜に書いている。
 今年のノミネート作に関しては,候補者は白人ばかりだという批判が上がり,物議を醸し出した。来年以降,投票者に女性や非白人の比率を増やすそうだ。
 すっかり白けてしまったが,それとは別の意味で,筆者は例年ほど予想に熱が入らない。というのは,当欄の最大の関心事である「視覚効果賞」の候補5作品から,筆者が一押しの『ザ・ウォーク』も,次なる『ジュラシック・ワールド』も漏れてしまったからである。『ザ・ウォーク』を入れないなんて,アカデミー会員の目は節穴かと少しむくれている次第である。
 それでも恒例の祭りなので,しぶしぶ予想するが,今年は「予想」と「願望」を明確に分けることにした。
 ◎:世評を考慮した比較的素直な予想での「本命」
 ○:同上の意味での「対抗」となる作品
 ☆:自分ならこれに投票する,これを選んで欲しいという「願望」
 ★:ひねくれ者のアカデミー会員ならこれを選ぶのではという,少し穿った「予想」
の意味で下記の印をつけている。

 
 
【O plus E誌非掲載の予想関連付記】

(2016年2月21日)

 
  部門ごとの予想 and/or 願望にも少し触れておこう。
 最多12部門にノミネートの『レヴェナント 蘇えりし者』は,4月号で紹介するが,さすがに堂々たる作品で,主要部門の大本命であることには,筆者も素直に同意する。特に,主演男優賞のレオナルド・ディカプリオは,過去に何度もゴールデングローブ賞を受賞しながらも,アカデミー会員からは嫌われ続けて来たので,同部門は最大の注目の的だ。さすがに,この作品での重厚な演技には,オスカーを与えざるを得ないと思うが,今年逃すようなら,もう2度と取れないし,アカデミー賞側の権威が大きく失墜すると思われると予想しておこう。
 内容的には大本命だが,昨年,もしくは一昨年に与えたばかりなので,どうかと思うのは,監督賞,主演女優賞,撮影賞だ。監督賞のA・G・イニャリトゥには,昨年の『バードマン…』が明らかにフライングだった。今年しまったと思っている会員も少なくないことだろう。主演女優賞のケイト・ブランシェットも,一昨年の『ブルージャスミン』よりも,今年の『キャロル』の方が数段出来が好い。撮影賞のエマニュエル・ルベツキに到っては,昨年も一昨年も受賞しているので,常識的には,未受賞者に与えられると思われるが,3部門とも,それを覆すだけのパワーを秘めていると評価しておこう。
 助演女優賞部門は特に激戦で,下記◎○の他に,『ヘイトフル・エイト』のジェニファー・ジェイソン・リーの怪演や,『リリーのすべて』のアリシア・ヴィキャンデルの健気な妻の演技が受賞しても全くおかしくないと,予防線を張っておこう。
 さて,当欄の最大の関心事であり,過去に予想をかなり的中させている「視覚効果賞」と「長編アニメ賞」の両部門だが,「むくれている」だけでなく,元々受賞候補の本命を見つけにくい年であると言い訳しておこう。ユニークさとスペクタル性ゆえ,個人的に『ザ・ウォーク』を推したかったのだが,もはや大作映画のCG/VFXはいずれも分量的には満腹感一杯で,技術的にも抜きんでた作品がない状態であるとも言える。
 それでも「VFX映画評論」として,何か挙げておくなら,昨年のBest 5対象期間以降の『オデッセイ』を「願望」としておこう。知名度と興行収入面での貢献から,『スター・ウォーズ フォースの覚醒』に票が入ってもおかしくない。かつてもEP4〜6は特別業績賞を得ていたが,EP1〜3は受賞に至らなかったので,その埋め合わせがあるかもしれない。この視覚効果賞部門にも『レヴェナント…』がノミネートされている。これは作品の勢いだけでなく,L・ディカプリオを灰色熊が襲うシーンが,(短いながらも)VFX的にはかなり見応えのある場面となっているからだと断っておこう。
 一方の長編アニメ部門は,今年は「該当なし」でおかしくないほど,不出来な年であった。の評価を与えた以上,一応個人的には『映画 ひつじのショーン 〜バック・トゥ・ザ・ホーム〜』を挙げておくが,さほどの「願望」でもない。
 
 
 
・作品賞:

