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O plus E誌 2016年9月号掲載
 
 
ミュータント・ニンジャ・タートルズ:影(シャドウズ)』
(パラマウント映画/ 東和ピクチャーズ配給 )
      (C) 2015 PARAMOUNT PICTURES
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [8月26日よりTOHOシネマズ日劇他全国ロードショー公開予定]   2016年7月14日 東宝試写室(大阪)
       
   
 
スーサイド・スクワッド』

(ワーナー・ブラザース映画)

      (C) 2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC AND RATPAC ENTERTAINMENT, LLC
 
  オフィシャルサイト[日本語][英語]    
  [9月10日より丸の内ピカデリー他全国ロードショー公開予定]   2016年8月9日 GAGA試写室(大阪)  
       
  (注:本映画時評の評点は,上からの順で,その中間にをつけています。)  
   
  飽きられないよう,色々な工夫を凝らしてきた  
  またまたアメコミの実写映画化作品が2本登場する。本誌に掲載したのは,今年に入って3 & 4本目なのだが,印象としてはもっと多い(他にWebページだけの掲載が2本あり)。数えてみれば,日本の少年少女コミックの映画化は計8本で,本数的には邦画の方が多い。後者はラブコメ中心で短評欄紹介なのに対して,前者はスーパーヒーローの超能力をCGで描く大作が多いため,当欄の関心がそちらに向かってしまうためだろう。後年映画史を振り返れば,このアメコミものとファンタジー映画がCG/VFX技術の進歩を牽引し,興行的にも大きな成功を生んでいた時期と言われることだろう。
 高興収を得た作品はシリーズ化され,同じヒーローが何度も登場し,どの作品も似たり寄ったりのバトルが続くのでは,観客もいい加減に飽きてくる(実際,評者自身がそうだ)。それを察知してか,少しずつ目先を変えて,楽しませようとする工夫の跡が見られる。その観点から,今月の2作品を眺めてみよう。
 
 
  屈託のない素直なヒーローの好感度がアップ  
  4匹のカメが突然変異で超能力を得て,忍者風のヒーローとして活躍する「Teenage Mutant Ninja Turtles」シリーズの2作目である。前作の邦題では2単語しか入れていなかったが,続編では「ニンジャ」も入るようになった(なぜ1作目から入れなかったのだろう?)。前作の評で述べたが,初見では単に騒々しく,ラジー賞ものだと感じた映画が,再度観ると表情描写がよくできていて,実に愛らしいキャラに感じた。その後,DVDの特典映像をじっくり眺めて,ILMのFacial Captureの巧みさに再度感心した。コミック誌上では絶対に表現し得ない表情で,実演ベースの表現法ならではの魅力だ。
 この続編は,その個性を最大限に強調した映画となっている。製作のマイケル・ベイは同じだが,監督はジョナサン・リーベスマンから,デイヴ・グリーンに変わっている。他のマイケル・ベイ製作・監督作品と同様,ストーリー的に見るべきものはなく,大味そのものだが,CG技術的には注目すべき点がかなりある。
 リーダーのレオナルド以下,ラファエロ,ミケランジェロ,ドナテロの4人の個性の描き分け,表情の豊かさは,続編で一段と進化した(写真1)。とりわけ,少し小さいミケランジェロが可愛い(写真2)。目力とでもいうのだろうか,目だけでの感情表現が素晴らしい。師匠のスプリンターなるネズミの質感(写真3)や,空中や地上を縦横に移動する動きの素軽さも上々の出来だ(写真4)。落下シーンが多いのは,3D上映での効果を考慮したアクションデザインなのだろう。しっかりプレビズされているようだ。
 
 
 
 
 
写真1 この表情の豊かさは,なかなかのもの
 
 
 
 
 
写真2 ムードメーカーのミケランジェロ
 
 
 
 
 
写真3 左:リーダーのレオナルド,右:師匠のスプリンター
 
 
 
 
 
写真4 前作以上に動きは俊敏,アクションも快調
 
 
  他のアメコミ実写化作品と比べると,ひたすら明るい主人公たちの屈託のなさ,単純明快なキャラであることが成功要因だろう。今回の敵役は,ミュータントに変身したビーバップとロックステディで,それぞれイノシシとサイの化身である(写真5)。典型的な勧善懲悪ストーリーで,宿敵シュレッダーを倒し,市長に褒められてカメ忍者たちが喜ぶ姿にも好感がもてる。スーパーヒーローものは,単純明快さが本来の姿だと思う。超能力者のヒーローが悩み,苦しむ,小難しいシリアス映画風の脚本にも,そろそろ飽きてきたからだ。
 
 
 
 
 
