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O plus E誌 2018年9・10月号掲載
 
 
ザ・プレデター』
(20世紀フォックス映画)
      (C) 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [9月14日よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー公開中]   2018年9月12日 GAGA 試写室(大阪)
       
   
 
スカイライン-奪還-』

(REGENTS&ハピネット配給 )

      (C)2016 DON'T LOOK UP SINGAPORE, PTE. LTD
 
  オフィシャルサイト[日本語]    
  [10月13日より新宿バルト9他全国ロードショー公開予定]   2018年9月??日 サンプルDVD観賞  
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  この秋公開のエイリアン登場のVFX大作2本  
  次も当欄の定番メニューの1つだが,久々にエイリアンもの2本の揃い踏みである。片や,SFホラーの大スターである「プレデター・シリーズ」の最新作であり,世界同時公開だ。もう一方は,同シリーズと深い関係をもつヒット作『スカイライン ―征服―』(11年6月号)の続編で,こちらも期待大だ。
 実はもう1本あるのだが,ここで取り上げない理由を書けない。短評欄を見て,想像して頂こう。
 
 
  プレデターはパワーアップし,VFX利用も進化した  
  2作を括る上で便宜上「エイリアン」と書いたが,宇宙人戦士プレデターを余りそう呼びたくない。その名称は,名作『エイリアン』(79)に端を発し,人間に寄生して成長する生命体の代名詞のようになっているからだ。幼体から成体への成長段階に応じて,フェイスハガー,チェストバスター,ゼノモーフ等の固有名詞まで与えられている種である。その「エイリアン」と「プレデター」を2大モンスターとして対決させた『エイリアン VS. プレデター』(05年1月号) と続編『AVP2 エイリアンズ VS. プレデター』(07)が作られたゆえに,プレデターを敵の名前で呼ぶのは避けたい訳である。
 当欄の読者なら,プレデターが何たるか,これまでの作品もご存知のはずであるが,念のために書いておこう。英単語「predator」の意味は,単に他の動物を殺して食べる「捕食者」なのだが,A・シュワルツェネッガー主演の『プレデター』(87)では,異星から来た知的生命体であり,抜群の戦闘能力がある狩人,戦士として描かれていた。その後,続編『プレデター2』(90)が作られ,上記AVPシリーズ2作品を経て,単独の『プレデターズ』(10)に戻り,本作に至っている。即ち,AVPを含めると6作目,単独シリーズでは4作目に当たる。
 原題も邦題も,副題を付さずに「ザ」を冠しているから,これぞ代表作という意気込みが感じられるが,シリーズをリセットするリブート作品ではない。元来,光学迷彩で姿を消し,サーモグラフ(写真1)で他の生命体を察知し,破壊力抜群のプラズマ・キャノンを駆使する戦闘能力を備えているが,本作では,異種交配を重ねて進化し,大幅にパワーアップしているという設定である。
 
 
 
 
 
写真1 サーモグラフで捕食する対象を察知する
 
 
   監督は,『アイアンマン3』(13)のシェーン・ブラック。何と,彼は1987年の第1作で,プレデターに最初に殺される兵士役だったという。主な登場人物は,元特殊部隊隊員のクイン・マッケナ(ボイド・ホルブルック),その息子ローリー(ジェイコブ・トレンブレイ)だが,助演陣も含め,あまり著名な俳優は起用していない。
 以下,当欄の視点での解説と感想である。
 ■ ジャングルに登場するイメージが強いが,本作は宇宙から始まり,写真2の宇宙船が地球に到来し,メキシコに墜落する。次項のマザーシップと比べるとシンプルな形状だが,操縦室内の設備や機能は超ハイテクだ。乗っていたプレデターが捕らえられ,甲冑類が剥がされて,米国のラボ内で研究対象となっている。このラボのビジュアルデザインがカッコいい(写真3)。マスクを外した顔が頻出するのも本作の見どころの1つだ(写真4)
 
 
 
 
 
写真2 本作では,この宇宙船で地球にやって来る
 
 
 
 
 
写真3 収容したプレデターの生体機能をラボで検査中
 
 
 
 
 
 
 
写真4 フェイスマスクなしの醜悪な顔での登場が続く
 
 
  ■ 驚きは,フェイスマスク,前腕のガントレット等々に,想像以上のハイテク機能が備わっていたことだ。そうした装備品を,クインが自宅に送り,天才少年のローリーがそれらを起動してしまったことから,その情報を受信した新たな宇宙船が地球にやってくる。戦闘シーンは言うまでもなく,ラボを脱出したプレデターが装備を再装着するのも,終盤でもう一段階すごい甲冑スーツやフォースフィールドを描写するのにも,CG/VFXのパワーを最大限に活用している。
 ■ 通常のプレデターは身長2.3m(写真5),新たに加わる「究極のプレデター」は3mの想定である(写真6)。これらはどうやって描いたのだろう? 過去作品では,20kg以上もあるボディスーツを着用して撮影していたはずだが,最近の技術をもってすれば,普通のラバースーツで撮影し,CGを描き加える手法で半分以上置き換えていてもおかしくはない。光学迷彩で姿を隠すシーンも好い出来映えだ。CG/VFXの主担当は『エイリアン:コヴェナント』(17年9月号)も担当したMPCで,クオリティは高い。他に,Atomic Fiction, Rising Sun Pictures,Renault VFX,Hydraulx等も参加している。
 