◎『レヴェナント 蘇えりし者』

☆『ブリッジ・オブ・スパイ

・監督賞:

◎アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ(『レヴェナント …』)

○トム・マッカーシー(『スポットライト …』)

・主演男優賞:

◎レオナルド・ディカプリオ(『レヴェナント …』)

・主演女優賞:

☆ケイト・ブランシェット(『キャロル』)

・助演男優賞:

◎マーク・ライランス(『ブリッジ・オブ・スパイ』)

○マーク・ラファロ(『スポットライト …』)

★シルベスター・スタローン(『クリード チャンプを継ぐ男』

・助演女優賞:

◎ケイト・ウィンスレット(『スティーブ・ジョブズ』

○ルーニー・マーラ(『キャロル』)

・脚本賞:

◎『スポットライト 世紀のスクープ』

○『ブリッジ・オブ・スパイ』

・視覚効果賞:

☆『オデッセイ

★『スター・ウォーズ フォースの覚醒

・美術賞:

☆『オデッセイ』

★『マッドマックス 怒りのデスロード

・撮影賞:

◎『レヴェナント 蘇えりし者』

・作曲賞:

☆『ヘイトフル・エイト

・長編アニメ賞:

★『インサイド・ヘッド

☆『映画 ひつじのショーン 〜バック・トゥ・ザ・ホーム〜』

 
 
 
【追記】ノミネート2作品を観て

(2016年2月26日)

 
  その後,主演女優賞にノミネートされている2作品を観た。シャーロット・ランプリング主演の『さざなみ』とブリー・ラーソン主演の『ルーム』である(いずれも4月号で紹介する)。ともに初ノミネートだが,結婚45年の老夫人を上品に演じた70歳のC・ランプリングと,誘拐され7年間も監禁された若い母親を熱演した26歳のB・ラーソンは対照的な存在である。
 この2人なら,将来性のあるB・ラーソンを推すが,大本命のケイト・ブランシェット(『キャロル』)が,2度目の受賞というハンデを押しのけて選ばれると期待している。かつてのメリル・ストリープのように今後も毎年のようにノミネートされ,大女優の道をひた走ることだろう。
『ルーム』は,他に作品賞,監督賞(レニー・アブラハムソン),脚色賞の3部門にもノミネートされているが,脚色賞の再有力候補だと予想しておこう。

 
 
 
【追記2】 結果を振り返って

(2016年3月1日記)

 
 ■ 8部門は概ね的中
◎が受賞:監督賞,主演男優賞,助演男優賞,脚本賞,撮影賞
 対抗○を挙げた部門もあるので完全的中とは言えないが,本命◎が受賞だから悪くない。
★が受賞:美術賞,長編アニメ賞
 「願望」よりも,「穿った予想」の方が勝ったので,予想能力はあったことになるが,喜んでいいのか???
☆が受賞:作曲賞
 ノミネート全5作品を観た訳でなかったので,◎でなく☆にしてしまったが,これだと惚れ込んだ1作品しか挙げなかったので,「的中」の部類に数えていいだろう。

■ 完敗の4部門:作品賞,主演女優賞,助演女優賞,視覚効果賞
 今年の主演&助演女優賞は難しかった。主演女優賞に後追いで,「ブリー・ラーソン」の名前も出したが,やはり「願望的予想」は外れてしまった。助演女優賞は,誰が受賞してもおかしくない接戦だったと思う。
 作品賞はまたしても,ゴールデングローブ賞受賞作品にして,最多12部門ノミネートの「大本命」を避けるという,アカデミー賞恒例のひねくれ投票結果になってしまった。脚本賞の本命に挙げたように『スポットライト 世紀のスクープ』は良作だと思うが,それなら,作品賞,監督賞は同一作品にするか,分けるなら,逆のパターンであったと思う。他の会員は大本命に入れるだろうと思い,自分は通ぶって別作品に入れようとするから,結果として最近ほとんどこういうパターンになるのだろう。やっぱり,ひねくれジジイ達の集まりだ。
 そして見事な完敗は,当欄が専門とする視覚効果賞部門だ。受賞作『Ex Machina』は異色作品とも,良質のSF作品とも聞いていたが,本邦未公開であり,今後の公開予定もない。当然試写会もないから,これじゃ当てようがなく,手も足も出ない。完敗というより,不戦敗に近い。

 
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