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purasu
AVP2 エイリアンズ VS. プレデター
(20世紀フォックス映画)
 
      (C) 2007 Twentieth Century Fox  
  オフィシャルサイト[日本語][英語]  
 
  [12月28日より有楽座ほか全国東宝洋画系にて公開中]   2007年12月28日 TOHOシネマズ二条  
         
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  伝統あるSFホラーの最新作。なるほど少し進化してはいるが…。  
 

 SF ホラー『エイリアン』シリーズは過去に4本製作され,リドリー・スコット,ジェームズ・キャメロン,デヴィッド・フィンチャー,ジャン=ポール・ジュネという錚々たる監督たちが,若き日にメガホンをとっている。特に,1作目,2作目は映画史に残る秀作であった。主演女優のシガニー・ウィーバーも,このシリーズで大スターになった。
 シリーズが完結して行き場がなくなっても,熱狂的ファンが多いとなると,同じ20世紀フォックスの『プレデター』シリーズ(こちらは,2作まで)と組み合わせ,2大モンスターを戦わせてみようと考えるのは,自然な発想である。かくして生まれたのが『エイリアン VS. プレデター (AVP)』(05年1月号)で,3年前の正月映画として公開されている。本邦のゴジラなどは,『キングコング対ゴジラ』(62)『モスラ対ゴジラ』(64)をはじめ,キングギドラ,スペースゴジラ,デストロイア,ヘドラ,メガロ等の敵役を次々と取り替えた。メカゴジラに至っては,何と4度も相手役を務めている。当然,作品としての質的低下は止むを得ないが,この手のシリーズのファンには,少し趣向を変えて,お馴染のキャラが登場するだけで嬉しいのである。
 本作品の米国での公開は12月25日,日本での公開は2.5日遅れの12月28日の準同時公開で,東京でも大阪でも,マスコミ用試写会が全くなかった。映画中に登場するコロラド州の森林地帯にちなんで,話題優先の「富士樹海ジャパンプレミア」が一度開催されただけである。師走の繁忙期に富士山の樹海くんだりまで足を運ぶ訳にも行かないから,公開初日の朝イチにシネコンに観ることにした。どんな客層に支えられているのかを観察するのも,興味深い。
 シネコンでは中くらいのホールで,客席の埋まりくらいは約半分だった。朝からかなりの雨が降っていたことを考えれば,上々の入りだろう。男子中高生のゲーム世代が,圧倒的に多い。予想通りだ。彼らが1作目『エイリアン』(79)を同時体験している訳はないので,3年前の前作を機に,DVDやゲームソフトで知ってからのファンなのだろう。中年男性1人も父子連れも結構多い。勿論,中年のオバサンはいないが,女子高生のグループはいた。これは想定外だった。
 さて,監督登竜門の本シリーズに抜擢されたのは,ザ・ブラザーズ・ストラウス。人気TVシリーズ『X-ファイル』の視覚効果担当でデビューしたグレッグ・ストラウスとコリン・ストラウスの兄弟で,VFXスタジオHydraulxの創設者である。これまで『ナッティ・プロフェッサー』(96)『ボルケーノ』(97)『タイタニック』(97)『コンスタンティン』(05)『ファンタスティック・フォー[超能力ユニット]』(05)『300<スリー・ハンドレッド>』(07)などを手がけてきたという。主な出演者は,スティーヴン・パスカル,レイコ・エイルスワース,ジョン・オーティスだが,ほとんど無名で,この種の映画の出演者は添えものに過ぎない。
 題名に注意しよう。「エイリアンズ」と複数である。人間に寄生して繁殖する大量のエイリアンが発生し,それを捕獲者たるプレデターがなぎなおして行く構図が読み取れる。後は適当な設定で,どこまで迫力あるバトルを楽しませてくれるか,新しい工夫はあるかが興味の的だ。
 伏線は,前作の最後にあった。エイリアンとの死闘に勝って宇宙船で去るプレデターの死体から,エイリアンの幼虫「チェストバスター」が産声を上げていた。このエイリアンは,宿主の身体の特徴を有した混血種で,「プレデリアン」(PredAlien)と名付けられた。1:1のハーフではなく,エイリアン80%,プレデター20%の混血だそうである。エイリアンからは外骨格,酸性の血,さそりのような尾,内舌と目立つ口もとを継承し,プレデターからは下顎やレゲエ風のヘアスタイルのDNAを受けている。なるほど,精悍でいいデザインだ(写真1)。こういう設定が,ファンにはたまらなく嬉しいのだろう。
 プレデリアンが乗っ取った小型宇宙船が地球に向かい,米国コロラド州の田舎町ガニソンの森に墜落するところから物語は始まる。プレデリアンは数体のフェイスハガー(エイリアン成長の第2レベル)と共に町に侵入して行く。異変を察知したプレデター側は,エイリアンの掃討を専門とする「ザ・クリーナー」(必殺始末人)を同地に送り込む,という物語設定だ。増殖したエイリアンがガニソンの町を恐怖に落とし入れる様が見どころだ(写真2)。エイリアンと戦うプレデターは人間の味方でなく,掃討作戦を目撃した人間もプレデターに抹殺されるから恐怖は倍加する。これまでの宇宙船内や南極の地下の戦いでなく,田舎町丸ごとを巻き込むパニック映画であり,誰が生き残れるかというサバイバル・ムービーにもなっている(写真3)『エボリューション』(01年9月号)『スパイダー・パニック』(02年12月号)に近い感覚と思えばいい。
 ファンを楽しませる工夫は,新プレデターの最新装備に見られる。下水道に潜むエイリアンを探知して,一匹ずつ抹殺して行くプロセスにはワクワクする。すべての生物を溶かして消滅させる特殊溶解液や,肩に装備したプラズマ砲も新兵器だ。後者のパワーがチャージされて行く様のデザインもいい。
 勿論,兄弟監督の得意分野であるから,この映画には特撮,デジタル視覚効果は満載だ。従来からの着ぐるみやメイクも残した挙句にCGパワーの比率も上げている。クリーチャー・デザインは従来通りAmalgamated Dynamics社で,VFXの主担当は彼らのHydraulx社だ。他に,CIS Hollywood,Lola VFXも参加している。伝統あるエイリアン造形を活かしつつ,宇宙でのシーン,宇宙船の不時着と崩壊,核爆発のCGシーンなどにVFX専門家しての彼らの主張が感じられる。
 ところで,プレデターのプラズマ砲が最後までずっと大きな役割を果たし,最後に黒幕の不思議な日本人女性が登場する。当然『AVP3』への布石である。

 
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写真1 これが,混血児「プレデリアン」。精悍なデザインだ。
 
   
 

写真2 予想通り,こんなシーンが続々と登場する。

 
   
 
 
 
 
写真3 左:プレデリアン,右:プレデター,この最終バトルの決着は……。
(C) 2007 Twentieth Century Fox
 
   
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