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O plus E 2021年11・12月号掲載
 
 
ミラベルと魔法だらけの家』
(ウォルト・ディズニー映画)
      (C)2021 Disney
 
  オフィシャルサイト[日本語]    
  [11月26日よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー公開予定]   2021年11月15日 大手広告試写室(大阪) 
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています)  
   
  大ヒットが予感されるディズニーアニメの60作目  
  伝統のディズニーアニメの第60作目である。原題はシンプルな『Encanto』。原題と邦題を見比べて,筆者はこれは力作で,大ヒットするのではないかと予想している。60作の区切りで制作にも,広報宣伝にも力を入れていることも考えられるが,題名の組み合わせから来る「予感」と言った方が正確かも知れない。
 元々『ピノキオ』(40)『ダンボ』(41)『バンビ』(42)『シンデレラ』(50)等は,英和ともに単純であったし,『アラジン』(92)や『ムーラン』(98)は最近公開された実写版も同じ単純な邦題を踏襲している。ところが,『Moana』の邦題は『モアナと伝説の海』(17年3月号)に,ピクサー作品の『Luca』は『あの夏のルカ』(21年Web専用#3)となり,主人公名に作品内容を付加するようになってきた。実写映画でも,洋画の原題は主人公名だけのことがしばしばあるが,その邦題は内容を的確に示す魅力的な題名を付ける傾向がある。アニメ映画であっても,その方が好ましいと思う。
 ところが,本作は原題には人名でない中身を表す単語であるのに,邦題側が「主人公名+α」を採用している。過去のこのパターンはと言えば,
 『Tangled』=『塔の上のラプンツェル』(11年3月号)
 『Frozen』=『アナと雪の女王』(14年3月号)
で,いずれもCGアニメ史に残る大傑作,大ヒット作であった。
 このパターンは,ピクサー作品が先で,
 『Ratatouille』=『レミーのおいしいレストラン』(07年8月号)
 『Up』=『カールじいさんの空飛ぶ家』(09年12月号)
 『Brave』=『メリダとおそろしの森』(12年8月号)
という訳である。原題は内容を簡潔に要約した単語で,邦題はより魅力的な題にしていることが分かるだろう。
 本作の原題の「Encanto」は,「魅力」「魔力」を意味するスペイン語である。英語では「Enchanted」になる。スペイン語にしたのは,舞台となるのが南米コロンビアであることも1つの理由だろうが,同じディズニー映画で,『Enchanted』はエイミー・アダムス主演の『魔法にかけられて』(08年3月号)で使ってしまったからではないかと思う。魔法の国はセルアニメ調で,現実世界は実写で描いた作品であった。
 さて,本作の主人公はミラベル・マドリガルで,マドリガル家はコロンビアの奥地の不思議な家「エンカント」に住んでいる(写真1)。ここには,ミラベルの祖母,両親,姉妹だけでなく,叔父叔母や従姉弟たちも住んでいるので,結構な大家族である(写真2)。この家で生まれたマドリガル家の子供には,5歳になると1人1人に違った「魔法の才能(ギフト)」が家からプレゼントされる。皆が個々の魔法パワーを使うので,「魔法だらけの家」なのである。

 
 
 
 
写真1 これが魔法だらけの家「エンカント」。カラフルだ。 
 
 
 
 
 
写真2 そこに住む個性的なマドリガル家の面々
 
 
  ところが,どういう訳か,ミラベルだけにこのギフトが授けられなかった。それでも幸せに暮していたミラベルだが,この家の魔法が危険に晒されていることが判明し,普通の女の子のミラベルだけが危機を救える希望となる……。その秘密や救済法は観てのお愉しみだ。
 以下,この映画の見どころと感想である。
 ■ とにかく,この魔法パワーの描写が楽しい。音楽に合わせて床や引き出しが動き,階段が滑り台のように形を変える(写真3)。長女のイサベラ姉さんは家中をカラフルな花で飾って幸せな気分にさせてくれる(写真4)。次女のルイーサ姉さんが怪力で煉瓦の橋を持ち上げるのには驚かされる(写真5)。「癒しの魔法」や「動物の魔法」も登場するが,どれもよく練られている。実写でも映画でもこの種の魔法がCG/VFXで描けるが,フルCGアニメでの誇張した表現の方が楽しさの表現に合っていると感じた。
 
 
 
 
 
写真3 音楽に合わせて床までがダンスする
 
 
 
 
 
写真4 家中をカラフルな花で飾るイサベラ姉さん
 
 
 
 
 
写真5 レンガの橋を持ち上げる怪力のルイーサ姉さん
 
 
  ■ 従弟のアントニオには「動物のギフト」があり,動物たちと会話ができる(写真6)。この動物たちのデザインと質感のバランスが絶妙だ。今や,実写と区別はつかないくらい動物たちをCGでリアルに描けることは『ジャングル・ブック』(16年8月号)等で証明済みだが,フルCGアニメでそこまでする必要はない。キャラクターとしての可愛さは残し,皮膚や毛は少しリアルに描いている(写真7)。同じように,近くの町のシーン,特に夜の光景が絶品だ。写実性は追求せず,それでいて質感は豊かだ。強いて言えば絵画調だが,見たこともない画風だ。
 
 
 
 
 
写真6 アントニオは動物たちと会話ができる 
 
 
 
 
 
写真7 動物たちのデザインと質感のバランスが絶妙
(C)2021 Disney. All Rights Reserved.
 
 
  ■ ミュージカル・ファンタジーと称するだけあって,歌唱シーンが躍動的だ。1曲歌っている間に,映像が目まぐるしく変化する。カメラは縦横に動き,シーンの切り替えも凄まじい。その切り替えや映像の動きがラテン音楽のリズムと見事にマッチしている。今まで見たこともないダイナミックなCG映像だ。よくぞここまでデザインしたものだと感心する。CGアニメも新しい時代に入ったと感じさせてくれる映画だった。
 
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
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