写真5 敵役はイノシシとサイが変身したミュータント
(C) 2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
 
 
  CG/VFXでの見どころとしては,空に浮かぶ球状の敵の要塞のデザインが目を引いた。それが組み上がる様も,じっくり観るに値する。同様に,前半の飛行機の破壊シーンも好い出来だった。主担当は引き続きILMで,ほぼ1社で全編を担当している。Ghost VFX,Base FX, Iloula等の名前もあったが,僅かな分担のようだ。
 ところで,カメ忍者たちとの連絡役のTVレポーターのエイプリル・オニール役には,ミーガン・フォックスが引き続き登場する。キャリア女性らしいタフな感じだが,もう少し可愛い可憐な女性にならないものか。これも評者のヒーローものへの素直な願望だ。
 
 
  アンチヒーローの個性が光るが,VFXは既視感も大  
   こちらは4人組に留まらず,10人ものヒーロー,いやアンチヒーローが登場する。マーベルコミックスの「アベンジャーズ」シリーズは単独でも主役を張れるヒーロー達が集結するオールスター映画として成功を収めた。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(16)では,善玉同士6対6に分かれて対決していた。この人数の多さが,本数以上に強烈な印象を与えているのだろう。
 もう一方の雄DCコミックスでは,『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(16)で2大ヒーローを対決させた(最終的には共通の敵がいた)。著名なヒーロー数ではマーベルに勝てないためか,ここで各コミックの敵役たちを集める「悪の祭典」をぶつけてきた。なかなかのアイディアだ。可愛さ,素直さを狙った『ミュータント…』とは真逆の作戦である。死刑や終身刑で服役していた悪党たちを,減刑と引き換えに危険な任務に就かせ,特殊部隊「スーサイド・スクワッド」(自殺分隊の意)を編成するという設定である。この交換条件自体はよくあるパターンだが,ただのワルでなく,中には超能力も持っている強烈な連中だ。彼らを上手く組み合わせ,調和させるのが腕の見せ所である。
 監督・脚本は,『フューリー』(14)のデヴィッド・エアー。監督作品ではあまり印象がないが,経歴を調べると脚本家としての方が実績がある。本作も,個性溢れる連中の見せ場を作り,かつ上手く連繋プレイを実現していると感じた。悪玉が抜擢されて,急に善玉になるパターンではなく,ワルのままの個性を活かしている。
 10人の悪役は,あまり馴染みのない名前が多いが,最も著名なのは,バットマンの宿敵「ジョーカー」だろうか。『ダークナイト』(08年8月号)でヒース・レジャーが演じた,あの悪のピエロである。本作ではジャレッド・レトが演じているが,やはりヒース・レジャーほどの鬼気迫る狂気はない。リーダー格の最強スナイパー「デッドショット」もバットマンに破れた悪役らしいが,本作でウィル・スミスを配して,物語を牽引している。
 怪力のワニ男「キラークロック」(写真6),人間発火装置の「ディアブロ」(写真7)等,CG/VFX表現を借りて活躍するキャラもいるが,衆目の一致するところ,最も個性的な存在であったのは,ジョーカーに恋する女ピエロの「ハーレイ・クイン」だろう(写真8)。バットを振り回して予測不可能な行動をとる悪のアイドルは,まさに本作の主役である。彼女を演じるマーゴット・ロビーの演技も出色で,とても『ターザン:REBORN』(16年8月号)のジェーン役と同じ女優とは思えない(写真9)
 
 
 
 
 
写真6 ルックスで目立つのはワニ男のキラークロック
 
 
 
 
 
写真7 強力な火炎を発するエル・ディアブロ
 
 
 
 
 
写真8 とにかくユニーク,女ピエロのハーレイ・クイン
(C) 2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC AND RATPAC ENTERTAINMENT, LLC
 
 
 
 
 
写真9 こちらは『ターザン:REBORN』でのジェーン役
(C) 2016 EDGAR RICE BURROUGHS, INC., WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC.
 
 
  さて,肝心のCG/VFXだが,利用場面は多いものの,余り印象に残っていない。強いていえば,ジュールに取り憑いた古代魔女の表現が優れていた。悪役中心ゆえに,夜の暗い場面がほとんどだ。その闇の中での光線の使い方は,後述の『ゴーストバスターズ』に酷似している。それもそのはず,VFXの主担当はMPC,副担当はSony Pictures Imageworksで,同作の裏返しだ。ほぼ同時期に類似のシーンを並行制作して,効率化を図っていた訳だ。最近のメイン欄だけで,MPCが何度登場したことだろう。大作を次々とこなすパワーに驚嘆する。
 
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  (画像は,O plus E誌掲載分に追加しています)  
   
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