head
titlehome略歴表彰学協会等委員会歴主要編著書論文・解説コンピュータイメージフロンティア
| TOP | CIFシネマフリートーク | DVD/BD特典映像ガイド | 年間ベスト5&10 |
 
title
 
O plus E誌 2015年4月号掲載
 
 
バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』
(20世紀フォックス映画)
      (C) 2014 Twentieth Century Fox
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [4月10日よりTOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー公開予定]   2015年2月12日 GAGA試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  脚本も撮影も緻密な計算の上だが,作為も目立つ  
  先頃(日本時間2月23日)発表された第87回アカデミー賞の作品賞受賞作である。今年の最多タイの9部門にノミネートされ,作品賞の他に,監督賞,脚本賞,撮影賞の計4冠に輝いている。力作であると思ったが,先月号の予想では,作品賞,監督賞には他作品を推し,主演男優賞,助演男優賞は本作を本命にした。結果は,見事にその真逆だった。作品賞候補作8本の内,既に7本を観たが,他の6本にはを与えながら,本作だけが違う。力作,熱演と認めつつも,やはり個人的に好きになれない映画ゆえに,予想も外れたのだろう。
 本作の原題は『Birdman or (The Unexpected Virtue of Ignorance)』で,邦題は括弧までそのまま踏襲している。目を惹くことを意図した,この奇妙な題ゆえ,早くからこの映画の存在を知っていた。鳥の嘴の形をしたマスク姿の横顔のイラストから,またまた新手のスーパーヒーローもので,これは当欄の守備範囲内だなと期待した。名前やマスクの形状から「バットマン」のもじりだなと感じたが,シリーズ3作だけに主演して,その後20年間,鳴かず飛ばずで失意の俳優が主人公と聞けば,もうこれは『バットマン』シリーズのパロディと断定せざるを得ない。その上,マイケル・キートンが主演だと知り,一層驚いた。よくぞまあ,そのものズバリの役をオファーし,当人もそれを引き受けたと……(実際は,M・キートンは2作しかバットマンを演じていない)。
 監督・脚本は,『21グラム』(03)『バベル』(07年4月号)のアレハンドロ・G・イニャリトゥ。そう言えば,『バベル』も緻密に計算された佳作と評価しつつも,好きになれない映画であった。当時「どうしても作り手の作為を感じてしまう。余韻は残るが,映画を観ながらの素直な感情移入はない」と評しているが,本作はそれ以上に作為の塊りのような作品である。
 主演のM・キートンは,今は売れない俳優だが,脚色・演出・主演でブロードウェイ・ミュージカルの舞台を目指すという役柄だ。時折,訣別したはずの「バードマン」が彼の前に現われる妄想と現実の狭間を,鬼気迫る演技で熱演している。まさにプロの俳優の演技だ。
 助演のエドワード・ノートンは,代役で登場し,主役を圧倒する演技を見せるという役柄だが,こちらもその役通り,実力通りの好演だ。そして,主人公の娘サム役には,筆者のお気に入りのエマ・ストーン。短評欄の『マジック・イン・ムーンライト』にも出演している。『アメイジング・スパイダーマン』シリーズのヒロインは2作で終わってしまったが,こうして様々な映画で観られるのは,喜ばしい限りだ。
 さて,CG/VFXの出番はといえば,代表的カットとして再三登場している市街地での空中浮揚(写真1)の他,映画の冒頭では,麻原彰晃ばりの座ったままでの空中浮揚(写真2)も見られる。その他,ビルからのジャンプ,背後にバードマンが忍び寄る単純な合成シーン(写真3)や,一瞬だけだが,恐ろしい怪鳥が登場するシーン(写真4)もある。いずれも,簡単なCG/VFXによる妄想シーンだ。
 
 
 
 
 
写真1 NY市街地での浮揚シーンは代表的カット
 
 
 
 
 
写真2 このシーンから始まり,延々とロングテイクが続く
 
 
 
 
 
写真3 このマスク姿は懐かしい(バットマンには羽はなかったが)
 
 
 
 
 
写真4 ほんの一瞬だが,あっと驚く怪鳥も登場する
(C) 2014 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved.
 
 
  むしろ,特筆すべきは,デジタル技術を駆使した長回しの(ように見える)カメラワークである。噂に聞いていたので,10分以上,20分近いテイクかと想像したのだが,何と,ほぼ全編を1テイクに思わせる試みであった。厳密に言えば,最初から1時間45分前後までを1テイクに擬していて,そこで明らかなカット割りが入り,残る約10分がまた1テイク風である。
 勿論,これはデジタル技術で繋いだフェイクだ。廊下や階段を移動中に壁や床を写した部分で接続していることは素人目にも分かる。登場人物の背中がカメラを塞ぐ部分で繋いでいることも,すぐ分かるだろう。その他,変形や合成等の様々なデジタル処理を駆使しているが,それでも各演技者には,相当長い演技を強いたことは間違いない。ステディカムで演技者を追い,360°回転するカメラワークも多用している。
 題名同様,映像も個性的であり,話題にはなるが,このような外連は好きになれない。筆者の場合,映像を追うだけで目が疲れ,物語に集中できなかった。
 
  ()
 
 
 
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
  Page Top  
  sen  
 
back index next