 
 
 
 
写真5 身長2.3mでW・ゴールドバーグ似の髪形
 
 
 
 
 
写真6 新登場の「究極のプレデター」,身長は3m
(C) 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation
 
 
  続編は,一変してアジア系のアクション映画風に  
   もう1本の前作は,通常の1/10の製作費ながら,醜悪な異星人を続々と登場させて,我々の度肝を抜いた。監督は上述の『AVP2』のグレッグ&コリン・ストラウスの兄弟だった。異星人描写は熟知している上,中堅VFX会社Hydraulxの経営者であるから,撮影から編集まで丸ごと同社だけで完結させていた。CG/VFXも原価であるゆえ,やりたい放題,描きたい放題だった訳である。本作で彼らは製作に回り,前作で脚本を担当したリアム・オドネルに初監督の機会を与えている。それでも,Hydraulx社全面支援の方針は同じだが,前作の成功により,製作費はアップしたようだ。
 続編ではあるが,登場人物は一新されている。そりゃそうだ,全員宇宙船内に吸い上げられ,「パイロット」なるエイリアンに脳を吸い取られたのだから。てっきりそれで人類は絶滅したのかと思いきや,難を逃れて生き残った僅かな地球人が反撃を開始する物語である。
 前半は前作に引き続きLA市内での闘いであり,中盤で制御を失った宇宙船が内戦状態のラオスに着陸したため,同地に舞台を移す。後半は,すっかりアジア系アクション映画に転じる。主演は,LA市警の刑事のマーク役のフランク・グリロだ。『キャプテン・アメリカ』シリーズで悪役を演じていたらしいが,余り見覚えはなく,前作同様,他も無名俳優ばかりだ。
 以下,当欄の視点での評価と感想である。
 ■ 冒頭から前作でも見かけたマザーシップがLA上空に登場し,続編であることを強調する(写真7)。一部の映像は使い回しているのかも知れないが,宇宙船の描写は若干精緻化しているようにも見える。まだ人間が生きているとは思わなかったが,これまた既視感のある異星人を登場させ,卒なく前半の攻防を描いている。
 
 
 
 
 
 
 
写真7 既視感のあるLA市街地上空のマザーシップ。一部は前作の映像の使い回しか?
 
 
   ■ マークらも宇宙船に乗り込み,ここで人間の脳を再利用して増産されたエイリアンと闘う。宇宙船を破壊してラオスに不時着させる。後はずっとラオス国内で,現地の反政府活動家を巻き込んで異星人たちと闘う(写真8)。なぜラオスなのか不明だが,多分,監督がアジア系アクション映画に憧れていたからだろう。本当にラオスなのか,筆者にはカンボジアの遺跡と区別がつかなかった。実際は,インドネシアに寺院のセットを組んで撮影したようだ。登場するのもインドネシア人でシラットの達人というから,アジアならどこでも良かった訳だ。
 
 
 
 
 
 
 
写真8 中盤以降は,ラオスが舞台のサバイバル戦に
 
 
   ■ 同地での闘いでも新たなデザインのエイリアンがしっかり登場する(写真9)。その点は余念がない。人間の脳を再利用して,エイリアンを増産するというアイデアも面白い。このため,姿はエイリアンだがまだ人間の心を残している人物も登場する。少し『第9地区』(10年3月号)に似ていなくもないが,全体として,エイリアンと人間の関係はユニークだと言える。人間型エイリアンの場合,着ぐるみとCGの併用のようだ。後者の場合,ラバースーツでスタントマンに演技させ,後でCGに差し替えている(写真10)。ただし,本作でアジア系アクションを採用したのが大成功であったとは言い難い。
 
 
 
 
 
 
 
写真9 新規デザインのエイリアンも続々と登場
 
 
 
 
 
写真10 生身で戦わせて撮影し,後でCGに置き換えている
(C)2016 DON'T LOOK UP SINGAPORE, PTE. LTD
 
 
   ■ 物語は,一件落着後,10年後が描かれている。前作よりは,人類に未来があるとだけ言っておこう。さらに続編が作られるなら,今度は宇宙戦だろうか。  
 
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  (本稿はO plus E誌掲載分に加筆し,画像も追加しています)  
   
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