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O plus E誌 2021年1・2月号掲載
 
 
『ミッドナイト・スカイ
(Netflix )
      (C)2020 Netflix
 
  オフィシャルサイト[日本語]    
  [2020年12月23日よりNetflixにて独占配信中]   2021年1月2日 Netflix映像配信を視聴
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  ジョージ・クルーニー監督・主演のスペースSF  
  劇場公開映画は公開日前の近い号で紹介するのが普通だが,ネット配信映画の場合はマスコミ試写がなく,配信開始後にならざるを得ない。その半面,劇場用のように上映期間が限られていなくて,かなりの長期間視聴可能である。このため,良作とあらば,配信後かなり日数が経っていても,当欄で取り上げるようにしている。
 新年早々の号のトップバッターを何にしようか思案した結果,昨年は前年11月公開のNetflixオリジナル映画『アイリッシュマン』(20年1・2月号)を選んだ。コロナ禍の真っ只中で新年を迎えた本号は尚更で,同じくNetflix作品を選んだが,(20Web専用#6)で紹介してしまわず,本号のためにこの映画をキープしておいた。
 ジョージ・クルーニー監督・製作・主演のSF映画で,宇宙探査が含まれる「スペースSF」である。当欄が最も扱いたいジャンルであり,近年,VFX満載の秀作が多い。ちょっと振り返っただけでも,『ゼロ・グラビティ』(13年12月号)『インターステラー』(14年12月号)『オデッセイ』(16年2月号)『パッセンジャー』』(17年4月号)『アド・アストラ』(19年9・10月号)が挙げられる。
 本作は過去作品のすべてを凌駕するほどではないが,CG/VFX的にも上記の優秀作と比べて論じるに足るレベルに達している。『ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒』(20年11・12月号)『ジングル・ジャングル 〜魔法のクリスマスギフト〜』(同Web専用#6)と同様,製作コストがかかる作品をNetflixがオリジナル映画として次々とリリースしてくれるのは,喜ばしい限りだ。
 J・クルーニー主演作のSFと言えば,上記の中の『ゼロ・グラビティ』を思い出す。サンドラ・ブロックを励ましつつ宇宙空間に消えていった宇宙飛行士だった。監督としては,同作に匹敵する作品に仕上げたかったに違いない。ただし,本作では宇宙飛行士役ではなく,地球上から宇宙探査計画を見守る科学者の役である。原作は,2016年に出版されたリリー・ブルックス=ダルトンのSF小説『世界の終わりの天文台(原題:Good Morning, Midnight)』で,宇宙船内外と同等以上に地球上での出来事にも重きが置かれている。
 時代は2049年,映画は北極近くの陸地から始まる。核戦争の影響なのか,地球は汚染され,人間が住める状態ではなくなり,人類滅亡の危機が迫っていた。残る僅かな期間の生存のため,地下基地等に向かう人々とは別に,主人公のオーガスティン・ロフトハウスは独りでバーボー天文台(写真1)に残ることを選択する。一転,女性宇宙飛行士サリーの夢のシーンが登場する。K-23なる宇宙探査ミッションの遂行中で,続いて大型宇宙船アイテル内の描写へと移って行く。
 
 
 
 
 
写真1 これが北極に建設されたバーボー天文台
 
 
  オーガスティンが地球上の危機を伝え,地球に戻って来ないようにアイテル号と交信を試みる。また,北極にただ1人のはずだったのに,不思議な少女アイリスが現れる。彼女がなぜそこにいるのかも本作の鍵である。
 ヒロインのサリー役は,『ビリーブ 未来への大逆転』(19年3・4月号)『イントゥ・ザ・スカイ 〜気球で未来を変えたふたり〜』(20年1・2月号)のフェリシティ・ジョーンズ。最近,頻繁に主演作を取り上げるように,売れっ子女優であり,本作でも存在感は抜群だ。その他の助演陣には,カイル・チャンドラー,デミアン・ビチル,デヴィッド・オイェロウォ等が登場する。
 以下,当欄の視点での見どころ解説である。
 ■ 北極を想定したシーンはアイスランドで撮影されたが,猛吹雪の中での撮影の過酷さはメイキング映像からも想像できる。プレビズを多用した撮影計画が活用され,現地でそれを確認しながらの撮影だ。天文台の建物は勿論CG描写だろう。極地の天文台ゆえ,さほど魅力的な屋内設備は描かれていない。それでも,SF映画定番のTableTop型3Dディスプレイは登場する(写真2)。地形だけでなく,雲まで描いているのがユニークだ。
 
 
 
 
 
写真2 雲まで含めて地形を卓上に3D表示
 
 
  ■ 宇宙船アイテルのデザインが斬新だ。『オデッセイ』や『パッセンジャー』にも大型宇宙船が登場するが,アイステル号は乗務員6名にしては大型である。隕石の衝突で一部が破壊されるシーンは,類似作品に負けないクオリティで描かれている(写真3)。船内設備の描写は,まずまずの平均レベルで,特筆すべきものはない(写真4)
 
 
 
 
 
 
 
写真3 宇宙船アイテルは斬新なデザイン。隕石の衝突で破損するシーンも上々(下)
 
 
 
 
 
写真4 アイテル内部の設備。特に新しく感じる物はない。
 
 
  ■ YouTubeでも見られるメイキング映像で自慢げに語られているのは,負傷したマヤが出血し,宇宙服から飛び出した血液が飛沫となって空中に浮ぶシーンである(写真5)。好い出来映えだ。宇宙飛行士3人の船外での作業の描写も充実していた(写真6)。各乗務員は宇宙服もその動きも丸ごとCGで描かれ,ヘルメット内に見える顔だけがVFX合成されているようだ。
 
 
 
 
 
 
 
写真5 出血した血液飛沫が無重力で船内に浮遊する。
 
 
 
 
 
 
 
写真6 船外活動は乗組員も含めてフルCG描画
 
 
  ■ 予告編の中に描かれていたシーンで,楽しみにしていた光景がある。木星の衛星から見上げる空には,大きな木星が浮んでいる(写真7)。これも好い出来だ。本編中のどこで登場するかは観てのお愉しみとしておこう。本作のCG/VFXの主担当はILMで,他にFramestore,One of Us, Nviz等が参加している。
 
 
 
 
 
写真7 衛星K-23の空には大きな木星が見える
(C)2020 Netflix
 
 
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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