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O plus E誌 非掲載
 
 
シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』
(マーべル・スタジオズ/ ウォルト・ディズニー・ スタジオ・ジャパン配給 )
      (C) 2016 Marvel.
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [4月29日よりTOHOシネマズ スカラ座他全国ロードショー公開中]   2016年4月20日 TOHOシネマズ梅田[完成披露試写会(大阪)]
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  シリーズ内の位置づけと着想はライバル作と相似形  
  例によって,公開直前の試写が本誌5月号に間に合わず,Webページだけでの紹介となったVFX大作だ。それ自体,約1ヶ月前の『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(以下,『B vs S』と略す)とほぼ同じだが,ジャンルもセールスポイントもそっくり相似形である。まずは,その類似点から列挙してみよう。
 ■ 『B vs S』はDCコミックスの実写映画化作品で,『マン・オブ・スティール』(13年9月号)に始まるリブートした新スーパーマン・シリーズの2作目であった。一方,本作は,アメコミの雄マーベル・コミックの実写映画化作品群(Marvel Cinematic Universe, MCUと呼ばれている)の中で,キャプテン・アメリカ主演のシリーズ3作目に当たる。オールスター共演の『アベンジャーズ』シリーズの2作目『…/エイジ・オブ・ウルトロン』(15年7月号)から1年後という想定である。
 ■ 同シリーズ2作目から3作目までの間,個別ヒーローの主演役を挿入する恒例の営業政策だが,同1作目と2作目の間の前作『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(14年5月号) が素晴らしい出来だったので,本作にも多いに期待が持てた。『アベンジャーズ3』の英題は既に『Avengers: Infinity War』に決定し,Part 1(2018)と Part 2 (2019)に分けて公開するという。一方のDC側は,悪党大結集の『スーサイド・スクワッド』を今年9月10日に公開予定であり,その後,正義のヒーローを集結させた『ジャスティス・リーグ』に向かうことは確実視されている。という風に,両コミックの映画化作品が続々と製作される計画の中で,出来映えも興行成績も,その成否が注目される作品なのである。
 ■ 『B vs S』はスーパーマン映画にバットマンを登場させ,対決させていたのに対して,本作はキャプテン・アメリカ(クリス・エヴァンス)が主役のシリーズながら,アベンジャーズ仲間のアイアンマン=トニー・スターク社長(ロバート・ダウニーJr.)が対立する図式がウリになっている。メイン・スチル画像が,この2人が睨み合う構図なのも,『B vs S』と全く同じである。対決の理由も酷似している。スーパーマンの超能力を駆使しての戦いが人類社会の災いとなることをバットマンが危惧し,2人は対決した。本作では,アベンジャーズ・チームが引き起こした甚大な被害から,彼らの行動を制限し,管理する協定が発効される。アイアンマンらはこれを受諾せざるを得ないとするが,キャプテン・アメリカが管理下で自由を奪われることに真っ向から反対したことから,アベンジャーズ達は2派に分裂する。キャッチコピーは「友情が,友情を引き裂く」で,本作のポスターは1対1でなく,5人対5人で睨み合っている(写真1)
 
 
 
 
 
写真1 これが2組の対決を強調したポスター。この時点では,まだ5対5だ。
 
 
  ■ 『B vs S』は表題の2人の他に「ワンダーウーマン」が加えられて,「ジャスティス・リーグ」の原形が構築されたのに対抗して,本作も公開2ヶ月前になって,サプライズ加入が発表された。何と,あの「スパイダーマン」が登場するという! 元々マーベル・コミックの人気キャラであり,コミック版「シビル・ウォー」(2007年から08年にかけて7作が発表された)に登場しているので,その意味では不思議ではないのだが,映画化権はコロンビア映画(ソニー・ピクチャーズ)が有しているので,映画での共演は実現しないと思われていた。公開されたスチル画像(写真2)では,スパイダーマンがキャプテン・アメリカの唯一の武器である超硬合金製の盾を持っている。ということは,キャプテン・チームの一員なのかと思いきや,トニー・スターク社長を慕い,アイアンマン・チームに合流するそうだ。では,それに対抗するキャプテン・チームの6人目はと言えば,昨年秋に主演作が公開されたばかりのアントマンだそうだ。なるほど,じゃんけん後出しは,パワフルで盛り沢山だ。もうここまでの事前情報だけで,大いに盛り上がった訳である。
 
