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O plus E誌 非掲載
 
 
アイアンマン3』
(マーヴェル・スタジオズ/
ウォルト・ディズニー・
スタジオ・ジャパン配給)
      (C) 2013 MVLFFLLC. TM & (C) 2013 Marvel.
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [4月26日よりTOHOシネマズ日劇他全国ロードショー公開中]   2013年4月26日 TOHOシネマズ二条
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  娯楽大作らしく見せ場は十分,デザインもアイディアも秀逸  
  公開初日の朝に映画館で観たのだが,随分日が経ってしまい,速報の意味がなくなってしまった。他の諸用にかまけて記事を書くのを怠っていたのだが,記録として残すために,やはり書き留めておこう。
 そもそもは,5月号の締切までに試写が見られず,Webページだけの記事になってしまったため,気が緩んでしまった。日米同時公開で,大阪では完成披露試写がなかったためではない。それどころか,本作は,夏シーズンの開始となる米国の5月3日よりも早く,欧州や豪州の4月24日からは2日遅れで,GW前の4月26日に公開となっている。前作の『アイアンマン2』(10年6月号) 『アベンジャーズ』(12年9月号)は,東京まで出向いて試写を観たのだが,本作はそれすら開催されなかった。そんな前宣伝なしに十分集客できると,製作会社も配給会社も自信があったのだろう。
 初日の朝,京都のシネコンの一番大きなシアターでの観客は,40人程度だっただろうか。そりゃそうだ。GW前半の3連休の前日(金曜日)の朝に映画館にいるのは,余程のファンか筆者のような訳アリの観客だけだろう。きっと今夜からどっと混むのだろうと予想した。
 その期待通りに,興行成績は公開週も翌週も2位だった。GWの日本映画界は,お子様映画の独壇場であるから,洋画の興行成績としては立派なものである。首位は『名探偵コナン 絶海の探偵(プライベート・アイ)』に譲ったものの,『仮面ライダー×スーパー戦隊×宇宙刑事 スーパーヒーロー大戦Z』や『映画クレヨンしんちゃん バカうまっ!B級グルメサバイバル!!』を退けている。大人の観る映画では,同週公開の邦画の話題作『図書館戦争』『藁の楯 わらのたて』(13年5月号)も問題にせず,洋画ではシュワちゃんの『ラストスタンド』(同号)には大差をつけている。本シリーズ第1作『アイアンマン』(08年10月号)は,当欄の年間のベスト1だったのだが,あまり広報宣伝されず,興行成績は振るわなかった。それがこの好成績とは,昨夏の『アベンジャーズ』で一気に知名度が上がったためだろうか。毎回最新のCG技術で斬新な表現を見せてくれるだけに,当欄としては素直に喜ばしい。
 試写は観られなかったものの,配給会社からもらったポスターを早くから貼っておいたところ,何名かの訪問客から「もう,アイアンマンもお終いですか?」「3部作の完結編ですか?」と尋ねられた。そういえば,「さらば,アイアンマン」と書かれている。予告編中には,「これが最後の戦いだ」というセリフもあった。加えて,世界中の街頭やWeb上に,写真1のような画像を登場させるというのは,ちょっとやり過ぎだ。少し考えれば分かるように,こんなヒーローものの人気シリーズで,主人公が死んで完結の訳がないじゃないか。最近は,アメコミの映画化でもシリアスな内容が多いから,「あしたのジョー」のような燃え尽きたエンディングを期待しているのだろうか? それとも,『ダークナイト』シリーズのように,主人公は生き延びるが,3部作は完結というスタイルを予想したのだろうか?
 
 
 
 

写真1 このポスターは,興味をそそる誇大広告?

