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O plus E誌 2015年7月号掲載
 
 
マッドマックス 怒りのデス・ロード』
(ワーナー・ブラザース映画)
      (C) 2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [6月20日より新宿ピカデリー他全国ロードショー公開中]   2015年5月20日 TOHOシネマズ梅田[完成披露試写会(大阪)]
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  砂漠でのバトルは,ただただ圧巻。マッド度もMax。  
  かつての人気シリーズが,もの凄いパワーで復活した。言うまでもなく,豪州出身のメル・ギブソンの出世作となったバイオレンス・アクションの傑作シリーズである。過去の3作は1979年,1981年,1985年の公開だから,既に30年以上が経過している。その割には意外にも,若い世代に名前が知られているのは,TVで何度か放映されているのと,人気コミック&アニメ「北斗の拳」が大きな影響を受けた作品と認知されているからのようだ。その「北斗の拳」も今や伝説的存在である。
 本シリーズが本当に復活するとは思わなかった。2003年に『マッドマックス4』の製作発表があったが,それが頓挫してしまった。『インディ・ジョーンズ』シリーズの4作目(08年7月号)は19年ぶりに登場したが,老いたハリソン・フォードの姿を観ると,もはやメル・ギブソンに,あのとてつもないカースタント映画の主役は無理だと感じた。彼自身も再出演に興味を示さなくなったようで,懸念の4作目は続編ではなく,出演者も時代設定も一新したリブート作として計画された。この最新作は2012年にアフリカのナミビアで撮影されたというが,そのクランクアップ後,2年半も経っての完成である。再撮影が国際情勢に翻弄され,難産だったからのようだが,5作目以降の製作も既に進行しているようだ。
 さて,新シリーズでマックス・ロカタンスキーに抜擢されたのは,トム・ハーディ。『ダークナイト ライジング』(12)の悪役ぶりが鮮烈で,いま最も輝いている男優だ。これから数作の主役を張るには,好いキャスティングだと感じた。驚いたのが,監督である。リブートとなると,原シリーズの生みの親ジョージ・ミラーは製作に周り,若手監督を起用するのかと思いきや,何と自ら監督・(共同)脚本を務めている。それだけ思い入れのある再シリーズ化なのだろう。
 リブートといっても,物語を一からやり直すではなく,傑作『マッドマックス2』(81)に似た設定と世界観で,物語が展開する。即ち,核戦争後の荒廃した地球が舞台で,水とガソリンを求めて犯罪が横行する荒野に,妻子を失って絶望したマックスが再登場する。
 敵役は,1作目で暴走族の頭を演じたヒュー・キース=バーン。本作では,砂漠を恐怖と暴力支配する軍団の長イモータン・ジョーを演じる。ヒロインは,オスカー女優のシャーリーズ・セロン。ジョーの右腕だったが,マックスと組んで反乱を起こす女戦士フュリオサを演じている。ヒロインというより,もう1人のマッドマックスで,坊主頭(スキンヘッドでなく,五分刈り程度),片腕の汚れ役で登場し,激しいアクションも見事にこなしている。事実上の主演と言ってもいい。彼女と共に戦う全身白塗りの男ニュークス役は,『ウォーム・ボディーズ』(13年9月号)で心優しいゾンビ青年を演じたニコラス・ホルトだ。この白塗りも印象的で,彼の代表作の一つとなることだろう。
 予告編も凄まじかったが,それをそのまま全編に拡大したバイオレンス・アクションの連続だ。全く,息をつく暇もない。以下,当欄の視点からの見どころである。 
 ■ とにかく砂漠での撮影が凄まじい。ここまでほぼ全編を砂漠内でのバトルにした構想も珍しければ,アフリカ南西部のナミビアでの6ヶ月に及ぶ撮影というのも,誰も真似できない。スタッフは総勢1,700人,常時約1,000人が砂漠にいたというから,その規模に呆れる。そこでの砂塵あり,爆発あり,激しいカー・アクションの中に,竹槍状のポールに乗った人物が配されている(写真1)。過去3作品を成功させた監督以外に,こんなユニークな企画を実行に移せる人物はいない。
 
 
 
 
 
写真1 ナミビア砂漠での撮影,本物ゆえの大迫力
 
 
  ■ 本シリーズのウリは,4輪車,2輪車入り乱れてのカー・バトルだが,本作でもそのマッド度は全開だ。5月号の『ワイルド・スピード SKY MISSION』で「史上最大級のカー・アクション」と書いたが,どちらが上かといえば……。あちらは正統派のカー・チェイス中心で,こちらはゲテモノ・カーでのバトルが最大級と言っておこうか。それにしても,よくぞこんな奇妙奇天烈なクルマを150台もデザインし,製作したものだ(写真2)。2台のキャデラックを上下合体させ,V16エンジン,高さ2mのダブルタイヤを備えたジョーの「ギガホース」,ファーゴ製トラックを改造し,後部に捕鯨用の銛と火炎放射器を取り付けた戦闘車「ビッグフット」,6輪駆動,18輪車で巨大燃料タンクを備えたフュリオサの「ウォー・タンク」……,といった具合だ。登場するクルマの仕様一覧を片手に,再度この映画をじっくり眺めてみたい。
 
 
 
 
 
写真2 こんな4輪車,2輪車を150台も準備したという
 
 
  ■ 「CGでなく,すべて本物」というのは上記のクルマのことで,CG/VFXは全編でしっかり多用されている。まずは,ジョーの軍団の要塞にある砦で,いくら本物指向でも,こんなデザイン,こんなスケールの岩山は,VFXの産物でしか実在しない(写真3)。フュリオサは左前腕がなく,メカが露出した義手はCG合成であることはすぐ分かるはずだ。その他,激しい砂塵,竜巻は勿論CGの産物で(写真4),薄暮シーンも昼間での撮影をデジタル処理で暗くしたものだろう(写真5)。クルマが破壊され,パーツが手前に飛んでくる場面は,3D上映用の構図だが,本作を敢えて3D化した意義は感じられなかった。  
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写真3 武装集団の砦シタデルは,VFXで強化して描写
 
 
 
 
 
 
 
写真4 さすがに砂塵や竜巻はCGを描き加えた
 
 
 
 
 
写真5 こちらは撮影後のカラーコレクションで夜のシーンに
(C) 2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED
 
 
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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