 
 
 
 
写真2 スパイダーマンの参加は,正にアメイジング
 
   
  多彩なヒーローを巧みに配置し,堪能させてくれる  
  メンバー強化だけでなく,娯楽大作としての営業戦略もしっかりしていて,日米同時公開ではなく,北米の5月6日公開よりも1週間早く,日本ではGW初日の4月29日に公開となっている。
 2組で6対6に別れたヒーローたちを整理しておこう。『アベンジャーズ』シリーズの6ヒーローの内,マイティ・ソーとハルクは本作には登場しない。「ブラック・ウィドウ」(スカーレット・ヨハンソン)は前作でもキャプテンのパートナーとして戦っており,引き続き登場する。ところが,政府提案に従うとのアイアンマンの方針に同調し,キャプテンとは袂を分かってしまう。一方,弓の名手,「ホークアイ」(ジェレミー・レナー)は本シリーズに初参加している。一度は引退していたが,キャプテンの呼びかけに応じて復帰し,彼の弓の威力はこんなに凄かったのかと,改めて感嘆する出番が用意されている。
『…/エイジ・オブ・ウルトロン』に少しだけ登場した中から,強力なテレキネシス能力の持ち主の「スカーレット・ウィッチ」(エリザベス・オルセン)と超人的なAIアンドロイドの「ヴィジョン」(ポール・ベタニー)が本作でアベンジャーズに加入し,それぞれキャプテン組とアイアンマン組に別れる。これで,3対3だ。常連の助演陣では,元空軍所属だった2人,人工翼を駆使して飛翔するファルコン(アンソニー・マッキー)は当然キャプテンの相棒であるし,トニーの親友ローズ大佐(ドン・チードル)はダークグレーのアイアンマン・スーツで「ウォーマシン」として登場する。これで,4対4である。
 前作では暗殺者「ウィンター・ソルジャー」として登場したキャプテンの親友バッキー・バーンズ(セバスチャン・スタン)(写真3)は本作でもテロリストの汚名を着せられ,重要かつ微妙な立場でキャプテン組に参加する。そして,前述のアントマンを加えた6名がキャプテン組のメンバーである(写真4)
 
 
 
 
 
写真3 本作でも最初は敵役扱いされるウィンター・ソルジャーことバッキー・バーンズ
 
 
 
 
 
写真4 こちらキャプテン組の6人。(左から)ファルコン,アントマン,ホークアイ,キャプテン・アメリカ,スカーレット・ウィッチ,ウィンター・ソルジャー。
 
 
  新参加はブラックパンサー(チャドウィック・ボーズマン)で,アフリカの小国ワガンダの王子だが,父の国王をテロで失ったことから,アイアンマン組に加わり,指名手配犯のウィンター・ソルジャーを追う。それに前述のスパイダーマンを加えて,アイアンマン組の6人が揃う(写真5)。もうここまで来たら,個別ヒーローの独立作品ではなく,『アベンジャーズ2.5』とでも呼ぶべきオールスター映画になってしまっている。
 
 
 
 
 