 
  厳密に言えば,本作はロバート・ダウニー Jr.がトニー・スターク=アイアンマンを演じる3作目ではない。多数のマーヴェル・ヒーローが登場する前述の『アベンジャーズ』でも一番目立つ存在であったので,これで4作目である。既に『アベンジャーズ2』の製作開始が報じられ,本作の上映前にその予告編まで流れるのだから,ここでアイアンマンが引退する訳がない。では,生死不明のトニー・スタークが,終盤奇蹟的にアイアンマンとして復活する演出かと言えば,それも違う。彼が生きていることは,映画の前半でミス・ポッツに伝えられるから,一体あのポスターは何だったんだろうかということになる。ただのご愛嬌と考えるしかない。
 本作の監督・脚本は,シェーン・ブラック。同じR・ダウニー Jr.主演の『キスキス,バンバン』(05)で監督デビューしているが,これがまだ2作目である。元は俳優だが,『リーサル・ウエポン』シリーズの脚本を手がけるなど,脚本家としての実績が目立つ。本作も典型的なアクション・ヒーロー大作の縛りの中で,見せ場を考えた好い脚本だと思う。助演陣は,恋人のペッパー・ポッツ役のグウィネス・パルトロウ,友人ローディ中佐役のドン・チードルは,引続き出演で,息も合っている。
 今回の敵は,テロ組織のテン・リングス団で,ベン・キングスレーがその首領,ガイ・ピアースが実行部隊のリーダー役だ。B・キングスレーの凄みのある顔は,相当な悪にぴったりだが,これは実に面白い役柄だった。ある種のお遊びだが,ネタバレになるので,観てのお愉しみとしておこう。敵役として素晴らしかったのが,キリアン役のG・ピアースで,『プロメテウス』(12年9月号)の富豪老人役とは全く異なり,端正な顔立ちの冷徹な悪役である。公開が前後するが,『欲望のバージニア』(13年7月号掲載予定)の残虐な取締官役も見事だった。
 最新の娯楽大作らしく,サービス精神たっぷりで,最後まで見応え十分である。以下,CG/VFXを中心とした感想である。
 ■ 本シリーズの愉しみの1つは,スターク邸内のラボ(工房)で,さまざまな近未来情報機器を,素晴らしいタッチで描いて見せてくれる。ヒューマンインタフェース研究のヒントや目標にもなるくらいだ。本作でもしっかりその方針が維持されていて,ラボの機材も進化している。相変わらず半透明の物体表示が目立つが,極め付けは球形のプロジェクタだ。思わず欲しくなる。実際の部屋で使うと,こういう半透明表示の投影像は見えにくくて,全く実用的ではないのだが……。
 ■ アイアンマンのスーツは,「アーマー」とも呼ばれていて,前作までにも何度かモデル・チェンジしている。何と,トニー・スタークは,夜な夜な新型の製作に励み,30体以上も作ったという想定である。写真2で分かるように,色もデザインも少しずつ違っている。まるで,ウルトラマン・シリーズだ。実際,終盤の戦いでは,この何体ものアイアンマンが助っ人として駆けつける(写真3)。では,この中に誰が入っているのかと言えば,これがすべてリモコン操縦なのである。トニー・スターク自身が新型アーマーを装着する場合にも,音声コマンドによるリモコン操作であるが,その映像表現が素晴らしい。本作での最大の見ものだが,静止画ではその様が見せられないのが残念だ。CG/VFXゆえの産物であるが,よくぞこういう表現アイディアを思いついたものだと感心した。
 
 
 
 
 
写真2 このバリエーションは,かつて観た「ウルトラシリーズ」を思い出す
 
 
 
 
 
写真3 クライマックス前に勢揃いするのも,まるでウルトラ軍団
 
 
  ■ 上記のラボは『アベンジャーズ』では大都会のスタークビル内にあったはずだが,本作では,住まい自体が海岸沿いの邸宅になっている。敵のヘリが予告通りこの邸宅を襲撃するが(写真4),その爆発から海への崩壊シーンがかなりの迫力である。前半でのVFXのハイライトだと言える。本作のCG/VFXの主担当は,Weta DigitalとDigital Domainの2社体制だが,その他にScanline VFX, Framestore, Method Studios, Luma Pictures, Cantina Creative, Rise FX等が参加している。エンドクレジットでも延々と参加クリエーター達の名前が続く。
 
 
 
 
 
写真4 本作では,海辺のスターク邸が襲撃される
 
 
  ■ 中盤から終盤にかけてのVFXの見どころは,大統領専用機エアフォースワンが襲撃され,空中に放り出された搭乗者達をアイアンマンが救出するシーンである。1人ずつ助けていては間に合わないと判断し,それぞれ手を繋がせ,全員輪になり,アイアンマンが支えつつ地上に舞い降りるという算段だ(写真5)。緊張感溢れるアクションの連続の中で,このお手手繋いでは少し笑える。
これも遊び心からの余裕だろうか。前述のヘリも大統領専用機もCG描写だろうが,落下する人間もほぼすべてCG製であると見て取れた。余談だが,この大統領専用機も日本政府国専用機も,古いジャンボ機(ボーイング747)を使っている。機内が広いこともその理由だろうが,いつまでこんな燃費の悪い機種を使っているのだろうか? 装備面での安全面でも,そろそろ新しい機種に変えてもいいと思うのだが……。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
写真5 エアフォースワンからの落下シーン。人物も大半はCGだろう。
 
 
  ■ 本作は,大作らしく3D/2D同時公開だが,劇場観賞なので,勿論3Dで観た。ところが,正直なところ,この映画を3Dで観る意義を感じなかった。上記のエアフォースワンのシーンなどは,3Dを意識した映像にはなっているが,全体的に平板で立体感がない。変だなと思って後で調べたら,やはり「2D→3D変換」のフェイク3Dであった。『アベンジャーズ』はリアル3Dであったのに,この逆行はどうしてなのだろう? 6月号の『G.I.ジョー バック2リベンジ』をはじめ,これから公開の『パシフィック・リム』『ワールド・ウォーZ』『スター・トレック イントゥ・ダークネス』『マン・オブ・スティール』『ウルヴァリン:SAMURAI』『R.I.P.D.』『Percy Jackson: Sea of Monsters』『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』等々の大作が,いずれもフェイク3Dだという。フェイク3Dの技術が向上し,コストダウンの面からも再評価されてきたのだろうか。その他,水槽タワーの落下シーン等の立体感もうまく出来ていた(写真6)。もっとも,大半がCGならフェイク3Dもリアル3Dも立体感に大差はないが,フェイクの方がプレビスの自由度も高く,制作し易いと言える。
 
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写真6 水槽タンクの落下シーンの立体感は上々
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