head
titlehome略歴表彰学協会等委員会歴主要編著書論文・解説コンピュータイメージフロンティア
| TOP | CIFシネマフリートーク | DVD/BD特典映像ガイド | 年間ベスト5&10 |
 
title
 
O plus E誌 2014年3月号掲載
 
 
アナと雪の女王』
(ウォルト・ディズニー映画)
      (C) 2014 Disney. All Rights Reserved
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [3月14日よりTOHOシネマズ日劇他全国ロードショー公開予定]   2014年1月21日 TOHOシネマズ梅田[完成披露試写会(大阪)]
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  CG製の雪と氷が美しい絶品のディズニー・アニメ  
  ディズニー長編アニメの53作目である。記念すべき50作目は3年前の『塔の上のラプンツェル』(11年3月号)で,素晴らしいフルCGアニメだった。当欄では「筆者は50作品中,丁度半分の25作品を観ている。その中で最も美しい作品であると断定できる」と絶賛するとともに,「この映画がアカデミー賞長編アニメーション部門にノミネートされなかったのは合点がいかない。アカデミー会員の目は今年も節穴か」と憤っていた。本作は,その50作目を超える佳作で,ディズニー・アニメ史に残る記念碑的作品だ。ゴールデングローブ賞を獲得した上で,アカデミー賞の大本命にもなっている。
 何が素晴らしいかと言えば,トータルな企画であり,洗練された製作能力だろう。脚本,キャラ設定,美術,音楽のいずれも秀逸であり,雪の表現では最新のCG技術も駆使している。中身も充実しているが,広報宣伝も上手い。グリム童話の「髪長姫」が原作の『Tangled』を『塔の上の……』と名付けたのと同様に,アンデルセン童話の「雪の女王』を原作とした『Frozen』に,覚えやすく味のある邦題を与えている。エルサとアナの姉妹の物語だといいながら,エルサはなぜ出て来ないのかと思ったら,彼女が「雪の女王」だった。ただし,原作とは全く異なる人物設定であり,アナは原作には全く登場しない。要するに,アンデルセン童話が原作という名目を使い,童話本の邦題を映画の邦題にも織り込み,かつ実質的な主役のアナの名もしっかり刻んでいる訳だ。
『白雪姫』(37)に始まるセルアニメ史を築き上げたディズニー・アニメーション・スタジオは,CGアニメでは明らかに後発組だった。同技術の開拓者ピクサー社を傘下に収め,御大ジョン・ラセターが本家アニメ作品の企画にも参画するようになってから,急速にCG技術にも磨きをかけて来たことは,当欄で再三述べた。47作目『ルイスと未来泥棒』(07年12月号) まではまだ手探り状態だったが,48作目『ボルト』(09年7月号)では完全に3D-CG技術を手の内に入れていた。それでいて,49作目『プリンセスと魔法のキス』(10年3月号)では,意図的にセル調アニメに戻すかと思えば,52作目『シュガー・ラッシュ』(13年4月号)ではゲーム風画面とキャラを多数登場させるという変幻自在さである。企画力,構想力は,さすが老舗ディズニーだ。
 この力作53作目はと言えば,50作目以来のお得意の「プリンセスもの」であり,かつミュージカル仕立てである。しかも,どの歌曲も上質で,そのまま舞台ミュージカルになりそうな出来栄えだ。雪の女王・エルサは,何物も瞬時に凍らせてしまう魔法の力の持ち主だが,彼女が所謂「魔女」役かと言えば,必ずしもそうでないところが本作のミソだ。(詳しくは書けないが)30作目『美女と野獣』(91)のビースト的な役柄とだけ言っておこう。そして,雪の女王の魔力で瀕死の状態となったアナを救うのは……。誰もが予想する場面を,さらりと外すのが本作の魅力の1つでもある。
 監督は,これがデビュー作となるジェニファー・リー。ディズニー・アニメ初の女性監督で,姉妹の呼吸は,女性ならではのものと思わせる。以下は,当欄の関心事,CGとビジュアルに関する要点である。
 ■ 主人公アナの顔は,『塔の上の…』のラプンツェルに似ている(写真1)。セルアニメ時代の白雪姫,シンデレラ,オーロラ姫等の正統派美女でないのを嘆く声も聞かれるが,静止画像でなく,映画中での方が良く見える。3D-CG,それも立体(S3D)上映向きにデザインされたルックスで,筋肉モデルで表情を付けやすく,そのまま人形グッズ化しやすくなっている(写真2)。脇役キャラ,雪だるまのオラフとトナカイのスヴェンもしかりだ。
 
 
 
 
 
写真1 髪の長さは普通だが,ラプンツェルに似ている
 
 
 
 
 
写真2 ルックスも背景も3D-CG向きで,S3Dを意識してデザインされている
 
 
  ■ ビジュアル面では,エルサのキラキラ輝くドレスや氷の宮殿の描写が絶品だ(写真3)。アレンデール王国自体も北欧風のデザインで,しっかり描かれている(写真4)。歌曲以外の壮大な音楽も,そのイメージにぴったりだ。
 
 
 
 
 
 
 
写真3 雪の女王エルサは,ドレスも城もクール
 
 
 
 
 
写真4 アレンデール王国は北欧風で,これも立体感を重視したデザイン
 
 
  ■『塔の上の…』で長い髪の毛の表現に費やされたCGパワーは,本作では様々な雪と氷の表現に向けられている。既に昨年夏,SIGGRAPH 2013の特別セッションで,個々の表現技術の研究成果を聞いていたが,実際の映画で,新雪,樹氷,氷柱,吹雪,雪崩等,至るところでその威力を目にするところとなった(写真5)。静的な表現だけでなく,エルサのパワーで凍らせてしまう動きと音の表現力にも感嘆する(写真6)
 
 
 
 
 
写真5 どのシーンも,雪原や樹氷の表現が素晴らしい
 
 
 
 
 
写真6 氷化してしまう表現は,動きや音も絶品
(C) 2014 Disney. All Rights Reserved.
 
 
  ■ 最大級の賛辞は贈ったものの,最大の不満は(大阪での)完成披露試写が2D版だったことだ。この映画は絶対に3D(できればIMAX)で観るべきだ。
 
  ()
 
 
 
  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
  Page Top  
  sen  
 
back index next