写真5 対峙するアイアンマン組は,(左から)ブラックパンサー,ヴィジョン,アイアンマン,ブラック・ウィドウ,ウォーマシン。ここにスパイダーマンが加わる。
 
 
  飛び入り参加のスパイダーマンについて,もう少し触れておこう。ずっとマスク姿で出演させるのかと思ったら,マスクをとった素顔のピーター・パーカーの姿での出番もある。勿論,『アメイジング・スパイダーマン』シリーズのアンドリュー・ガーフィールドではない。まだ高校生というコミック通りの設定で,19歳の新進男優トム・ホランドが演じている。『白鯨との闘い』(16年2月号)で若い船員を演じていた青年だ。旧シリーズのトビー・マグワイアに似た繊細なイメージだ。本作だけの登場かと思ったら,再リブートされ,来年夏の公開予定の新生スパイダーマン・シリーズに抜擢された期待のピーター・パーカー役だそうだ。完全に映画会社間をまたがったクロスオーバー登用である。
 さてさて,2組に分かれた個々のヒーローをここまで詳しく紹介したのは,本質的にこの種のアメコミ実写映画は,各ヒーローの能力と特技を知り,その登場場面を楽しむ映画だからだ。その点に関して,本作は『アベンジャーズ』シリーズ同様,実に良くできた脚本と演出である。各ヒーロー1人ずつの出番をしっかり作り,全員がヒーローたる所以を堪能させてくれる。まるでコーラス・グループで,メンバー全員が1人ずつソロで歌唱するパートが設けてあるかのような構成である。
 脚本は,クリストファー・マルクスとスティーヴン・マクフィーリー。本シリーズ3作の他に『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』(14年2月号)も担当していたので,マーベル・ヒーロー達を活躍させることは,完全に手の内に入っている。監督は前作で抜擢されたアンソニー&ジョーのルッソ兄弟で,前作の好評により続投となっただけでなく,『Avengers: Infinity War,Part 1 & 2』のメガホンを取ることも決定している。
 キャプテン組とアイアンマン組はしっかり戦ってくれるが,どちらかが壊滅する訳ではないことは自明だ。実は世界制覇を目論む共通の敵がいることが判明し,そちらに向かうことは『B vs S』と同様である。エンドロールの後には,いつものように『アベンジャーズ』シリーズ次回作に繋がる伏線が提示されていて,その扱いも実に巧みだ。娯楽大作としての完成度はかなり高い。
 
   
  CG/VFXはボリューム大だが,見どころは肉弾戦  
  当欄としては,肝心のCG/VFXにも言及すべきなので,簡単に触れておこう。
 ■ CG/VFXのボリュームが全編でたっぷりあることは,言うまでもない。『アベンジャーズ』シリーズ同様,もはや逐一語る気にもなれないし,メモも取り切れない。導入部での敵との戦い,テロでワガンダ国王が死亡するシーンにしっかり使われているが,ビルの破壊シーン,ヘリの墜落等,迫力はあるが,目新しさはない。CG/VFXの発展史を同時代記録している当欄としては,どの作品も,各ヒーローの超能力や特殊パワー機器の威力を魅力たっぷりに描き,入場料分だけはしっかり堪能させてくれると書いておこう。
 ■ 最大の見どころは,中盤に登場する空港でのキャプテン組とアイアンマン組のバトル・シーンだ。時間は計らなかったが,一体何分間あったのだろう? かなりの長時間,2組に分かれたアベンジャーズたちが対決する。誰か1人が他を圧倒する力をもっている訳ではなく,それぞれ得手,不得手があり,攻守入れ替わっての闘いが継続される。まるで,6人対6人のプロレスのタッグマッチを観ているかのような気分になる。その大半は,巨大スタジオ内で全員が駆けずり回って戦う様を収録したようだ(写真6)。勿論,最終的には背景にCGを描き加えたり,逆に空港の実写シーンの彼らを合成する等々,たっぷりとVFX加工されているが(写真7),生身のアクションがベースにあるゆえに,見飽きない,迫力あるバトル・シーンとなっている。既にそのメイキング映像がYouTubeにアップされているので,当欄の読者には,映画観賞後に眺めることをオススメする。
 
 
 
 
 
写真6 空港に見立てた大型スタジオ内での撮影風景
 
 
 
 
 
 
 
写真7 (上)実写映像への合成途中,(下)完成映像の例
(C) 2016 Marvel.
 
 
  ■ CG/VFXの主担当は,前作に引き続きILMだ。それに加えて,Method Studios, Trixter Film, Rise FX, Legacy EFX, Cinesite, Double Negative, Luma Pictures, Lola Visual Effects, Cantina Creative, Crafty Apes,Animal Logicの他数社が参加している。大小合わせてこれだけ動員するだけのVFXシーンがあったということだ。上記の空港バトル以外のシーンでは,階段でのアクション・シーンに新味があった。手すりが曲がるという演出はアイディア賞ものだ。アイアンマンの参加時に,いつも楽しみにしているトニー・スターク社長の工房が,本作では登場しないのが残念だったが,彼の携帯電話の形状,使い方は,まさに未来型モバイル端末の一提案であり,これは一見の価値がある。
 
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