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O plus E誌 2018年9・10月号掲載
 
 
スカイスクレイパー』
(ユニバーサル映画 /東宝東和配給 )
      (C) Universal Pictures
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [9月21日よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー公開中]   2018年8月21日 東宝試写室(大阪)
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  地上1000m超の摩天楼が主役で,デザインも出色  
  当欄の定番メニューの1つで,CG/VFXの威力をフル活用したパニック映画である。香港で完成間近の超高層ビルがテロリストにより乗っ取られ,炎上するという内容だ。『タワーリング・インフェルノ』(74)+『ダイ・ハード』(88)の魅力だという。前者は誰でもすぐに分かる。刑事ものの後者の要因もあるのかと思ったが,主人公がビル内で孤軍奮闘して敵と戦うということらしい。
 主演は,プロレスラーの「ザ・ロック」ことドウェイン・ジョンソン。演技力向上は,最近の『ランペイジ 巨獣大乱闘』(18年5・6月号)で褒めたばかりだ。前々作の『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』(同3・4月号)まで含めると,本邦では,今年だけで主演作が3本目となる。それだけ,信頼され,安定して稼げる俳優の仲間入りしたのだろう。パニックものでは『カリフォルニア・ダウン』(15年9月号)もあった。同工異曲だが,本作の方が大作で,見応えがありそうだった。
 容貌からして,美女とのラブシーンとは無縁だが,家族間での頼れる父親役がよく似合う。米国人好みの強い家父長のイメージだ。このまま行くと,州知事や大統領候補になるかも知れない。ボディビルダーだったA・シュワルツェネッガーが加州知事,大根役者で冴えない西部劇俳優だったR・レーガンが大統領にまで登り詰めたのだから,あながち有り得ない話ではない。少なくとも,小学校5〜6年生程度の理解力しかない現職大統領より知的レベルは上に見え,信頼できそうだ(笑)。
 閑話休題。表題の「skyscraper」とは,人物ではなく,「摩天楼」のことだ。香港のビクトリア湾の湾岸に建設された高さ1,066m,240階建ての超高層ビル「ザ・パール」もまた,この映画の堂々たる主役である(写真1)。主人公のウィル・ソーヤーは元FBI人質救出部隊の隊長だったが,ある事件から身を引き,現在は危機管理コンサルタントとして,このビルの保安査定を依頼されていた。完成披露前に,ビルの98階の居住フロアに家族と仮入居していたところ,テロリスト達がこのビルのアクセス権限を不法入手して管理下におき,ビルを炎上させた。中に取り残された妻子を救うため,ビル外にいたウィルはビルに飛び移り,決死の闘いに挑む……。
 
 
 
 
 
 
 
写真1 湾岸にひときわ高く聳え立つ摩天楼「ザ・パール」(上)。 ライトアップされた夜の姿も美しい(下)。
 
 
  監督・脚本は,『ドッジボール』(04)のローソン・マーシャル・サーバー。『セントラル・インテリジェンス』(16)でも,D・ジョンソンを主役に起用している。コメディ得意の監督だったので,この種のパニック映画は意外だった。助演陣は,妻サラをネーヴ・キャンベル,ビルの中国人オーナーをシンガポール人のチン・ハン,テロリストの1人をパブロ・シュレイバーが演じている。
 以下,当欄の視点での感想と評価である。
 ■ パニック系アクション映画としての脚本は,さほど斬新ではなく,想定の範囲内での展開である。102分の映画なのに,それよりも長く感じたのは,同じパターンの危機の繰り返しのためかと思う。ただし,その欠点を一挙に吹き飛ばすのは,このビルの設計の素晴らしさだ。勿論,誇張されていて,現実に建設可能なものではないだろうが,近未来のインテリジェントビルとして具備したい機能が盛り込まれている。外観デザインだけでなく,セキュリティ対策,消火機能等々で,もっともらしい講釈つきなのが嬉しい。ビルから離れた管理センターで集中制御しているという設定にも説得力がある。エンタメ映画ならでは,心地よい誇張だと言える。このビルのデザインだけでのかなりの製作費を投じたと思われる。
 ■ 最上部は球状の展望台で,一見,野球のボールのように見える(写真2)。螺旋模様の外壁と合わせて中国の神話「真珠と龍」を表しているそうだ。この展望台には,371台の平面ディスプレイが設置され,球体内部壁面も2万5千枚の液晶パネルが貼られている。ここに外界を投影すれば,空中に浮いているように見える訳である(写真3)。前半で解説されるが,終盤にこの映像空間の存在が生きてくる。高速エレベータのスピード感も心地よい。高さ30階分を占める屋内庭園には滝まである。勿論,CG/VFXの産物だが,3D上映で観たいシーンだ。
 
 
 
 
 
写真2 まるで野球のボールだが,真珠を表しているらしい
 
 
 
 
 
写真3 空中浮揚ではなく,360度パノラマの展望台
 
 
  ■ ウィルが外壁につかまるシーンも迫力十分で,合成と分かっていても足が竦む(写真4)。ジャンプシーンもしかりで,香港の夜景と見事にマッチしている(写真5)。火災の描写も夜のシーンで映え,消火シーンの出来映えも秀逸だった。CG/VFXの質,使い方に関しては,本年度観た作品の中で最高点を与えたい。その主担当は老舗ILMで,副担当はIloula VFXとMPCだった。この3社でかなりの人数が投じられているが,さらにImage Engine,Umedia,Revolt 33, Whiskytree,Cantina, Lola VFX等々も参加している。   
 
 
 
 
 
 
写真4 櫓を登ったり,96階付近の外壁に出たり,いずれのシーンも目が眩みそう
 
 
 
 
 
 
 
写真5 表題欄はイメージイラスト。(上)スタジオ内でジャンプの撮影,(下)香港の夜景をバックにした
(C) Universal Pictures
 
 
    
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
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